【概要】
5月の大朝日岳は久しぶり。古寺鉱泉の駐車場には県外ナンバーが多かったが、みんなとっくに出かけた後らしく人の姿はない。古寺鉱泉の周辺ではシラネアオイが満開。小屋の裏手から急坂を登って尾根に取り付くと、古寺川の瀬音も徐々に小さくなってゆく。ムラサキヤシオやタムシバの鮮やかさが新緑の中で特にめだつ。登山道ではカタクリやショウジョウバカマが盛りだった。
標高900m手前から雪が現れるとたちまち一面の雪原となった。夏道はほとんどわからないが先行者の踏跡があるので特にルーファイの必要はない。しかし残雪は異様なほど多い。まるで三沢清水付近を登っているような錯覚がある。背後には多くの残雪を抱いた月山がそびえていて、その左手には鳥海山がくっきりと浮かぶ。
一服清水もほとんど雪に覆われていた。雪道は歩きやすいのだがスリップするので疲れが徐々にたまってくる。こんなに疲れていては古寺山でやめようかと思い始める。一服清水からハナヌキ峰分岐までは急斜面のトラバース。スリップを少しでも避けたくて早めにアイゼンを装着することにした。ハナヌキ峰分岐から古寺山までは広い雪の斜面が延々と続いた。この辺りの積雪の多さは驚くばかり。まだまだ山スキーの対象にもなりそうだ。小屋泊まりだったという登山者が一人、二人と下ってくる。三沢清水はもちろん分厚い残雪の下であり、今の時期にはどの辺にあるのかさえわからない。古寺山北面の巨大な雪庇に上がると、前方に古寺山と小朝日岳の山頂、そして大朝日岳の主稜が目に飛び込んでくる。
とりあえずの目標である古寺山を通過したことで次の目標を小朝日岳とする。古寺山からもほとんど雪道が続いた。疲労感は大きく小朝日岳が限界だろうと考えていたが、一方では巻道を使えば大朝日岳も射程圏内だと思い直す。巻道のほとんどは急斜面のトラバース区間でアイゼンとピッケルは必携。この時期の危険地帯ということもあって、トレースは二人分だけだった。ボクはその踏跡に沿ってゆくだけだから、おかげで夏道を探す手間が省ける。熊越までくればアイゼンは不用となった。
熊越を過ぎてひと登りすると気持ちの良い稜線歩きとなる。この辺りも残雪がかなり多い。まだ花の盛りには早かったが、残雪を抱いた山々は美しいばかりで、眺めていると飽きることがなかった。稜線はほとんど雪道といった状態。銀玉水から先もまだ一面の厚い雪に覆われていた。雪は柔らかく坪足でも全く問題はない。キックステップとストックを頼りにグイグイと登ると大朝日小屋はまもなくだった。管理人と登山者が小屋の入り口付近で談笑中。
疲れはピークだったがようやく大朝日岳の山頂に到着する。今日の所要時間は5時間。もしかしたら6時間ぐらいかかるかも知れないと考えていたがこれも小朝日岳をカットしたおかげだろうか。昼食を食べながらしばらく山頂からの大展望を味わう。空気が澄んでいるせいか飯豊連峰が異様に近く見える。月山や鳥海山も青い空にぽっかりと浮かぶ。今日は熱中症になるほど日差しが強かったが、山頂では心地よい風が流れている。疲労もあって思わず眠くなるような爽やかな山頂だった。
山頂から下ると管理人が一人で登ってくるところだった。登山者はみな下山してしまい周りには誰もいなくなっていた。管理人の阿部さんとは山スキーの話に盛り上がり、しばらく立ち話をしながら山の情報を交換したりした。避難小屋を過ぎればあとはのんびりと残雪歩きと展望を楽しみながら下るだけだった。
古寺鉱泉 |
登山道にタムシバが |
前方に古寺山が |
ハナヌキ峰分岐付近から古寺山 |
ハナヌキ峰のトラバース箇所 |
古寺山直下 |
月山から障子ガ岳への稜線(古寺山直下から) |
古寺山直下の雪庇と障子ガ岳 |
中岳(古寺山から) |
月山と鳥海山(手前は古寺山) |
小朝日岳巻道 |
巻道からの展望(清太岩山の稜線と右奥に以東岳) |
大朝日岳(熊越上部から) |
小朝日岳(熊越上部から) |
以東岳(熊越上部から) |
銀玉水 |
避難小屋付近を歩く登山者 |
避難小屋 |
月山と避難小屋(大朝日岳から) |
祝瓶山への縦走路(大朝日岳から) |
大朝日岳山頂の道 |
下山路で |