天候はあいにくの曇り空。県内はどこもパッとしない空模様だが、山に登れるのは今日しかないのだからしょうがない。途中で雨具を着ることも覚悟しながら葉山市民荘を出発する。駐車場には1台だけと少し寂しいが考えようによっては今回も静かな山歩きができそうだった。
林道から本格的な山道へと入ってゆく。すぐに雲の中につっこんだらしく次第に視界が無くなってゆく。付近は見事なブナ林が広がり、濃霧に包まれた様子はなにやら神秘的にも思えてくる。濃霧はひどくなる一方で被服が少しずつ濡れそうだった。途中から一時的だが小雨までが降りだしてきてしまった。幸い雨具を着るほどではなかったが気分は湿りがちになるばかりだった。
登り初めから疲れ気味だった。それでも30分も歩くと体も慣れてくる。登山道にはギンリョウソウぐらいしか見当たらない。そういえば前回の五段山もギンリョウソウのオンパレードだったのを思い出した。もしかしたら今年はギンリョウソウの当たり年かも知れなかった。尊仏平を過ぎるあたりからようやくスミレサイシン、サンカヨウ、ウラジロヨウラク、ユキザサ、マイズルソウといった花々も現れる。花の写真を撮っていると早くも登山者が一人下っていった。ずいぶんと若い人のようだった。
お花畑といっても花は少ない。せいぜいウラジロヨウラクがわずかに咲いているだけだった。お花畑は稜線上の分岐点。ここから右手に下るのが岩野コースだが分岐付近には「歓迎 葉山山岳マラソン大会」とかかれたプラカードがぶら下がっていた。先週末、ここで大勢のランナー達が走っていた光景を想像するのは個人的にはつらいものだった。こんな狭い山道でマラソン大会などどうかんがえてもバカげているのではないかといささか暗澹たる気持ちになった。
濃霧は相変わらずで目前の小僧森さえ霧に覆われて見えなかった。大増森、大つぼ石とピークを踏んでゆけば葉山本峰も目前。ここは結構アップダウンが続くところで足にくるところだった。葉山山頂には2時間40分かかった。黙々とひたすら歩いてきた割には時間がかかっていた。しかし、展望が楽しめないというのはやはり寂しかった。何も見えないのでは奥ノ院に向か気にもなれなかった。
葉山からは往路を引き返した。お花畑まで戻り昼食休憩タイム。木道で休んでいると少し薄日が差したりしたがすぐに濃霧に包まれた。今日はこの繰り返しのようで晴れる兆しはなかった。暑くない分だけありがたいのだが、それでも気温は少しずつ上がっているようだった。往路ではまだ蕾だったイワイチョウが結構咲いていて湿原に彩りを添えていた。
お花畑の分岐からは岩野コースへと直進する。わずかな高みを登り、それからは一気に下り坂となる。急坂が一段落すると湿原地帯にでた。大きな池塘が二つほどあって木道が東側に延びていた。木道の末端に「お田沼」の看板が横たわっいる。この時期、湿原には花がなくて少し寂しいばかりだったが、この「お田沼」の雰囲気はとてもいいものだった。晴れていれば池塘も湿原も華やぐだろうにと考えると今日の天候が恨めしかった。
「お田沼」をすぎると再び急坂を下るようになる、やがて大きな石がごろごろした場所に出た。腐れかかった看板には「百万ドルのドウタン」とある。樹齢数百年ともいわれる大きなドウダンだった。百万ドルともいわれるぐらいだから花の時期ではそれは見事なものなのだろう。岩野コースの代名詞ともなっている名所だったが今日は花びらさえ落ちていなかった。残念ながら花の時期はとっくに終わっているようだった。
まもなく道幅が広くなり付近は見事なブナ林が広がっていた。ここの光景はなんとなく月山の本道寺コースと似ているようだった。まもなくすると「うば様」のお地蔵。さらに下ってゆくと「八丁坂」。ジグザグの急坂を下り「大円院跡」に降り立った。突然、歴史を感じさせるような場所に飛び出してボクは思わず佇んでしまった。わずかに石段を下り登山口はそこからまもなくだった。
林道には暑い日差しが降り注いでいた。ようやく夏空が戻ってきた気がしたが上空には厚い雲が居座っていて、稜線はまだ濃い霧に覆われているようだった。駐車場のある葉山市民荘までは2キロ弱。のんびり歩いても30分ぐらいだろうか。だれも通らない舗装道路の林道をとぼとぼと歩き出した。
長命水 |
スミレサイシン |
サンカヨウ |
ユキザサ |
ウラジロヨウラク |
イワハゼ |
お花畑 |
ツマトリソウ |
ミツバオウレン |
ゴゼンタチバナ |
マイズルソウ |
タニウツギ |
ノウゴウイチゴ |
キスミレ |
ハクサンチドリ |
イワオトギリ |
山頂 |
大僧森 |
イワイチョウ(お花畑) |
百万ドルのドウタン |
うば様 |
大円院跡 |
大円院 |
林道を歩く |