【概要】
今日は午後から雨が降り出すような予報がでているのが少し気がかりだった。今日はコマクサを目的に蔵王へ。時期的には遅いような気がしたがまだいくらかは残っているかも知れないとわずかな期待を抱きながらライザスキー場へと向かった。
当初は中丸山から熊野への時計回りで周回するつもりだったが、御清水の森まできたところで気が変わり、いつ もと逆回りで登ってみることにした。ちょっとした変化をつけるだけだったが気分はがらりと変わった。もともとこの周回コースは歩く人も少ないのだが今日も 登山者は見当たらなかった。
御清水の森で湧き水をたっぷりと水筒に入れて登り出す。静かな参詣道を登ってゆくと傍らには蔵王権現、西国 三十三観音、姥神といった見事な石仏群がたっている。様々な石碑や大きな狛犬も多く残っており、ここは別世界というかちょっと不思議な空間でもある。ス キー場に飛び出してからはしばらく広々としたゲレンデを歩いてゆく。この辺りに花は少なくニガナやハクサンチドリ程度しか見当たらない。
リフト終点付近から山道へと入って行く。迂回路ではシャクナゲが盛り。白やピンクの彩りが鮮やかで蔵王もや はり花の山だなあと思わずにいられない。お田ノ神避難の湿原ではワタスゲやチングルマ、ウラジロヨウラクなどが咲く。よくみると可憐なトキソウも一角に。 なかなか出会えないだけに今日は少し得した気分。しかし、のんびりとしていたのもここまで。ポツリポツリと草木を軽く叩くような音が聞こえ始め、まもなく すると雨が降り出してきてしまった。時間はまだ9時半。あまりに早い雨の降りだしにいささかがっかりする。雨は廃線小屋付近で本降りとなった。しかたがな いのでザックカバーをとりだし雨具を着た。今日は久しぶりの雨の山歩きとなりそうだった。
刈田岳の大駐車場から馬ノ背まではゆっくりと歩いても20分程度。傍らの登山リフトでは本格的に降り出した 雨のためあわてて下り始める人が多かった。雨脚は結構強かったが視界はまだはっきりとしていて展望は利く。馬ノ背からお釜の方へ進むとコマクサが咲いてい る。まだそれほど色褪せることもなくコマクサが多く残っていたことに感謝。これで目的の半分は達成した気分だった。
熊野岳直下ではオノエランやイワカガミ、アオノツガザクラがちらほら。いつもの花がいつものように咲いてい る。次第に雨風が強くなる一方のためひとまず目前の避難小屋へと退却とする。小屋では4名ほどが休憩中。みんなあまりに早い雨の降り出しにがっかりしてい る様子だった。展望をのんびりと楽しみながら食事をする予定だったが今日はそんな余裕はなさそうだ。お湯を沸かしてからコーヒーを淹れ、あとはコンビニの おにぎりと菓子パン。休んでいる間にも次々と登山者が小屋にやってきた。みなびしょぬれだった。雨はますます激しさを増しているようだ。風音とともに窓に たたきつける雨音が絶えなかった。
小屋を出ると稜線は暴風雨の様相を呈していた。雨具でしっかり身を固めたからいいようなものの、半分観光気 分で登ってきたような人などは全身びしょ濡れのまま馬ノ背へと逃げるように下ってゆく。雨はまるで吹雪を思わせるほどの様相で降り続ける。さすがに 1900m近い稜線の天候はすさまじいというしかない。地面に跳ね返った雨が濃い霧となりそれが横殴りの風に飛ばされて視界を遮った。
中丸山へと進んで行くと徐々に雨も弱まってゆく。雨はその後も降り止むことはなかったが、振り返ると熊野岳 も馬ノ背もほとんど見えなくなっていた。稜線はまだかなりの悪天候が続いていた。こんな天候のせいだろう。中丸山へ向かおうとする登山者は見当たらなかっ た。まもなく深い樹林帯へと入ってゆくとそれまでの天候がまるでウソのように穏やかだった。ときおり左手にライザスキー場やレストランなどが見え隠れす る。雨は止むことはなかったが、樹林帯では風もほとんどなくなっていた。
中丸山の山頂からは下りいっそうとなる。まもなく眼下に仙人沢の吊り橋が見えてくれば今日の山歩きも終盤 だ。吊り橋から100mほどの登り返しがあるがそれもわずかである。体調がいまひとつでもなんとか歩き通せたことにまずは一安心。心地良い疲れと充実した 思いとが沸々と湧いてくるようだった。
登山口 |
御清水 |
ワタスゲ(お田ノ神) |
お田ノ神からの熊野岳 |
トキソウ |
チングルマ |
馬ノ背 |
お釜と後烏帽子岳 |
オノエラン |
シャクナゲと中丸山登山道 |
中丸山山頂 |
仙人橋 |