【概要】
今日は自宅を出るのが遅くなってしまい、駐車場はすでに汗ばむような蒸し暑さだった。気温のせいばかりでもないだろうが体調もいまひとつだった。つり橋を渡って急坂に取り付く頃にはびっしょりと汗が噴き出していた。この出だしから調子が悪かったようでもある。両足は異様に重くこれではどこまでゆけるのだろうかという不安を抱えながらの登りだった。
空模様はパッとせず全体に薄雲が頭上を覆っていた。今日は暑さの方が心配であり、こんな時には雨の方がまだよほどありがたいものだ。しかし雨の降る兆しはなさそうだった。途中で何回引き返そうと思ったことだろう。一休みするたびに食料を腹に入れて水をたらふく飲んだ。この暑さを考えて水だけは余計なほどザックにはあるので心配はなかったのだがこのときはすでに熱中症にかかっていたのかも知れなかった。
尾根を歩いていても先月の集中豪雨の被害は特に見られない。山の様子は以前と少しも変わりがないのに今日はこちらの調子があまりに悪かったようである。いつものようにいくつかのピークを乗り越えてゆくのだがそのピークに立つたびに一ノ塔までの遠さに気が遠くなりそうだった。
一ノ塔には喘ぎながら苦しみながらもなんとかたどり着いたという心境だった。こんなに難儀したのは初めてではないかとさえ思ったくらいだった。登り着いたときには確実に一ノ塔から引き返すつもりでいた。ところが樹林帯を抜け出したこともあるのだろう。稜線に立つと寒いくらいの風が吹いていて、休んでいる間に少しずつ体力が回復してゆくようだった。
眼下には針生平が見えていた。すぐ近くには徳網山とその奥には光兎山が鎮座する。右手には袖朝日岳、西朝日岳と長い県境稜線が延びていて、稜線のすぐ後方には顕著な巣戸々山が一ノ塔と対峙する。いい眺めだった。一ノ塔から祝瓶山までの高度差は200mもないのだと、自分を奮い立たせながら山頂へと歩き出してみることにした。
結局、祝瓶山までは3時間20分かかって到着した。いつもの倍近くの時間がかかっていた計算だった。山頂はガスに包まれて展望はなかったがかえって暑くなくてよかったと思った。ザックを放り投げて大の字になった。誰もいない山頂だった。途中で出会う人もなく今日は独り占めの祝瓶山だった。今日の体調でよく登ってきたものだと自分を誉めてやりたかった。8月も今日で終わりだがこの時期の祝瓶山に登るには暑すぎたのだろうか。ボクはほとほと疲れていたらしく、この祝瓶山の山頂からはしばらく動けそうになかった。
光兎山と徳網山 |
一ノ塔と巣戸々山 |