【概要】
今回の杁差岳は山の会の事業だったのだが、参加者が幹事の2名しか集まらず、結果的にプライベートの山行となったものである。飯豊山荘には朝から日差しが降り注いでいた。当初の怪しかった天気予報も前日に晴れマークに変わり今日も山日和のようだった。
丸森尾根は梶川尾根と同様にいきなりの急坂から始まる。汗を搾り取られたが登るに従って風が強くなってゆく。しかしこの風のおかげで体力の消耗を防ぐことができるようだった。夫婦清水はまだ残雪の中。延々と続く山道を歩き続けるとやがて視界が開ける。丸森峰から地神北峰までは雪渓歩きとなった。この大量の残雪のため肌寒いほどの気温に晒される。さらに雪渓はかなり堅く一週間前の大日杉とはえらい違いだった。アイゼンも必要なほどの急斜面を慎重に登って地神北峰に着いた。ここは稜線でも風の通り道。体もあおられるほどの強風と濃霧だったが、頼母木山へと下りはじめると不思議なほど風は穏やかになった。道端のウスユキソウが風に揺れ、西斜面にはハクサンイチゲの大群落が広がっていた。
頼母木小屋到着は12時。水場の蛇口からは冷たい清水が溢れるように出ていた。この水場をみて当初の杁差小屋泊を変更。6時間近くも重荷を背負い続けてかなり疲れていたこともある。ザックを軽くして今日のうちに杁差岳を往復することにした。小屋には登山者が一人いるだけだった。
強風と濃霧は地神山付近だけだったのか、大石山に向かう頃には風はほとんどなくなっていた。ここからは快適な稜線歩きが楽しめる区間。さらに高山植物も豊富で、ハクサンイチゲの他にもヒメサユリやハクサンコザクラ、チングルマ、ヨツバシオガマ、ゴゼンタチバナ、コケモモなどなど。写真撮影も忙しい。登山者は一人、二人と時々出会う程度でかなり少ない印象だった。
頼母木小屋から杁差岳までは1時間20分。山頂からは360度の大展望が広がっていた。まだまだ残雪の多い二王子岳が近くに聳えていて、遠方を見渡せば飯豊本山も見えた。今日の好天に感謝するばかりだった。頼母木小屋には1時間30分で戻った。GPS計測によると今日の累積標高差は2430m。これは祝瓶山を3回登ったことにもなるのだなあと二人で苦笑い。心地よい疲労感とともに達成感に満たされた。
小屋にはいると多くの登山者で溢れていた。2階にも入っているらしくたくさんの話し声が伝わってくる。入口付近に見覚えのある人がいた。よく見ると先日、西俣ノ峰で出会ったばかりの「それゆけとーちゃん」の竹田さんだった。反対側には小国山岳会の吉田さんもいる。竹田さんは吉田さん企画の杁差岳ツアー登山のため、8名のお客さんをガイドしながら梶川尾根を登ってきたようだった。こうして偶然にしろ短期間に出会うというのも、いずれも飯豊の主達だからなのだろう。今日の宿泊者は他に単独の登山者が一名いるだけだった。
小屋に入ればなにはともあれビールの乾杯から山小屋の夕べは始まる。それぞれ持ち寄った肴をつまみにアルコールが進めば酔いが回ってくるのも自明。2時間経ってもまだ午後6時とあって、外は明るくまだまだ日は沈みそうもなかった。夕食は一眠りしてからにしようかとお互いにシュラフに潜り込む。ボク達は疲労とアルコールのおかげで2時間以上も眠っていたようである。目が覚めたときには小屋の中は真っ暗で静まりかえっていた。夕食を食べる気持ちはなくなっていた。
翌日は4時頃に起床。モーニングコーヒーを飲みながら朝食をのんびりと作る。竹田さん達は朝食を終えると杁差岳へと出かけていった。今日は山頂をピストンしてから丸森尾根を下るらしかった。ボク達とは逆コースのようだった。
山小屋を午前6時に出た。天候は曇り空ながら視界はある。予報によるとこれから晴れる兆しのようだった。地神山付近からは門内泊まりだったという登山者と頻繁に出会うようになっていた。みな足の松尾根を下るようだった。昨日はほとんど晴れなかったらしく、頼母木や杁差岳が晴れていたことを話すと驚いている。どうも地神山を境に天候の明暗が分かれたようだった。
扇ノ地紙から梶川峰までも花の名所なのだがまだ少ないようだった。湿地帯にはチングルマ、イワカガミ、ミツバオウレンなど。それでもイワイチョウを見つけたのが収穫だろうか。今年初めて見るイワイチョウだった。ほかには白いシラネアオイが咲いている。梶川峰からはひたすら下山するだけとなる。ここから滝見場までは雪渓がまだかなり残っている。登りはそれほどではないものの、下りでは滑落の危険があり慎重に下る必要があった。滝見場では梅花皮大滝や石転ビ沢を眺めてみる。梅花皮大滝は久しぶりだったが枝が張りだしていて見晴らしはあまりよくない。石転ビ沢を登っている登山者は黒い点のようにしか見えなかったが、よくみれば結構多くの人たちがこの急斜面に張り付いていた。
湯沢峰を過ぎると怒涛の下りとなる。飯豊山荘までの標高差はおよそ600m。足元が少しふらついてきたこともあっていつもよりもより丁寧にと心掛ける。黙々と下っていると全身から汗がほとばしった。いつのまにか雲が切れて真夏のような青空が広がっている。今日も暑くなりそうだった。木立の間から飯豊山荘の屋根が見えてくれば登山口はまもなくだ。のんびりと楽しみながら登り、そして下った飯豊連峰の2日間が終わった。
ムラサキヤシオ |
マイズルソウ |
ウゴツクバネウツギ |
シラネアオイ |
エンレイソウ |
ミヤマカタバミ |
ツバメオモト |
ツルシキミ |
ミヤマウスユキソウ |
ヒメサユリ |
キスミレ |
チングルマ |
ミヤマダイコンソウ |
ヒナザクラ? |
ヨツバシオガマ |
コケモモ |
ハクサンコザクラ |
イワイチョウ |
ミツバオウレン |
ゴゼンタチバナ |
コイワカガミ |
シラネアオイ |
ノウゴウイチゴ |
スミレサイシン |
サンカヨウ |
キクザキイチリンソウ |