【概要】
久しぶりにグランデコスキー場への遠征。早朝自宅を出るとあいにくの空模様で、大峠の国道121号は吹雪のため車の運転も怖くなるほどたった。喜多方市に出ると幾分風は弱まったがそれでも吾妻連峰は雪雲におおわれてほとんど見えなかった。
リフトトップも視界はなかった。厳しい寒気を伴った風に晒されているとたちまち体が凍えてくるようだった。こんな天候のためか入山者はほかに見当たらずトレースもなかった。幸い樹林帯に入ると風はほとんど感じなくなる。新雪は深く5人でラッセルを交代してゆく。ボクの体調はあまり芳しくない。体力も衰えているのかほんの少しラッセルをしただけで息が上がった。
日差しが出てきたのは樹林帯を抜け出た辺りからだった。この天候の急変は信じられないほどで、やはり山は来てみなければ分からない。雲の上に飛び出したらしく上空は目の覚めるような青空が広がった。気温もぐんぐんと上がってきたのか汗が噴き出してくる。途中で被服を一枚脱がなければならなかった。山頂にはゲレンデトップから1時間20分で到着した。眼下にはまっさらな新雪におおわれた手つかずの東斜面。このバージンスノーが我々だけの貸し切りだと思うと身震いするほどだった。
なにはともあれ東斜面を一滑りである。撮影隊が真っ先に飛び込んでゆくと残りのメンバーもつぎつぎと繰り出してゆく。浅くもなくそれでいて底なしのような深雪でもないという雪質は今シーズン一番だろう。この極上ともいえる浮遊感にはみんなが酔いしれているようだった。広大な東斜面には我々だけのシュプールだけが残った。滑り終えた後は沢底でのんびりと昼食タイム。雲一つ無いような快晴の空と春を思わせるような心地良い微風に時間の経つのも忘れそうだった。
休憩地点からはトラバース気味に西吾妻山へと登ってゆく。小屋付近にも西吾妻山も人が訪れた痕跡はなく人影はどこにもなかった。GPSでとりあえず山頂を確認すればあとはシールをはがして滑降するのみだ。ここからは二十日平へのツアー開始。今日のメインディッシュである。山頂付近では一時視界がなくなったりしたものの滑り始めると再び目の覚めるような青空が戻った。結果的に、登りでは曇り空だったが滑り始めると天候が回復するという、考えれば不思議な幸運にボク達は恵まれたようだ。誰だかわからないが常日頃の行いがよっぽと良いか悪いかのどちらかなのだろうと思わずにいられなかった。
二十日平までは深雪を楽しみながらのツリーランが続く。ここは若女平よりも林間はいくぶん広めなので滑りがかなり楽しめる。雪は軽すぎるほど軽いこともあってスキーは快適すぎるほどだ。5人それぞれがパウダーを楽しみながら思い思いのコースを下ってゆく。このツアーコースはそれが延延と続くのである。新雪ではゲレンデとは違ってそれほど疲れないものなのだが、これだけ滑り続ければさすがに疲れも感じてくる。ボクの両足は痙攣しそうなほど筋肉がパンパンだった。二十日平まで下りたところでようやく一休みをとろうということになりホッとする思いだった。
二十日平からは中ノ沢を徒渉してゲレンデに出るのがツアーのルートだが、これだけ多くの積雪があれば駐車場まで下ってみようかと誰からともなく提案される。つまり尾根の末端まで滑り道路まで下ろうというのである。これならばゲレンデの固い雪面や人混みも避けることができるのでたちまち決定となる。未知のコースというのは自然とワクワクするもの。見慣れない光景が展開すると胸が躍りそうだった。といっても距離そのものはたいしたことはない。地形図を確認するといずれにしろ中ノ沢の横断は必要なのだ。さいわいスノーブリッジはとこにでもあり、最後は尾根の終端でシールをつけて無事に県道へと飛び出した。