平地は青空だったのだが刈田峠までくると薄雲がいっぱいに広がっていた。屏風岳の上空は雨雲を思わせるような黒い雲が居座っている。少々雨にあたられるのもしょうがないなかなあと南蔵王縦走路を歩き出す。道端にはミヤマハンショウヅルやマイズルソウなどが咲いている。遅い時間の出発だったため前山でランチタイム。早くも下山してくる登山者が多くいて休んでいると次々と通り過ぎていった。
芝草平が近づくとチングルマとヒナザクラの群落が一面となった。道の両側の湿地帯はまさにお花畑である。とくにチングルマが盛りとあって見渡す限りといっても過言ではなく、湿原の花か彼方まで続いている。またミネザクラもちょうど咲き始めたばかりで、なかにはまだ蕾も多く、ここ南蔵王の花見シーズンはこれからのように見えた。
ベンチのある芝草平もさぞかしと思っていたのだが、ここではすでにチングルマは終わっていた。代わりにイワイチョウやコイワカガミ、ワタスゲくらいしかみあたらなかった。湿原の奥まで進むとそれまでいた2、3人の登山者はすべて下山していった。ボクはコーヒーをドリップしてケーキセットタイム。目の前にはワタスゲが群落となって風に揺れる。このワタスゲを眺めながらの静かな時間がたまらなくいい。
芝草平周辺は南蔵王でも時に高山植物が豊富な場所とて知られている。今日もここまでたくさんの花と出会ってもう目的は達していたのだが、屏風岳まで足を伸ばしてみることにした。一雨もありそうな空模様だったのだが、いつのまにか薄雲は去り爽やかな青空が広がっている。もう雨の心配はなさそうだった。しかし宮城県側の天候は今ひとつなのか、東側は濃霧に覆われていて稜線を境に明暗が分かれているようだった。
屏風岳にも誰もいなくなっていた。南屏風岳までも往復は可能な時間だったが今日はここまでとする。芝草平で花をたくさん見られてさらに屏風岳まで登ることができて満ち足りた思いでいっぱいだった。ここでしばらく休むことにしてベンチに腰を下ろした。すでに午後2時を過ぎていたのだが、日はまだまだ沈みそうな感じはなく、見上げる空は不思議なほど明るかった。(※作業中)