山 行 記 録

【平成26年3月1日/朝日連峰 高野〜小実淵山】



小実淵山の山頂



【メンバー】単独
【山行形態】山スキー、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】小実淵山(こさねぶちやま)1,036.7m
【地形図】(2.5万)羽前葉山、(20万)村上
【天候】曇り時々晴れ
【参考タイム】
駐車地点7:30〜横峰分岐9:40〜小実淵山10:20〜横峰分岐11:10-11:35-〜駐車場12:50

【概要】
 小実淵山は以前から地形図をながめて山スキーの機会をうかがっていた。一方、ちょうど1週間前に山形の阿○さんから誘われてもいたのだが、都合があってその日は残念ながら同行できなかった。予想していたことだが当日はパウダー三昧だったらしかった。得てしてこうしたチャンスはそうそう訪れないものである。事実、この週末以降、季節はすっかり入れ替わってしまい、昨日までの1週間は雨が降り続いたり、春のような陽気になったりと融雪がかなり進んでしまった。この山でパウダーを楽しめるのは先週末がラストチャンスだったのである。

 小実淵山はちょっと不思議な山でもある。愛染峠や横峰コースから長井葉山に向かうとき、ルートは小実淵山のすぐ近くを通るのだが、残念ながら登山道はなく残雪期や冬期にしか登れない。小実淵山というから大実淵山があってもよさそうだがこれもなさそうである。一方、小実淵沢や大実淵沢は実淵川の支流として存在する。

 今日は朝から冷え込みが厳しく自宅前の雪はカリカリに凍っていた。積雪もかなり減ってしまい、パウダーなどは望めべくもなかったが、まずは偵察と割り切り賞味期限がすでに切れたかもしれないこの小実淵山に登ってみることにした。葉山の麓を走る幹線農道に車を止める。以前、西高玉から別の尾根を利用して葉山に山スキーで登ろうとしたことがあったが、今日の駐車地点はそのとき場所から400メートルも離れていない。つまり稜線に登る尾根はこの付近にはいくつも存在しているようだった。

 駐車地点から少し平坦な雪原を歩いてゆくとすぐにこんもりとした丸いピークが見えてくる。まだ雪に埋もれている公園の施設のようなところをすぎるとすぐに尾根への取り付きだった。尾根は狭くそれに傾斜もあるので登りは結構きつい。まもなくするとスキーのトレースがうっすらと残っているのを見つけた。こんなところをスキーで登る人はそうそういるはずもなく、先週末の阿○さんのものだろうと確信する。先週はフルラッセルに難儀したらしいのだが、その痕跡は全くみられない。すべて平坦な雪面となっており、この1週間で少なくとも30〜40センチ以上は積雪が減っているようだ。そのトレースを追ってゆくと、雪に埋まっていた木々がすでに起きあがり、行く手を遮られる箇所も多かった。しかし、判別できる程度でもトレースがあるというのはやはり安心感が違った。アイスバーンの急斜面は結構つらく、シール登高の限界を感じたところでスキーアイゼンを取り出した。1時間ほどすると斜度も緩やかになる。乗り上げた平坦な尾根はカラマツが密集しているところだった。

 やがてナラやブナの木が多くなると展望も開けてくる。振り返ると白鷹町の集落が眼下に見えてきた。尾根も結構広々としていて登っていても気もちがいいところだ。これで雪質が最高ならばと思わずにはいられない。この区間に限っていえば、白兎尾根よりもずっと広くスキー向きともいえそうだった。この辺りから時々日差しが降り注ぐようになる。サングラスをかけようとしたら忘れてきたことに気づく。しかし、日差しはあるものの気温は一向に上がらない。葉山の稜線は雲に覆われてはっきりとは見えなかった。

 標高650mぐらいから再び尾根が狭くなり急な斜面の登りとなった。いったん800m付近で斜度がゆるやかになり、その少し先で再び急坂を登ると横峰コースの分岐点に着く。ちょっと小高い地点でジャンクションピークのようだった。ここから小実淵山は正面だが間に深い沢があり、木立も密集していてはっきりとはまだ見えない。近くの枝には赤いテープもあって雪山を歩く人がいるようだった。

 横峰分岐点からルートは左手に大きく迂回しながら高玉分岐をめざすようになる。しばらく平坦で広い尾根歩きだが、左手から視界が大きく開けてくる。はるか下の方に見える尾根の末端には小さな建物らしきものが見え隠れする。たぶんテレビ塔か雨量計だとすると高玉尾根のようだった。白鷹町の山居集落も眼下にみえていて抜群の展望が楽しめる区間だった。この辺りは若いブナ林を縫うようにしながら右手にルートをとってゆく。高玉コースとの分岐点付近からは軽いアップダウンがあるが大したことはない。高玉分岐点付近の標高は小実淵山よりもわずかばかり高いようだった。めざす小実淵山まではもうまもなくだった。

 小実淵山は平頂というほどではないものの小広い山頂となっていた。もちろん三角点はまだ分厚い雪の下に埋もれている。細い木々が邪魔をしていて西側の展望はあまりなかったが長い間の懸案だった山頂にたてて感無量の感慨に浸った。山頂到着はまだ10時半前。これからどうするか少し迷うところだった。天候さえ良ければ葉山へと足を伸ばすことも考えたが稜線が見えないという今後の天候も気がかり。それ以上に今日の雪質があいかわらず悪いということもある。気温はほとんど上がってはおらずアイスバーンのままなのである。滑りが楽しめそうもないというのはやはりモチベーションがあがらない。今日はいさぎよく小実淵山から引き返すことにする。そうと決まれば往路をただ戻るのも味気なかった。なにしろ高玉分岐点までは斜度がほとんどないのだ。ここは阿○さんにならい対岸の横峰分岐まで沢底経由でたどってみることにした。

 山頂から下ると割合に斜度が緩やかで木々もいたって疎ら。斜面も広々としていて感激するほどだった。しかし沢底が近づくにつれ、対岸の斜面がほとんど切り立っていることが次第に判明してくる。この辺りは地形図で事前に判断していたとおりだったが、いざ実際目前にしてみると結構ビビってしまう。対岸は垂直に近い崖そのものに見えた。1週間前はどうだったからわからないが、最近の高温で融雪が進んだこともあるのだろう。ほとんどの斜面が雪崩落ちているのも気がかりだった。沢底から対岸に取り付くのは不可能だった。

 しょうがないので途中からシールを貼り直して、迂回策をとることにする。少しずつトラバースを続けながら対岸への取り付け地点を伺う。源流部を遡りながらようやく登れそうな地点で沢底へと降り立ち対岸へと取り付いた。登り始めてしまえば横峰分岐まではまもなくだった。登り着いた横峰分岐でザックをおろしてしばし一休みとする。そしてようやく安堵感に浸る。眼下の風景をながめながらの休憩は至福の時間だった。

 ピークからは滑降の開始となる。気温は少しずつ上がっていたはずなのに、アイスバーンのような雪面には変わりがなかった。ザラメならば春スキーの雰囲気なのだろうが、広い斜面でも横滑りやアルペンでしのぎながら高度を下げて行く。まあ歩くよりははるかに快適なのは間違いなくこれも山スキーの楽しみといえなくもない。尾根が狭いところはとくに慎重に下った。ところが途中から登りのトレースが急になくなっているのに気づく。GPSを取り出してみると誤って右側の尾根に入り込んだようだった。そこは標高550m付近から少し下った地点だった。このままこの尾根を下るには雪の状態がかなり悪いように見える。一挙に融雪が進んだため尾根のところどころで積雪がとぎれていた。元の尾根に戻るにはシールを貼ればよかったのだが、左手の沢沿いに下ればまもなく傾斜も落ち、短時間で平坦な雪原に下りられるだろうと考えたのだ。それが間違いだったことにまもなく気付かされる。沢筋の雪は尾根とは比べものにならないほど柔らかくすでにズブズブになっていた。横滑りなどというのはすでにできなくなっていた。それに加えて上からでは全く見えない段差があったり、誤って入ったら抜け出せないような大きな穴がいくつも開いていたのである。傾斜もかなりきつくとても容易にすべってゆけるような状態ではなかった。

 雪崩の危険にヒヤヒヤしながら難儀しつつようやく斜度が緩やかな地点まで下りてきても試練はまだ続いた。小さな沢がいくつも出現して容易に渡れない箇所も出てきた。先日まではあったであろうスノーブリッジは、融雪が進んだせいでことごとく壊れていた。もう大丈夫だろうと思った平坦な杉林の末端でも行き詰まってしまい、シールを貼り直して対岸へ渡るために難儀しなければならなかった。結局、最後はギリギリのスノーブリッジを利用して対岸に渡り、トラバースしながら元の尾根へと戻った。時間はまだ1時前だったが、長い時間この悪雪と格闘したおかげで疲れ切って駐車地点へと戻った。


駐車地点


前方の尾根に取り付きます


狭い尾根


斜度が緩やかになりました


前方は横峰の稜線


横峰分岐


対岸に小実淵山


高玉尾根が眼下に


高玉分岐付近から小実淵山(左奥)


小実淵山直下を下る


小実淵山直下の緩斜面


駐車地点に戻る


ルート


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