【概要】
瀧山から蔵王温泉へと下ったのはもう11年も前になる。こんどは逆コースをたどろうと計画した。今日も猛暑日が予想されているため、こんな時にドッコ沼でのんびりしたらどんなに良いだろうと単純に考えたコースでもある。はじめは登山口がよくわからなかった。そりゃあそうだろう・・。11年前の記憶などさっぱり無かったのだ。標柱を見つけたのは駐車地点から30分近くも経ってからだった。
すでに昼時間が近いとあって気温はかなり高くなっていた。登山口の標高はおよそ1000m。30度近い地獄のような気温の中、汗をほとばしらせながら急坂を登った。木立の中は日差しがないが風もないのがつらい。樹林帯から抜けると頭上からは強烈な日差しが降り注いだ。日陰の部分で途中何回か休憩しながら山頂をめざした。
瀧山山頂には11時40分着。2時間もかからなかったものの、暑さのためすでに疲労困憊だった。軽い熱中症の状態のため瀧山神社の日陰に陣取りランチタイムをとった。こんな熱いときに登ってくる人などまずいないだろうと思っていたら、前滝コースや姥神コースから少しずつ登山者も現れる。全身汗で濡れていてみんな暑さに参っているように見えた。あまりに暑いため予定していた縦走はあきらめるつもりだった。しかし日陰で休んでいる間に気力が少しずつ戻ってきたこともあり、予定どおりドッコ沼への縦走路へと向かった。
ドッコ沼までは基本的に下りなのだがアップダウンを繰り返しながらいくつかのピークを乗り越えて行く。暑さを心配したのだが樹林帯の中に入ってしまうと日差しが遮られ、それほど体力を失うことなく歩き続けることができたのは幸いだった。木立を抜け出したところがダイヤモンドバレーのゲレンデ。草原は一面のお花畑となっていてその美しさにしばし見とれてしまった。蔵王大権現の神社に参拝し、そのまま進むとドッコ沼だった。
ドッコ沼は涼しい風が流れていた。直射日光も届かないこの避暑地のような場所でお湯を沸かす。コーヒーを淹れたりしながらのんびりとした時間を過ごした。ここはカップルや家族連れあるいはグループなども次々とやってきては去ってゆく。みんなここでのひとときを楽しみにやってくるようだった。
快適な場所で涼んでいると下界に下るのが億劫になっていた。ロープウェイ乗り場からは高鳥コースをたどりながら上ノ台ゲレンデに下る。最初はコンクリート舗装の林道をたどったが、すぐにつまらなくなりゲレンデを直接下ることにした。もちろん登山道はなく膝上ほどもある草原をかき分けてゆくのである。しかしこのほうがはるかに楽しく山を歩いている気分に浸れるのである。そんなことを考えていると眼下に上ノ台のペンション群が見えてきた。下から吹き上げる風も思いの外に涼しくて心地よかった。緑一色のゲレンデは牧歌的な美しさがある。ここが人口に膾炙したあの蔵王スキー場のゲレンデにはとても見えなかった。このまま帰宅するにはあまりにさびしくなり、しばらくこのゲレンデの日影に横たわり一眠りしてから帰宅しようと考えてみた。