中山へ通じる道は除雪はされておらず冬期間は通行止めだった。夏山ならばここからさらに林道を進み駐車場までゆけるのだが、いまは多くの雪に閉ざされていて実質ここが登山口だった。小雪が降り続いている。年末年始の大雪のおかげでファットスキーでもスキー靴程度のラッセルが続く。気温はそれほど厳しくはなく汗がながれたところでフリースを一枚脱いだ。途中で突然深いトレースが現れた。一見すると人の踏み跡にも見えるのだがどうやらカモシカのようだった。そのトレースはあちらこちらに蛇行していて、この先もつかず離れずといった具合に行き先はずっと一緒だった。
うがい場までは1時間30分かかった。懐かしい標識だが半分雪に埋もれており夏の面影はさっぱり見られない。予定ではこの辺りから雨量レーダーに直登する腹案もあったのだが、天候がいまひとつでは気が進まず、細野コースへと合流することにした。右手の尾根へは結構急斜面だった。積雪が多いだけに場所によっては膝上ほどのラッセルを強いられる。しかし林間が疎らなだけにスキーで滑る分には問題なさそうである。ここでは結構汗を搾り取られてしまった。
合流点の標高はおよそ750m。尾根に上がると風が一気に強まった。吹きさらしの風雪は厳しいがここは我慢のしどころ。あいかわらず体調がいまひとつなので途中で引き返すことも頭の片隅にあったのだが、残り30分程度ならばと自分を鼓舞してみる。ペースは遅くとも動いていれば少しずつながら山頂が近づいてゆく。
風雪はますます激しくなる一方だった。視界も悪いのだが稜線にあがれば山頂まではひと登りだ。うっすらとバイオトイレの建物がみえてくれば一安心。まわりにトレースはない。天候が悪いせいか今日登ってきた人はいないようだった。山頂ではひとまず虚空蔵神社に参拝してから休憩所で一休みをとる。長居をするつもりはなかったがテルモスから湯を注いでカップラーメンをつくった。
下りではフリースを着込んだ。さらにゴーグルを装着し完全装備で下ってゆくことにした。山スキーがありがたいのはスキーさえ履けばかなりの安心感が広がることにある。適当な斜面を拾いながら滑ってゆけばたちまち高度が下がり風も弱まってくる。狭い尾根では快適なターンとはゆかないが、新雪はけっこう豊富なので直滑降や斜滑降は結構快適だった。密林でもスピードがでないのでスキーの取り回しは結構楽しい。登りの林道に合流すればあとは自分のトレースに沿って下るだけだった。このルートは駐車地点までは上り返しがないのがいい。ボブスレーコースを絡めているとたちまち駐車地点が迫ってきた。