【概要】
五段山には5年ぶり。しかし岳谷ブドウ沢口からは11年ぶりとだいぶ大昔のこととなる。民宿「惣兵衛」から大規模林道を進み飯豊トンネルの手前が登山口。左手には駐車場のような広場がありそこに車を止める。今日は2台駐車中だが人の姿はなかった。
登山口の反対側に登山届のポストができていた。届出用紙に記載し投函してから歩き出す。平地では青空が広がっていたが中津川は薄曇りの空模様だった。登山道はトンネルの手前から小沢沿いに進む。すぐに「川入切合登口」の標柱が立っており、そこからは急坂がしばらく続いた。一段落すると今度は尾根の南斜面をトラバースするようになる。歩きづらいところもあるが難所には何カ所かロープが張られていた。
沢水を飲んでいると早くも登山者が二人下ってきた。時間はまだ8時にもなっていない。山頂は濃霧で視界もないので五段山から引き返してきたらしかった。勾配がきつくなりジグザグ道。花は足下にギンリョウソウが目立つ程度でほとんど見当たらない。前回は5月だったということもあり、タムシバやムシカリ、さらにはイワウチワ、キクザキイチリンソウ、ムラサキヤシオといった春の花が新緑に映えて美しかったのを思い出す。やがて丁字路の稜線に登り着く。分岐には「川入切合1000m、左 月夜岳1.1km、右 五段山1.4km」と書かれた菱形の標識。そして「飯豊町ブドウ沢口」の標柱が立つ。ここは県境稜線であり、稜線の向こう側は福島県の山都町だった。正面にうっすらと見えるのは牛ヶ首山あたりか。霧に包まれて飯豊の主稜は全く見えなかった。
川入切合から山頂までは約300mの標高差。予想外に勾配のきつい山道が続く。ひとつのピークを登ると少し下ってまた登りの繰り返し。それが何度も続くので少しうんざりする。五段山の名前はこのあたりからつけられたものか。この辺りの記憶が全然残っていないのが不思議だったが、しばらくしてから前回歩いたのは残雪期だったのを今頃になって思い出した。その時はこの一帯はすべて雪原だったのだ。
最後の大きなピークにかかると大日杉から延びる支尾根が右手に見えてくる。傾斜が緩くなり平坦部を少し進むと五段山の山頂に着く。以前立っていた標柱はなく菱形の標識が3枚横たわっているだけである。周りは木立や灌木が密集していて展望はなく寂しい雰囲気に満ちている。濃霧は相変わらず。晴れていれば牛ヶ首山や地蔵山まで足を延ばす予定もあったのだがそんな気持ちはとっくに失せていた。朝食兼用のおにぎりを食べながら小休止をとる。濃霧の流れがますます激しくなっている。天候は下り坂のようだった。
山頂からはひたすら急坂を下る。200mも下ると雲から抜け出してようやく視界が出てきた。しかし上空には雨雲のような分厚い雲が居座っている。川入切合までのアップダウンは5カ所ぐらいだが、登りに比べればさほどきつくはなかった。川入切合の分岐から月夜岳へは稜線を直進する。ここからは初めての区間なので興味津々といった心境。潅木帯を抜けだすと見晴らしも利くようになる。左手遠方には曇り空ながらも大規模林道が見えた。月夜岳には20分で着いた。比較的新しいものと古い標識が2枚あるだけで展望はやはりなかった。月夜岳からこのまま進めば谷地平に出るはずだった。標識には500mで登山口とあり、これならばそう時間もかからないだろうと、未踏の山道をさらに探索してみることにした。
ここは今でも多くの人たちが利用しているのだろうか。月夜岳からの登山道は道幅も広く、驚くほどに整備が行き届いている感じがした。勾配もそれほどきつくはなく月夜岳から10分ほどで林道に降り立った。登山口には「飯豊山五枚沢登山口」の標柱と登山ポストがある。人の気配は全くみられない。天気がいまひとつだけに少し不安感が募ってきそうでもある。林道を少しだけ歩いてみる。以前、車でこのブドウ沢林道を通り熱塩加納村に何回か抜けたことがあるがずいぶんと昔の話である。桃源郷を思わせるような谷地平の湿原がうっすらと記憶に残っているくらいだった。ブドウ沢林道をこのまま下って行けば飯豊トンネルへと戻れそうな気もしたのだが、途中の状況が全く不明ではそこまでの冒険をする気持ちの余裕はなかった。今日は無難に往路を引き返すことにした。
飯豊トンネル |
登山口 |
川入切合 |
五段山 |
月夜岳 |
広い登山道 |
ブドウ沢林道 |
登山口 |