気持ちのよいシール登高がしばらく続く。霧氷に覆われた樹木が朝日にきらめいている。途中で一本滑ろうかどうか迷うところだが折角の好天なのでまずは山頂を目指すことにした。コースの半分はピステンがかけられていないのでバージンスノーを見ているとここがゲレンデとは思えないほどの美しさがある。樹氷もかなりできておりこれは意外だった。蔵王は月山などに比べれば雪もかなり少ないのだが今年は意外と多いように見える。プローブで計測してみるとエコーラインで約70センチ。しかしエコーラインのショートカットコースはまだまだ雪は少なく笹藪や灌木が埋まりきってはいなかった。お田ノ神までくればほとんど支障はないのだが部分的には少々難儀しながら横断した。
振り返ると吾妻連峰、飯豊連峰、朝日連峰などが雲海に浮かんでいる。下界はまだまだ曇の中で日差しはないのだろうが山の上は雲ひとつ無い快晴である。いつのまにか廃線リフト小屋は解体撤去されてしまいただの雪原になっていた。ここからは登山リフトをたどって馬ノ背に登る。誘導の木柱にはエビのシッポがびっしりとあり風雪の激しさを物語る。馬ノ背にはスノーシューのトレースが熊野岳へと続いている。宮城側から早くも登っている人がいるようだったが山形からの登山者やスキーヤーは見あたらない。レストハウスを通過するとひと登りで刈田岳の山頂に到着した。お釜は深い緑色の湖面を湛えいつもよりれ神秘的に見える。湖面は一度氷結したようだが最近の気温の上昇で融けたようにも見えた。
山頂からはさっそくシールを剥がして沢沿いのコースへと滑ってゆく。窪みへと入ると全く風が無くなったためここでランチタイムとする。天候が崩れる心配は全くないので気持ちの良い休憩タイムである。降り注ぐ日差しは春スキーを思わせる。今日はまさしくハイキング気分だった。食後は一気にスキー場へと下るだけ。まだ藪の多いショートカットコースは避けて、エコーラインを滑りながらゲレンデトップへと戻った。薄いパウダーの新雪斜面はスキーがよく走る。快適で飛ばしているとレストハウスが眼下に見えてきた。