馬牽原高原は広々としていて気持ちの良いスノーハイキング気分から始まる。斜面の取り付きからは少し木立は混んでいるもののどこからでも登れそうである。はじめは送電線の巡視路に入ったが左手の尾根のほうが登りやすそうなので向きを変えてみる。すると昨日のものなのかワカンのトレースが現れる。そこからはその踏み跡に沿ってゆくことにしたのだが、登るに従い勾配は増すばかりで途中からは細かくジグを切らなければならなかった。ワカンは尾根をどこまでも直登しており、この人はかなりの健脚のようにも見えた。
斜度が緩むとTV中継所の施設が現れた。中継所から振り返ると眼下に馬牽原高原の白い雪原が見えた。そのままなだらかな尾根沿いを進むとまもなく西黒森山の山頂だった。三角点はもちろん雪に埋もれていてわからないが、山頂を示す標識のようなものが立木にぶら下がっている。山名はよくわからないがGPSでは山頂を示していた。ここまではたいした標高差もないのに結構疲れている。急坂のラッセルもきつく1時間半もかかった計算だった。ワカンのトレースは嶽原へと直進しているようだった。山頂ではときどき視界が無くなるほどの強風が舞った。しかし次第に青空がのぞいたりして徐々に晴れそうな兆しも見え始めている。急いで下山することもなさそうなのでいつものカップラーメンによる昼食をとりながら一息を入れることにした。
山頂からはどこを滑るか迷うところだが、TV中継所までは密林だけに横滑りなどを交えながらおりてゆく。これではなんとなく面白味に欠けることから、ここからは送電線に沿って下ってみることにする。送電線下は狭い上にかなりの勾配があるものの、今日は腰まで埋まりそうな深雪のおかげでそれほどきつさは感じない。しかし新雪の下はごろごろとした固い雪の固まりがあるらしく思うようなターンができなかった。たぶん雪崩の痕跡なのだろうがそうそうに登ってきた尾根へと危険回避。斜度がゆるむと林間も気持ちよく滑れるようになり、まもなく馬牽原高原の上部に飛び出した。あとは自分のトレースに沿って 滑ってゆくだけだった。見上げると青空が一面に広がっていてまぶしい日差しが馬牽原高原の雪原に降り注いだ。