【概要】
6月頃から頸椎椎間板ヘルニアと格闘する羽目になり、闘病生活はすでに4ヶ月以上続いている。日増しに痛みがひどくなる一方で8月に入ると眠ることさえできない毎日だった。日常生活もままならないほど激痛はひどく一時は確実に手術も覚悟していたのだが、総合病院で2ヶ月ほど薬物療法を続けているうちに少しずつだが痛みも和らぎ始めてくる。それはほとんど奇跡的なことにも思える変化だった。それもこれもモルヒネのような劇薬のおかげなのだが、安静の必要もさほどなくなると今度は山の紅葉も気になりはじめてくる。軽い山登りならばとカミさんの許しをもらい昼近くになって自宅を出た。今回は久しぶりの頭殿山。登山口からは500m足らずの標高差しかなく今の自分にとってはちょうど手頃といえそうだった。
黒鴨温泉から登山口までは相変わらず悪路の連続。無理はせずに登山口約2km手前に車をおき林道を歩くことにした。強い日差しが降り注いでいる。杉の木立を通り抜けた日の光は地面を明るく照らす。しかし登山口ではすでに正午を過ぎてしまい陽は早くも西に傾き始めていた。ここは何回も歩いているのでなにも心配はないが最近多くなったクマの出没が気になるところ。道ばたには適期を過ぎてしまったクリタケが生えていた。そういえばこの時期は山の恵みの最盛期なのだと、季節の移ろう早さにあらためて思いいたる。
登山者は誰もいないようだったが山歩きはやはりいい。久しぶりに味わう山の匂いや香り、そして風の音や樹木のざわめき、山の空気などが体の隅々まで沁みて行くようでもある。このところの冷え込みもあって周囲はすっかり秋の彩りに包まれていた。しかしボクの体調はというと決して順調ではなく体力や筋力がかなり落ちているのを実感させられる。当たり前だが2ヶ月近くのブランクの大きさにたじろぐ自分がいた。
尾根の西側トラバースを終えると見晴らしの良いヤセ尾根が続くようになる。高度が上がるに従い紅葉も鮮やかさが際だってゆく。見上げるブナの黄葉と青空のコントラストが実に美しく秋の深まりを感じさせるようだった。急坂がつらく一時は途中で止めようかと弱気にもなったりしたのだが意識的に休み休みのゆったりペースを続け2時間ほどの所要時間で山頂に到着した。山頂からは大朝日岳が正面。山頂の肩には避難小屋も小さく見える。逆光気味とはいえ月山から赤見堂岳、障子ガ岳、小朝日岳と延延と連なる朝日の稜線が一望だった。今年は飯豊や朝日の夏山を眺めることさえできなかったが山はいささかも変わっていないことにあらためて感動する。体調が悪かっただけに久しぶりに見るこの風景は身に沁みるようだった。