山 行 記 録

【平成25年7月13日〜14日/飯豊連峰 石転ビ沢〜丸森尾根】



梶川ノ出合は上流部を徒渉します



【メンバー】西川山岳会8名(佐藤節、高原、三宅、安孫子、遠藤敏、柴田、大江、蒲生)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】北股岳2024.9m、門内岳1887m、地神山1,849.6m
【地形図】(2.5万)飯豊山、長者原(20万)福島
【天候】(13日)雨、(14日)雨一時曇り
【温泉】梅花皮荘 500円
【参考タイム】
(13日)飯豊山荘6:20〜温身平分岐6:45〜梶川ノ出合8:50〜石転ビノ出合9:40〜梅花皮小屋13:50(泊)
(14日)梅花皮小屋7:30〜北股岳8:00〜門内岳8:50〜門内小屋9:00-9:20〜扇の地神9:40〜地神山10:10〜地神北峰10:30〜丸森峰〜夫婦清水12:30〜天狗平14:10着

【概要】
 県内では大雨警報や注意報が発令中で週末は最悪の天候が予想されていた。こんな状況に加えて体調も芳しくないことから当初は参加をしないつもりでいた。しかし、当日の朝、降りしきる雨音を聞いている間に、もしかしたら雨の山行も悪くないかも知れないなとふと思い直してみる。このところ山に向かう動機が薄らいでいることへのいわば反動みたいなものだろうか。土砂降りの雨の中を歩く自分の姿を想像してみるのはそれほど悪いものではなかった。急いで寝床を抜け出し、適当にザックのパッキングを済ませると自宅をでた。

 飯豊山荘では来ないはずの人間が来たのでメンバーは少し驚いている。今回は石転ビ沢が初めての人が何人かいるようだった。このコースはアイゼンが欠かせないが、柴田氏がアイゼンを忘れてきたというのでボクもつきあうことにした。ピッケルだけを頼りに試してみようというわけだった。小康状態を保っていた雨は出発する頃になって再び降り始めてきた。今日の小国町は平地でも豪雨のような降水量が予想されているので最初から完全な雨対策をして出発した。

 温身平からは、うまい水、彦右衛門の平と問題なく先を進む。こちらも石転ビ沢が初めてという3名のグループが、後ろをぴったりとついてきていた。梶川ノ出合はすでに雪渓が崩壊していたため上流部を徒渉して横断する。ここの横断は過去にも何回か経験があるので心配はなかったものの、梶川沢は連日の雨のために水量がかなり増していて、激流となっていたことから、その通過にはより慎重さが要求された。対岸からは山側を高巻いて雪渓に下り立った。

 たたきつけるような雨が容赦なく降り続く。気温も低いのだろう。雨具をきていても雪渓は寒くてシャツを一枚余計に着込まなければならなかった。石転ビノ出合から眺める石転ビ沢は、深い濃霧に包まれていて視界は20mぐらいしかなかった。前方への状況確認に細心の注意を払いながら登る。そんな矢先、雪渓の上流部からは落石が頻発するようになる。幸いにいくらかでも視界があり回避できたからよかったものの、こんなに多くの落石を見るのは初めてだった。

 本石転ビ沢ノ出合を過ぎ傾斜が増してきたところでみんなにアイゼンを装着させた。ボクと柴田氏はスプーンカットや堆積された土砂の部分を選んで登ってゆく。今年は例年になく土砂崩れや土石流が頻発しているらしく、いたるところに大量の土砂や岩石があって驚くばかりだった。土砂降りの雨では休憩もままならなかった。北股沢ノ出合では立ったままそそくさと昼食をとり最後の急斜面に取り付いた。中ノ島に上がると一安心だった。登山道を濁流が流れ続けていて、いったい夏道なのか沢なのかもわからない。ここでかなりの高度を稼ぐことができたが、中ノ島の最上部で再び雪渓が現れた。左手の夏道までは100mほどだが、ここのトラバース区間は傾斜もきつく、スプーンカットもない堅い雪面のため、ここはピッケルで一歩一歩ステップを刻みながら進んだ。

 トラバースを終えて再び夏道にあがった時だった。突然、大音響が雪渓に鳴り響き、近くにいた人は一斉に振り返った。その大音響は20秒ほども続いただろうか。異様な音はなかなか終わらず、とてつもない不安感と緊張感に包まれた。最初は落雷かと思ったのだが、左岸側で土石流が発生したのだと、しばらくしてからわかった。土石流は稜線直下から北股沢の出合付近まで一気に襲ったのだろうと思った。45度の急斜面を大量の土砂が流れる音を耳にするのは初めてだった。落石の心配どころではなかった。ガスで見えなかったことから後続が心配だった。音響が止んだところで、大声を上げながら確認してみる。幸いメンバーと後続の3名グループも無事だった。中ノ島の左岸側を登り詰めていればひとたまりもないところだった。

 ガスで何も見えなかったが小屋は目前だった。最後の雪渓を登り詰めれば小屋のはずだが先行しているメンバーからは何も音沙汰がなかった。ガスが濃すぎるためにたった10m先の山小屋がわからなく、先行メンバーは平坦な雪渓上で立ち往生していた。梅花皮小屋には14時頃になってようやく到着した。今日は8時間近くもかかったが、それだけ難儀したということでもある。悪天候をついて登り切っただけに達成感はいうまでもなく、いつにない大きな安堵感にみんな浸った。小屋では遅い昼食を兼ねた夕食、そして大宴会へと引き継がれる。夜になっても風雨は止むことはなく一晩中大きな音が鳴り響いた。

 翌日はのんびりと朝食を済ませ、管理人の関さんに見送られて小屋を出た。雨は朝方になりだいぶ弱まったものの、強風と濃霧で視界はほとんどなかった。濃霧といっても濡れるのは昨日と同様で雨具は欠かせない。稜線ではミヤマキンバイ、イワハゼ、ニッコウキスゲ、ヨツバシオガマ、コバイケイソウ、ヒメサユリ、オノエノランなどが咲いている。30分で北股岳に到着。悪天候の山頂だったが、初めてのひとに取っては感激もひとしおらしく、記念写真に余念がなかった。その後、門内小屋で大休止をとり、胎内岳、扇ノ地紙と縦走路を北上しながら丸森尾根をめざした。より短時間で下れる梶川尾根をわざわざ回避したのは、この時期、地形的に雪渓の通過が多く濃霧ではルートがわかりにくいこともある。強烈な風に見舞われたのは地神山から地神北峰の区間だった。体が飛ばされそうなほどの強風のためしばらく近くの灌木にしがみついた。

 地神北峰を過ぎると風はパタッとなくなった。丸森尾根は早い時期だと稜線直下に雪渓が多く残り、視界がないとかなり迷いやすいところだが、今回はちょうど雪が無くなったばかりで、すべて夏道を歩けたのは幸いだった。反面、花の時期にはまだまだ早かったようである。ショウジョウバカマ、イワカガミがようやく咲き始めたばかりで、色彩的にも乏しい感じがした。丸森峰からは長い下りの始まりだ。深くえぐられた登山道は歩きにくかったが、昨日の石転ビ沢に比べれば天国のように思えた。途中でいったんガスから抜け出すとようやく視界が戻った。しばらく雨具を脱いだり再び着たりと天候の不安定さを感じさせたが、西の空に大きく雨雲が広がりだした頃から雨は激しくなっていた。結局、バケツをひっくり返したような激しいほどの土砂降りは、飯豊山荘まで止むことはなかった。


濃霧と雨で稜線は見えません


彦右衛門の平付近を歩く


雪渓はかなり崩壊が進んでいました


梅花皮小屋でのんびりと


豪華な夕食です


管理人に見送られて


北股岳をめざします


門内小屋まできました


扇ノ地紙付近ではニッコウキスゲとヒメサユリ


晴れているようですが、すごい雨降りです


丸森尾根の登山口が目前です


豪雨が降り続きます


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