今日は残暑が厳しい予報がでていた。頭上からは日差しが燦々と降り注ぎ、早くも熱中症の心配がでてきたそうであった。林間駐車場のすぐ近くに長命水という湧き水が流れている。この手の切れるような冷たい水をたっぷりと汲んでから歩き出した。このコースは9年ぶりに歩く。前回の記憶はほとんどなく、コース間違いなどがあって最初からだいぶ時間をロスしてしまった。思い出してみれば何のことはない。あまり深く考えずにりっぱな林道に沿ってゆけば自然と登山口に着くようになっていたのをすっかりと忘れていた。
林道終点の登山口からようやく山道に入って行く。この途中で一人の若い人に出会った。山登りではなくキノコ採りのための探索らしく、適当なところから引き返してきたようだった。急坂を少し登ると路傍に「こいと」の標識がある。前回の山行を思い出したのはこの辺りからだった。この標識は「一服台」「尊仏平」「ドウタン通り」とお花畑まで続き、山頂までのほどよい道しるべとなっている。美しいブナ林が続いたが気温も上昇気味で汗が全身から噴き出してくる。「尊仏平」の標柱を過ぎると再び急坂となり、左手から小僧森のピークが見えてくるとまもなくお花畑の分岐点だった。
お花畑は岩野コースやお田沼、大円院への分岐点。岩野コースから登ったのは20年近くも前だからだいぶ大昔になってしまった。稜線に出たというのに風が全くなかった。この暑さに体力が少しずつ奪われるようであった。お花畑は紅葉が少し始まりかけていてそこから小僧森へ眺めはなかなかよかった。新緑や紅葉の鮮やかさや華やかさはないものの、コントラストを抑えた色合いはどことなく心を落ち着かせるようでもある。小僧森、大僧森、大つぼ石、葉山本峰と結構きつい上り下りが続く。暑さに相当参っていたのだろう。このアップダウンは結構こたえた。
葉山山頂には一等三角点が設置されているのだがガスが広がりだしてしまい展望は今ひとつだった。疲れてもいたが一休みをすると動けなくなりそうなこともあってすぐに奥ノ院へ向かうことにした。山頂から少し下ると湿地帯が広がるなだらかな地形となる。山ノ内コースとの分岐手前に小さな池塘があってこの付近はとてもいい雰囲気に満ちている。この池塘にはミツガシワが一面だったが花はすでに終わっている。周りの草原にウメバチソウがわずかに咲いているだけであった。赤い鳥居のすぐ先が葉山神社の建つ奥ノ院だった。
奥ノ院までは3時間を要していた。標準的な所要時間といえそうだがボクはもうヘロヘロの状態でたどりついたといった心境だった。最近の集中豪雨による道路事情もあるのか、どこのコースからも登山者がやってくる気配はなく一人だけの山頂だった。西側に見えるはずの月山はガスの中。山ノ内への縦走路もわずかしか見えず烏帽子岩付近は濃霧に包まれていた。しかし、この霧のおかげで日差しが遮られたのは、今日の体調を考えればありがたいものだった。
30分ほどの休憩を終えると下山にとりかかる。下りとはいっても小僧森までは登りと同じ様なアップダウンがあるので結構きついものだ。登りで溜まっていた疲れが徐々に出てくるようで、最後の小僧森への登り返しでは両足が極端に重くなってしまった。今日のもう一人の登山者とは小僧森のピークで出会った。無線の機材を広げながら腰を下ろしているところだった。よく見ると目の前に大きなアンテナを立ててあり、どうやらこの人は無線の交信を趣味としている人らしかった。この人とはどこかで出会った気がしていたが、話をしているうちにピンときた。先週の山形神室の山頂でも無線をしている人がいたのだが、確認してみるとやはりこの人で、山形市在住の登山者だった。
お花畑まで下りたところで少し長目の休憩をとることにした。ここからは再び樹林帯となり展望も楽しめず、暑さがひどくなる一方だろう。そう思うと急いで下る気持ちにはなれなかった。体もかなりダメージを感じてしまいすでに疲労困憊だった。少し動くのも大儀になっていた。
長命水 |
ブナ林が続く |
尊仏平 |
大つぼ石と葉山本峰 |
山頂はこの奥にあります |
奥ノ院手前の池塘 |
葉山神社(奥ノ院) |
山ノ内コースは霧の中でした |