【概要】
酷暑の日々が続く。暑さがあまりにつらいので今日は手っ取り早く標高の高い地点から登ることにした。この時期、蔵王ロープウェイを乗るのは実に久しぶり。樹氷高原駅は約1300mもあって涼しい風が吹き渡る高原だった。横倉からワサ小屋跡までの祓川コースは20年以上前に歩いているが祓川分岐から姥神を下るルートは初めて。できれば真夏には歩きたくないコースだがやはり慣れた山道よりも未知の期待感の方が大きい。体調を見ながら歩いてみることにした。
今の時期、いろは沼に咲くのはコバギボウシ、キンコウカ、イワショウブなど。樹林帯は風がなく暑さに参っていたが、祓川分岐を過ぎるとようやく涼風が感じられるようになった。熊野岳が正面に見えるようになるとワサ小屋跡もまもなく。その先のガレ場は21年前の記憶が蘇ってくる区間。稜線にでるとようやく登山者が現れ始めた。
馬ノ背が現在通行禁止とあって熊野岳は閑散としていた。行き交う登山者は数えるほどしかなく、夏の熊野岳で、それも休日でこれだけ人が少ないのを見るのは初めてのような気がした。避難小屋から少し下りてゆくとお釜の全貌がみえた。こころなしかエメラルドグリーンの湖面がいつもよりも美しくかつ貴重に見えるから不思議だった。時間はまだ正午前。クーラーを最高に効かせたかのような冷たい風が四方から吹き上がってくる。この涼風があるだけで下界の暑さを忘れることができた。このまま下るのはさすがにためらわれ、熊野岳では2時間ほどのんびりとした。
ワサ小屋跡からふたたび祓川コースをたどる。祓川分岐の標識には「樹氷原コース・祓川コースを経て蔵王温泉街5.0km」とある。ただでさえ猛暑日が予想される山形市。それも一番暑くなる時間帯に下るのは愚の骨頂のようなものだったが、予想したほどには暑さを感じないのは幸いだった。この区間は陽光があまり差さないのか稜線よりもよほど涼しいのである。おかげで長い下りでもそれほど難儀せずに高度を下げてゆくことができたのだ。途中には、子養明神、大黒天、開運弁財天、三宝荒神山、姥神などの石像が立っていて古くからの参拝道を感じさせた。山道はゲレンデや林道のほかいくつもの沢を横切ったり、はたまた緩やかな尾根歩きがあったりと、コースは変化に富んでいてとても楽しめる。後半は堰堤を歩いて対岸に渡り、最後は大露天風呂の下部を通過しながら中森ゲレンデに飛び出した。ここには祓川登山口と書かれた標柱が立っている。熊野岳からの下りだけで約6.3km。単純な標高差約970m。所要時間は約2時間30分だった。