(22日)頼母木小屋5:50〜地神北峰6:30〜地神山6:42〜扇ノ地紙7:05-7:20〜梶川峰7:45〜五郎清水8:20〜湯沢峰9:20-9:35〜飯豊山荘10:30
【概要】
杁差岳は今年の山スキーで登っている。しかし丸森尾根から杁差岳というと12年ぶりというから我ながら驚く。2年前も丸森を登っているのだがその時は悪天のため頼母木小屋の往復だけだった。最近はモチベーションが上がらず山に対する気力も萎えがちなのだが、久しぶりのコースはやはりいい。いつになく心が騒いだ。
今日は朝から雲ひとつ無い快晴の空が広がっていた。連休初日のためか駐車場は閑散としていた。登山届をポストに投函して急坂を上り始めると頭上からは暑いくらいの日差しが降り注いだ。紅葉にはまだ2週間ほど早いのだがブナ林や潅木帯が少しずつ色づき始めている。秋晴れの中の快適な山歩きだった。途中で南陽市の5名グループを追い越す。少しも急いではいないのだが団体より単独のほうがやはり早い。体力が大分なくなっていてそれほどでもないザックが今日はやけに重く感じた。夫婦清水では水筒をいっぱいにする。沢水なのに非常に冷たい水だった。
しばらく急登が続きどんどんと高度が上がってゆく。振り返ると小玉川の集落やダイグラ尾根が見えた。ペースはかなりゆっくりだったが追いついてくる人もなく一人旅が続く。樹林帯を抜け出すとそこは丸森峰で、森林限界に飛びだしたことで視界が一気に広がった。丸森峰まではちょうど3時間。かなり疲れており焼きそばを作って一休みをとる。急登も一段落して一安心だった。日差しは照りつけているものの、真夏のような暑さはなく空気が爽やかだった。地神北峰まではもうひと登りだった。
地神北峰にたつと頼母木小屋が眼下となる。さすがに稜線の西側はかなり色づいていて、山形県側とは華やかさが全然違って見える。マッチ箱のような頼母木の山小屋はまるで童話の世界をみているようでもある。ここまで登れば頼母木小屋までは30分ほどの至近距離。爽やかな風と色づき始めた灌木などを楽しみながら下った。
頼母木小屋ではテントが一張り設営中だった。登山者が二人ほど外で休んでおり、水場ではホースで引かれた水が、音を立てて蛇口から溢れ出ている。まだ昼前だからだろうか。山小屋は予想外の静けさに包まれていた。ここまでの所要は5時間弱。疲労感はあるものの時間的にはまだまだ余裕はありそうである。ザックを軽くすれば3〜4時間ぐらいで杁差岳を往復できそうだった。小屋の中はまだガラ空きでボクはとりあえず不要なものをザックから取り出した。
大石山までは15分で着いた。傍らにはザックが4つほどあって、デポした人達は空身で杁差岳を往復しているようだった。この先、鉾立峰の大きなアップダウンがあるので、意識的にのんびりゆこうと心掛けながら先へと進んだ。ザックはかなり軽いはずだったが両足が異様に重く感じていて、一歩一歩引きずるように登った。登山道にはエゾリンドウとハクサントリカブトが結構咲いている。他には盛りを過ぎたようなマツムシソウやハクサンイチゲ、ウメバチソウが少し目立つ程度だった。鉾立峰では頼母木小屋を少し早めにでた登山者が休んでいた。この人は東京からの人で明日は大石ダムに下山するらしかった。
杁差岳には頼母木小屋を出てから1時間半で登り着いた。少し薄雲が広がっていたが見晴らしは良く、連峰北端の名峰からの展望にしばし見入った。杁差小屋に一足早く着いていた先ほどの登山者は小屋前でテントの設営を始めていた。日帰り程度のザックにしか見えなかったのだがテントまで入っていたことにボクは少し驚いていた。そのテントもストックと張り綱だけで立っており、重量はたった200グラムなのだという。ちょっと信じられないほどの軽さである。ボクはしばらく小屋前で立ち話をしながらこの人の興味尽きない山道具の話に聞き入った。
杁差岳を登り終えて両足はもう限界のようだった。今にも痙攣しそうなため、時々立ち止まってはふくらはぎや太ももを両手で揉まなければならなかった。鉾立峰、大石山と二つの大きなピークの登り返しはかなりきつくここは時間をたっぷりかけて歩いた。頼母木小屋には15時30分に戻った。GPSをみると今日の総上昇量は2036m。2000mを一日で登ったのは夏山では久しぶりのような気がした。どうりで足が攣るわけであった。テントは新たに2張りが増えていてテン場も大分賑やかさを増していた。小屋の中も多くの登山者で賑わっている。小屋泊まりは全部で15、6人ぐらいか。朝方出会った南陽市のグループは向かい側に陣取っていてすでに夕食の準備を始めている。寝床をセットし終えればまずは枝豆で缶ビール。たまたま隣が昨年の天狗小屋でも一緒になった寒河江市の方だったことからお互いに話が弾んだ。その後はウィスキーの水割りをやりながら夕食へと移行した。就寝前に外に出てみると新発田市の夜景が目映いほどに煌めいて見えた。
翌日は5時前に起床。コーヒーをドリップしてから朝食にベーコン入りのラーメンを作る。外は濃霧のためほとんど視界がないようだった。天候が良ければ杁差岳の往復を予定していた人もいたのだが、ご来光の楽しみもなくみんなは一様にがっかりしているようだった。大石ダムまで縦走するという女性パーティを見届け、ボクは頼母木小屋を5時50分に出た。
視界のない中、頼母木山、地神北峰、地神山とたどって行く。門内小屋を早朝にでてきた登山者数人と途中でスライドする。扇ノ地紙には1時間15分で登り着いた。濃霧はいつのまにか小雨模様になってきた。といっても雨具まで着る必要はなさそうだった。梶川峰まではなだらかな道が続く。草紅葉も大分色付いていて時々ハッとするほどの鮮やかさがある。まもなく井上さん達を中心にして行われた、先日の登山道整備箇所を通過する。実に丁寧に施工されていて参加された方の心意気が伝わるようだった。
梶川峰からは急坂の下りが始まる。梶川尾根は下るのは実に久しぶりで何年振りなのかさえ思い出せない。背丈を超すほどに深くえぐれている箇所もあって驚いた。これから登って行く人も結構いて今日の山小屋も大分賑わいそうに見えた。滝見場では石転ビ沢や梅花皮小屋が見えた。この頃になると分厚く覆っていた雲から抜け出したらしく視界はかなり回復していた。
湯沢峰ではこれから稜線をめざす登山者が一人休んでいた。はて?どこかでお会いしたような。もしかしたらと思い恐る恐る尋ねてみるとやはり宮城のULTさんだった。山スキーでは時々ニアミスやスライドをしているのだがお互いにサングラスをしているのでよくわからなかった。しばらくぶりにお話をさせていただいた後、ULTさんは先を急ぐのでといいながら梶川峰に登っていった。
湯沢峰を過ぎると怒涛の下りとなる。飯豊山荘までの標高差はおよそ600m。足元が少しふらついてきたこともあっていつもよりもより丁寧にと心掛ける。黙々と下っていると全身から汗がほとばしった。木立の間から飯豊山荘の屋根が見えてくれば登山口はまもなくだ。年齢もあるのだろう。体調がこころもとないことから意識的に時間をかけて登りそして下った飯豊連峰の2日間が終わった。(沿面距離一日目14km、二日目9.4km)※ULTさんの記録はこちら
尾根を登ってすぐ(正面は湯沢峰) |
丸森峰の左手奥は小玉川の集落 |
地神北峰からの展望 |
爽やかな風が舞う頼母木山への稜線 |
頼母木山 |
頼母木小屋と大石山(右) |
頼母木小屋に到着しました |
静かな大石山(正面は二王子山) |
鉾立峰と杁差岳(大石山から) |
鉾立峰の山頂 |
杁差岳 |
杁差小屋 |
頼母木小屋の夕暮れ |
扇ノ地紙付近の草紅葉 |
梶川峰近くの草紅葉と池塘 |
正面は梶川峰 |