北望台では青空が広がっていた。しかし晴れていたのはほんのわずかで、準備をしている間にも次第に濃霧に包まれはじめてしまい、なんとなく一昨日の再現のようでもあった。稜線に出ても相変わらずガスが覆っていて、一昨日よりもいくらか増しといった状態だった。晴れれば西大巓にも足を伸ばしたかったが今回もまた先延ばし。小屋にも立ち寄らずツアーコースへと突入することにする。
ツアーコースは厳しい寒気のおかげで雪面は吹けば飛ぶようなサラサラ、フワフワといった粉雪。これこそ本当のパウダーというものだろうとも思う。斜度がなくとも自然にスキーが滑りだす。雪の窪みも少なく雪面はよりフラットになっており、今日はおもしろいようにスキーが走った。
そんな折、山仲間の上○さんから無線が突然飛び込んできた。グランデコから西大顛を経由して西吾妻小屋まできたところらしかった。上○さんは一昨日も二十日平だったと後でわかったのだが、今日もまた二十日平の予定らしかった。お互いに似たような山スキーをしているなあと思わずにいられない。前回はあいにくボクの無線の調子が悪くて受信がうまく出来なかったのだが、今回の交信には問題なかった。しかし、お互いに近くまできていながら名人とは再びニアミスとなってしまった。
若女平近くでは急にトレースが現れてびっくりする。それも二人分である。うっすらと新雪がかぶっているところをみると昨日のもののようでもあり、この突然出現したトレースの状況からすると白布温泉からシールで登ってきて途中で引き返したのかも知れなかった。何はともあれトレースがあるので若女平の平坦地もスイスイとスキーが走る。ふと気づいたのだが、そのうちの1本の深いトレースは一昨日の自分のもののようだった。昨日の新たな積雪は、場所によって極端に多いところと、ほとんど降雪がなかったところと様々なようだった。
今日はこの走りすぎるほどの快適な雪質のおかげでこのままでは瞬く間に下山してしまいそうだった。若女平の標識にザックをおろして早めの昼食をとることにした。カップラーメンを作り、コーヒーを淹れて果物を食べながらしばしの小休止。見上げる西吾妻山はまだ薄黒い雲に半分以上おおわれていた。
若女平からヤセ尾根まではこれ以上はないというほどの快適な滑降だった。一昨日はこの区間20分ほど要したところも今日は5分もかかってはいないのである。全行程で比較すれば、一昨日は実質3時間30分だが今日はおよそ半分の2時間で終えそうである。今回の快適さが所要時間にも現れた形だった。ヤセ尾根を通過すれば残りの区間もわずかとなる。込み入った林間を縫うように滑ってゆくと最後の急斜面だった。
梵天岩 |
樹氷群に日が射す |
霧が晴れる西吾妻山 |
小屋近くのツアー標識 |
若女平 |
ヤセ尾根を通過します |
ヤセ尾根からは快適な滑降が続きました |
終点です |