【概要】
GWの後半は恒例になった鳥海山。前日のうちに八幡町入りをして前夜祭を楽しんだ。例によって宴会のみの柴○さんも加わり「ゆりんこ温泉」の駐車場は夜遅くまで賑わった。
初日は昨年と同じく文殊岳から千畳ヶ原のコース。文殊岳からの滑降高度は550mにもなるというから胸が高鳴る。文殊岳は外輪山の一角だがそこからは伏拝岳も至近距離。標高も2000mを超えておりなかなか侮れない山である。
今年は雪解けが早くて雪がどこまでつながっているかわからないという不安要素がある。そのためルートは現地を見てから決めることにする。ブルーラインの夜間通行止め解除を待って大平の登山口へと上がった。駐車地点は大勢のスキーヤーや登山者であふれていた。駐車スペースはほとんど残っていないような檄混みで、ナンバープレートを見ると全国各地から訪れているようだった。
今日は朝からすばらしい青空が広がっていた。風もなく気温も上がりそうなのでいつものように夏ズボン一枚で登り始めた。急斜面を登り切ると広々とした大雪原となる。雪原のはるか向こう側には笙ケ岳の連山。徐々に後方の日本海が低くなって行き、左手からは鉾立の駐車場や山荘が見えてくる。まだ登山者の姿は少ない。河原宿の広々とした雪原は実に静かで別世界に遊んでいる気分になる。長坂道の稜線が近づくにつれて外輪山の後方に新山や七高山が忽然と現れる。現実離れしたような山岳景観にしばし感動した。
長坂道分岐からは雪がなかった。登山者はほとんど御浜小屋へと向かったが、さすがにスキーを担いで扇子森経由で行くのはさすがに躊躇われる。ボク達は残雪状況をみながら沢経由で文殊岳へめざすことにする。一気に千畳ケ原へと降りて行くコース取りである。考えようによってはここから早くも滑降を楽しめることにもなり災い転じてなんとかであろうか。シールをはがせばさっそく滑降開始。沢底からは一路文殊岳に直登するのみだった。
いつのまにか沢コースを登っているうちに御浜小屋や扇子森を通り過ぎていた。目前に聳えるピークを乗り越えて行けば文殊岳だった。しかし標高も残り100mという地点で雪渓が切れてしまう。大きく迂回コースをとればシールでも登れそうだったが、今さら引き返すわけにもゆかず夏道を登ることにした。わずかなヤブをかき分ければ外輪山の登山道だった。
眼前の文殊岳にはスキーを担いだ。外輪山の登山道は勾配も急でおまけによろけただけで谷底まで落ちてゆきそうな急斜面である。歩きづらい岩稜帯を慎重に登った。この夏道だけで30分近くかかりようやく文殊岳に到着した。標高は2005m。新山には及ばながこの2000mの高みからみる展望は格別だった。眼下の千畳ケ原を見渡してもまだまだ大量の積雪に覆われており滑降するには全く問題はなさそうだった。
この広大な千畳ケ原を眺めながらしばらくランチタイムとなった。千畳ケ原の左手には月山森があり、その隣にはいつもは雪に埋もれている河原宿小屋も見えている。尾根の向こう側は宮様コースなのだ。背後には千蛇谷や新山、七高山という、この抜群のロケーションはそうそう味わえるものではく、ボク達はこころゆくまで文殊岳からの展望を楽しんだ。
滑り出しは少し伏拝岳に進んだ地点からにする。ここからの南西斜面はちょうどスキー向きの中斜面がどこまでも広がっている。末端は千畳ヶ原だがあまりに広大で先が見えない。今回も雪面はフラットで信じられないほどの滑らかさだった。ザラメはスキーが滑りすぎるほどの快適さでスキーはほんとどノンストップである。ここは病みつきになるようなほどのパラダイスだった。
結局千畳ヶ原の平坦部までの標高差550mを滑り切る。この間約10分。ロス時間も考えれば正味5分足らずといったところだろうか。4時間近くかけて登った行程もスキーならば一瞬ともいえそうなほどの滑降時間だった。千畳ケ原からはシールを貼りなおし、鳥海湖の淵をたどりながら長坂道分岐へと戻った。
最後の急斜面を登り笙ケ岳の稜線に上がるとようやくシールをはがせる。前回はホワイトアウトに悩まされたが今日は全く問題はない。付近を見渡してもまだ多くの山スキーヤーが行き交っていた。あとは鳥海ブルーラインに向かって広大な緩斜面をのんびりと滑って行くだけだった。雪原を流れる風は初夏を思われるような心地よい微風だった。