天元台では連休の3日間、様々なイベントが開催されており、お祭りムードが漂っていた。しかし、天候のせいもあるのだろう。観光客や登山者はかなり少なく寂しい雰囲気だった。リフトを乗っている時も視界はほとんどなかった。雨の心配もあるのでザックには傘を忍ばせていた。
北望台からは晴れそうもない天候にがっかりしながらの登りだった。ところが樹林帯を抜け出すとカモシカ展望台ではなんと晴れているではないか。下界はすべて雲海に覆われていてボク達は雲の上に飛び出したようだった。梵天岩や西大顛付近も青空が広がり色づき始めた灌木も見えた。これに気をよくしたのは当然で、気持まですっかり晴れ上がった。
西吾妻方面は何回も往復していることから今回は弥兵衛平に進んでみる。木道の両側に広がる湿地帯は早くも草紅葉に彩られていて歩いていてもとてもいい気分だ。風は寒くも暑くもなく、2000mの稜線はまさしく秋晴れ一色である。登山者は単独が2、3人、ほかに夫婦者が3組ぐらい。閑散としていてみんなのんびりムードだった。人形石からはボク達だけだろうと思ったら、振り返ると驚いたことに他の登山者もボク達の後ろを追ってきている。みな弥兵衛平に向かおうとしているのだった。
弥兵衛平は東大巓まで広がっている高層湿原で訪れるのは久しぶりだった。木道の両側には草紅葉に染まった湿原と様々な池塘が点在し、オヤマリンドウがびっしりと咲く。この心安らぐような風景を眺めながら木道に座って休憩をとることにした。時間はすでに11時半。たった1時間30分程度でこの天空の楽園を楽しめるのだからロープウェイやリフトの機動力は大きい。後続の登山者は次々とボク達の休憩地点を通り過ぎていった。もしかしたら東大巓まで往復してくる人もいるのかも知れなかった。
1時間ほどのんびりしてからボク達も東大巓の方角に向かってみることにした。この縦走路は大沢下りで数え切れないくらい通っているのだが夏山ではあまり歩いていない。雪のない風景が新鮮に映った。ヤケノママと大平温泉の分岐点を過ぎると小広い湿原に出る。ここは山スキーにおけるいつもの休憩地点で、目の前の高見を上ればもう東大巓となる。引き返すにはちょうどよい地点だった。
人形石まで200m足らずの登り返しをのんびりと上ってゆく。弥兵衛平まで足を伸ばした人たちはすでに引き返したらしく登山者の姿はなくなっていた。青い空は高くどこまでも歩いてゆける気分だったが秋の日は短い。午後を過ぎて太陽は急速に傾き始めていた。北望台からはゲレンデを歩いて下ることにしたが、膝が少し痛みだしたカミさんはリフトで天元台まで下ることにした。ゲレンデはまだ濃霧に覆われたままで、ふたたび視界のない世界へと逆戻りだった。雫が垂れるほど草木が濡れていたが、寒いくらいの空気は逆に心地よく、長いゲレンデを歩くには願ってもない天候でもあった。
カモシカ展望台から人形石に |
人形石から弥兵衛平に向かう |
前方に藤十郎 |
人形石を振り返る |
東大巓を眺めながら昼食です |
ヤケノママ分岐 |
弥兵衛平 |
ゲレンデを下る |