【概要】
うかうかしていると山の紅葉が終わってしまいなので大朝日岳に出かけてみることにした。朝日連峰では紅葉が見頃だという便りがここ頻繁に聞こえていた。今日は高気圧にすっぽりと覆われるとあって雨の心配がないというのもいい。古寺鉱泉でも朝から快晴の空が広がっていた。
尾根にあがると黄葉したブナの葉を通り抜けた日の光が登山道に降り注いだ。いつもは薄暗いハナヌキ分岐付近も今日はまぶしいほどに明るく、落ち葉を踏みしめるとカサカサと乾いた音が響き渡った。古寺山から眺める大朝日岳はまるで絵画を見ているかのような華やかさに思わず立ち止まる。この光景を見るために今日は登ってきたのだという喜びがわき上がる。小朝日岳のピークは後回しにして巻き道へと進んだ。今日は大朝日岳の山頂までたどりつくのがとりあえずの目標だった。
熊越が近づくにつれて大朝日岳がぐっと間近に迫ってくる。東側からガスが広がってきたのはこのあたりからだった。西側は快晴なのだがすでに大朝日岳の山頂や避難小屋は見えなくなっている。天候の崩れる心配は少しもなかったのだが、このガスのために日差しが差さなくなり、楽しみにしていた小朝日岳の南西斜面の輝きもいまひとつだった。
銀玉水までくれば山頂も近い。この冷たくて美味しい銀玉水は今日の疲れを癒してくれた。心配していたガスは少しずつ薄くなり、ようやく大朝日岳付近が晴れてきたと思ったのもつかの間、今度は逆に小朝日岳が見えなくなっていた。このあたりで若い登山者とスライドした。ボクと同じ日帰りのピストンらしかった。
大朝日岳山頂には出発してから4時間15分で着いた。小朝日のピークを迂回しているのでどちらかというと遅いくらいのペースだった。山頂では4名の先客が休んでいたのだが入れ違いに下っていった。ボクはインスタントの焼きそばを拵えながら一休み。5月以来の山頂は感無量だった。南には縦走路が延々と伸びていてその先端に祝瓶山が聳えている。平岩山や御影森山などはガスに見え隠れしているが、ガスのわき上がる様は躍動感があって見ていても飽きなかった。尾根道では夏山を思わせるような気温の高さにうんざりしていたのだが、山頂では爽やかな風が終始流れていて、朝日連峰はいつのまにか秋山がいっそう深まっている感じだ。しばし満足感と達成感に浸った。
30分ほどの休憩を終えて山頂を下る。小朝日岳まではガスが終始まとわりついたが暑くない分だけかえって歩きやすいともいえた。紅葉を楽しみながらの稜線歩きは別世界に遊ぶ心地よさがあるようだった。熊越から小朝日岳への急坂はさすがにきつくペースはがくんと落ちた。小朝日岳の西面は陽光が降り注いだこともあり、紅葉が一際鮮やかに輝いている。まるでペンキをまき散らしたよう感じは色鮮やかな絨毯を思わせる。この付近は朝日連峰においては紅葉の最前線となっているようだった。
誰もいない小朝日岳山頂だった。ここでも行動食を食べながらエネルギーの補給をする。しかしかなり疲れを感じてもいて今後の行程が少し不安気味。鳥原山までの区間を歩くのは何年ぶりなのだろう。とんと記憶がないほど昔のことのように思えた。急坂を下ると鮮やかな彩りに覆われた斜面が見えてくる。ガスで時々隠れたりするものの、この鮮やかな紅葉は疲れた気持ちを癒してくれるようだった。
鳥原山を下るとまもなく鳥原湿原に着く。湿原の草紅葉はいまがちょうど盛りだったが、日が傾いたこともあって色合いは少しくすんでいる。誰もいない湿原は静寂さに包まれていて、早くも晩秋の兆しが漂っているようだった。鳥原湿原からは畑場峰を経由して下るだけとなる。といってもまだ2時間以上の行程が残っている。すでに午後2時半近い時刻ではのんびりしている時間はなさそうだ。色づいた樹木も徐々に少なくなり、逆に緑が再び濃くなってゆく。太陽がハナヌキ峰の稜線に隠れてしまうと周囲は一気に薄暗さが増してきたように見えた。
早朝の古寺鉱泉 |
ハナヌキ峰分岐も今日は明るいです |
古寺山 |
古寺山から |
古寺山の西斜面 |
小朝日岳を仰ぎます |
巻道の途中から大朝日岳を見上げます |
熊越の分岐点まできました |
小朝日岳を振り返ります |
心地よい稜線漫歩が続きます |
銀玉水から再び晴れてきました |
大朝日岳もまもなくです |
山頂への途上から中岳を望みます |
祝瓶山への縦走路(山頂) |
山頂に到着です |
熊越から小朝日岳への急坂で |
ダケカンバがきれいです(熊越〜小朝日岳間) |
紅葉の絨毯が広がっていました(熊越〜小朝日岳間) |
鳥原山付近の紅葉も明るいです |
鳥原湿原はひっそりとしていました |