【概要】
この三連休はなかなか天候に恵まれなかったが、最終日になってようやく晴天が期待できそうだった。北大玉山までは5年ぶり。大石橋を起点にすると大朝日岳往復や祝瓶山周回などいろいろ考えられるもののそんな体力は最近はとてもない。だいたい北大玉山までも届くかどうかさえわからないのだ。
早朝にもかかわらず駐車場は混んでいた。ほとんどの登山者は祝瓶山が目的のようだった。潜り橋は水量が多すぎて通れず久しぶりに一本吊橋を渡った。しばらく懐かしさを味わいながら河岸段丘を歩いて行く。このあたりはまだ青々としていて紅葉にはほど遠かった。3本目の吊り橋を渡ると角楢小屋。中をのぞくと昼食中の登山者がいて挨拶だけをして通過する。すこしずつ高度があがってゆくものの、ブナ林の黄葉にはまだまだ早いようだった。
大玉沢出合にかかる最後の一本吊り橋を渡ると急坂が始まる。こんなに勾配がきつかったのかと訝しむほどの急坂の連続である。まもなくすると人の気配がし、見上げると二人の男性が急坂の途中で休んでいた。大朝日小屋泊まりの登山者と思ったらすぐ上のテン場から降りてきたらしかった。しばらく立ち話をしてから再び登り始めた。高度をゆっくりと上げて行くと今まで緑が多かった樹木が急に色付き始めてくる。まもなく水場も近いという地点で、またまた登山者とスライドした。どこかでお会いした方かと確認してみるとやはり角楢小屋の主人の「山さん」であった。連れの女性とともに北大玉山を往復してきたらしかったが、大きなザックを背負っているところをみると、稜線上で何泊かしてきたように見えた。
蛇引の清水付近はかなり紅葉が進んでいた。明るい雰囲気が漂っていて頭上からはまぶしい日差しが降り注ぐ。水場から30分足らずで森林限界に出ると、左手からは大朝日岳など主稜の峰々が一望となった。右手には大玉山から祝瓶山の峰々。すばらしい光景にここまでがんばってきてよかったと実感する場面だ。爽やかな涼風が西側から流れ快適な稜線歩きとなる。このコースで一番すきな地点はこの森林限界付近でもある。これまでの苦しさから解放される瞬間は感無量なのだった。
小さなアップダウンを経て北大玉山分岐点に着く。ここは野川の源流地点でもある。右手は祝瓶山への縦走路が続き、左手は大朝日岳への登路である。見上げると紅葉に彩られた北大玉山が大きく前方にそびえ立っていた。
北大玉山には吊橋からおよそ2時間で登りついた。ようやくたどり着いたといった疲れを全身に感じていた。それでもやはり山頂はいいものだ。眺める光景はやはりここに来てみないとわからない。祝瓶山は逆行気味でシルエットのようにしか見えなかったが、反対側を見れば平岩山が目前で、そのすぐ奥には大朝日岳から中岳、西朝日岳、袖朝日岳の稜線が連なっている。蛇引尾根の後方には桧岩屋山があり、さらに奥には巣戸々山、光兎山と稜線が重なる。天候がよいだけに今日はほとんどの山並みが見渡せるようだった。
最近暑い日が続いたおかげで紅葉もちょうどよいタイミングだったようである。来週にもなればこのあたりは落葉が進み、すっかり晩秋の雰囲気に満ちているだろう。そう思うと今日の幸運に感謝しなければならないようだった。下山する前に大朝日岳を目に焼き付けてゆかなければとあらためて見渡してみた。すると平岩山から下ってくる登山者が小さく見えた。なんといい光景なのだろう。こんな天候ならばもっと早出をして、無理してでも大朝日岳を往復すればよかったのかなと、少し欲張った気持ちがわき上がってきた。ボクはこの静かな北大玉山の山頂で今年最後になるかも知れない朝日連峰の山並みをしばらく眺めてから下界に戻ろうと考えていた。
潜り橋とつり橋 |
角楢小屋 |
大玉沢の一本つり橋 |
まもなく稜線分岐 |
祝瓶山が間近です |
北大玉山分岐点(右手は大玉山) |
分岐から北大玉山へ向かいます |
振り返ると大玉山と祝瓶山が |
蛇引尾根の背後には桧岩屋山、巣戸々山、光兎山の峰峰 |
大朝日岳と平岩山(北大玉山山頂) |