山 行 記 録

【平成25年5月5日/飯豊連峰 梅花皮荘〜西俣ノ峰〜東俣川〜杁差岳〜東俣川〜西俣ノ峰〜上カバタケ沢】



杁差岳山頂からの滑降



【メンバー】4名(柴田、大江、大場、蒲生)※菊池氏は西俣ノ峰往復で参加
【山行形態】山スキー、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】西俣ノ峰1,023.2m、杁差岳1636.4m
【地形図】(2.5万)長者原、杁差岳(20万)新潟
【天候】晴れ(快晴)
【温泉】梅花皮荘 500円
【参考タイム】
梅花皮荘(300m)5:25〜登山口5:45〜大曲り6:25〜十文字の池(727m)7:00〜西俣ノ峰8:00〜1089m8:40〜東俣川9:15〜杁差小屋11:55-12:35〜杁差岳12:45〜東俣川末端13:25〜1089m14:50〜上カバタケ沢〜梅花皮荘16:35

【概要】
 西俣ノ峰は2年ぶり。今回は西俣ノ峰から新潟県側の東俣川へと滑り降り、そのまま沢底を遡行しながら杁差岳をめざす行程である。このワンディ杁差岳は昨年すでに柴田さんが単独で達成していて今回はそのルートをおおむねたどるものだ。このルートは大日杉から飯豊本山をめざすおむろの沢とよく似ている。杁差岳の標高こそ低いとはいえ、登山口の標高は大日杉から比較すると半分にも満たなく、全行程はおむろの沢とほとんど変わりがない。地図上の累積標高差だけでも2200mになるのである。よって飯豊本山と同様に12時間の行程が想定されるため午前5時出発となった。

 梅花皮荘から奥へ進むと民宿「奥川入」があり、ここから一面に雪原が広がっている。前回と同様に西俣ノ峰には夏道の登山口から尾根に取り付いた。「大曲り」までは岩場もある急坂の連続で、スキーを担ぎながらの登りは結構つらい。尾根には全く雪は見当たらなかったが沢沿いにはまだかなりの残雪がある。その白い残雪と芽吹き始めたブナ林が美しく、また登山道の傍に咲くイワウチワやカタクリにも疲れを癒される思いがした。この飯豊連峰の山麓にもようやく遅い春が巡ってきたようだ。

 「大曲り」からしばらくスキーを担ぐとまもなく登山道に積雪が現れる。シールが可能となったのは「十文字の池」からだった。今日の天候は全く問題がなく、見渡しても雲ひとつ無い快晴の空がひろがっている。前日も多くの登山者が登ったらしく、つぼ足のトレースが入り乱れている。休んでいると頼母木山往復という3人連れも登ってきた。左手には真っ白に輝く飯豊本山やダイグラ尾根、そして梶川峰や扇ノ地紙も目前に見えている。

 「十文字の池」からは西俣ノ峰へと伸びる尾根をたどってゆく。気温は高くジリジリとした日差しが頭上から降り注ぐ。やがて前方が大きく開けると西俣ノ峰の山頂だった。ここまで菊池氏が遅れながらも行動をともにしていたのだが体力を考えてここでリタイヤとなった。西俣ノ峰に立つと東俣川をはさんで杁差岳が望めた。その東俣川へは尾根を少し登った1089m地点から滑り出すことになった。ここは出だしこそかなりの急斜面だがアイスバーンでないのがいい。雪もザラメにちかく快適な滑降を楽しみながら沢底へと下り立った。

 東俣川の沢底の雰囲気は昨年の御秘所沢を髣髴とさせた。ここから杁差岳山頂までの標高差が、およそ1000m近くあることなどは、おむろの沢と同じである。シールを再び貼って、長い東俣川遡行が始まった。両側は急峻な崖が多くデブリがそこら中にあった。まだ落ちきっていないブロックなどもあるので注意は常に怠れなかった。ボクは昨日の疲れもでてきたのか、両足が重くてペースがなかなか上がらなかった。

 コースが大きく右に折れるあたりからは斜度がますますきつくなってゆく。山頂まではたどり着けないかも知れないという弱音が絶えず口から漏れる。もう1時間だけがんばろうか、もう30分だけがんばってみようかなどと、それだけを繰り返しながらきつい斜面を登り続けた。

 体調の悪さとは裏腹に、周囲の光景は夢のような世界が展開してゆく。広々とした斜面はまるで大雪原を見ているようでもある。どこの尾根でも沢でも登って行けそうであり、またどこにでも滑ってゆけそうだった。これほどの広大な大斜面はおむろの沢さえも凌駕しているのではないかと思えるほどだった。

 杁差小屋には正午少し前に到着した。出発してから6時間30分。もう一歩も動けないほど疲れていたが、登り切った達成感は格別の一言だった。飯豊連峰の北端であるこの杁差岳から振り返ると、縦走路が延々と南東方向に延び、そのすべてが雪に覆われている光景はまさしく圧巻としかいいようがない。頼母木山や地神山、北股岳、御西岳、飯豊本山、そしてダイグラ尾根の鋭峰、宝珠山と飯豊連峰のあらゆる山々が見渡せて、名前を挙げれば枚挙に暇がないほどだった。

 避難小屋から杁差岳山頂までは20mほど。シールをはがし、スキーを担いで山頂を踏む。風が半端ではないのだろう。山頂の祠や地面があらわになっていて、一方ではエビのシッポもびっしりと貼り付いている。この杁差岳の山頂から滑る快感を何にたとえれば良いのだろう。東斜面を滑り出すとスキーはもう止まらなかった。この時期の新雪は通常ブレーキとなるものだが、斜度が結構あるので滑りには何の支障もない。とりあえず200mぐらいの高度差を一気に下った。雪は少しずつ重たくなっていたが、豊富な残雪に覆われたこの斜面が信じられないほどなのだ。標高差1000mはいくら滑ってもなくなることはなく延々と滑降が続いた。

 東俣川の末端からは1089m峰までの400m近い登り返しが待っている。急斜面の登りなので全員クトーを装着した。重い足を引きずるようにしながら一歩一歩登る。稜線ははるか高みにあり、ただ無心になって足を上げる行為を繰り返す。ここはまるで石転ビ沢を彷彿とさせるような急斜面だったが、登るに従い杁差岳が徐々にせり上がってくる状況は感動的でもある。杁差岳の山頂直下を見れば4人のシュプールがはっきりと刻まれているのが見えた。

 1089mからはスキー滑走が可能だった。往路の夏道を下らずにすむというのがうれしい。これは西俣ノ峰との中間付近から東側の沢を下るものだが、この沢を下れるというのも、前日、柴田氏が事前の踏査をしてくれていたおかげである。この上カバタケ沢は平地までの標高差が800m近くあるわけで、これは想像していたよりもかなり長い滑降距離がある。言い換えると杁差岳の山頂からもういちど東俣川を滑るようなものなのである。気温が少し下がってきたこともあってスキーは思いの外走った。途中で1箇所だけデブリの通過があったものの、ほぼ何の問題もなくスキーで滑りきって平地へと降り立った。平地と言っても雪原はまだまだ続いており、結局、杁差岳の山頂からスキーを一度も担ぐことなく登山口に戻れそうである。ボク達は奥川入荘の目の前までスキーで滑って行き、11時間に及ぶ飯豊連峰を楽しんだ長い一日が終わった。


梅花皮荘を出発です


十文字の池に到着しました


前方に西俣ノ峰が


快適な尾根が続きます


西俣ノ峰と杁差岳(右奥)


1089m峰


1089mから東俣川へ


東俣川への滑降です


鉾立峰と杁差岳が正面に(谷底への途上で)


東俣川の遡行


この辺りは東俣川の緩やかな登が続きます


正面のピークは右にルートをとります


広々とした東俣川の源頭部付近


正面は杁差岳です


頼母木小屋(中央)が見えてきました


山頂が目前です


ようやく杁差小屋に到着です


二王子岳


小屋から山頂まではすぐ


杁差岳山頂


山頂から滑降開始です


山頂から滑降開始です


山頂から滑降開始です


東俣川から1089mへの登り返し


杁差岳(中央)を振り返る(斜面にシュプールが)


1089mへの広い尾根


1089mから望む朝日連峰


1089mから望む飯豊山とダイグラ尾根(左)


上カバタケ沢へのドロップポイントです


最後の滑降を楽しみます


果敢に攻めています


こちらは優雅に


上カバタケ沢の筆者(柴田さん撮影)


上カバタケ沢の筆者(柴田さん撮影)


上カバタケ沢(柴田さん撮影)


上カバタケ沢(柴田さん撮影)


上カバタケ沢の下流付近


奥川入荘まで雪がつながっていました


梶川峰と扇ノ地紙(川入から)


梅花皮荘の駐車場に帰ってきました



ルート

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