山 行 記 録

【平成25年4月13日〜14日/月山〜肘折温泉】



念仏ヶ原 二日目の朝



【メンバー】7名 西川山岳会(柴田、佐藤節、大江、蒲生)+ゲスト(後藤、西久保、伊藤)
【山行形態】山スキー テント泊
【山域】出羽三山
【山名と標高】月山 1984m
【地形図】(2.5万)月山、立谷沢、肘折(20万)仙台
【天候】(13日)曇り時々雪&濃霧&暴風、夕方から晴れ、(14日)晴れ(快晴)
【温泉】肘折温泉「肘折いでゆ館」350円
【参考タイム】
(13日)姥沢8:15〜リフト上駅9:30〜牛首11:00〜月山12:50〜千本桜13:40〜立谷沢橋15:40〜念仏ヶ原(テント泊)16:50
(14日)念仏ヶ原7:40〜小岳8:40〜978m9:40〜ネコマタ沢9:50〜778m10:20〜大森山11:30-12:50〜林道13:10〜朝日台13:40〜肘折温泉13:50
「肘折いでゆ館」=(車)=そば屋(舟形町)=西川町開発センター(解散)=(車)=自宅

【概要】
 今週は恒例の山岳会主催による月山肘折。例によって今年もマイクロバスをチャーターしてのスキーツアーである。今年から月山スキー場のリフト営業が4月15日と変更になったため姥沢の駐車場から歩かなければならなかった。標高差にして約300m増える程度だが、重荷を背負ってとなると決して楽ではない。今回の参加者は当初8名。のち牛首付近で1名離脱となったため7名でのツアーとなった。

 天気予報では好天が予想されていた。しかし、姥沢でも雪煙が舞うほどの強風が吹いており気温は真冬並の寒さだった。このままでは牛首付近から撤退もあり得るだろうと覚悟しながら登り始める。月山スキー場はまだオープン前ということもありスキーヤーはごくわずか。時折目の覚めるような青空が広がり、今後の天候回復が期待できそうな素振りを見せた。

 リフト上駅ではさらに強風が激しさを増していたが、天候の回復に一縷の望みを抱きながら一路金姥へ向かう。昨夜からの新雪が30〜50センチほどあり、一足早く姥ガ岳に登っていた大場さんたちが姥の東斜面をひと滑りしながら、久しぶりのパウダーを楽しんでいるようだった。

 牛首までくると完全なホワイトアウトとなった。予報が裏目にでてしまった形だった。シールでも問題なく登れるだろうと思われた急斜面も次第にアイスバーンが多くなり途中でアイゼンを装着。ここでアイゼンを忘れてきた荒○さんが次第に遅れ始める。辰彦さんがつきっきりでサポートしてくれていたが、結局一歩も登れなくなり途中で離脱。真冬のような厳しい寒気と強風のため、雪面はストックさえ刺さらないほどの堅い氷と化していた。

 山頂には先行組4名が少し早めに到着していたが、後続組が合流した時には午後1時近い時間となっていた。悪天候の中、山頂直下の対応などで牛首からは2時間もかかったことになる。ホワイトアウトと暴風は少しも治まる気配はなかった。ボク達は一刻も早くこの最悪の状況から抜け出さなければならなかった。しかし、自分のスキーさえ良く見えない状態では大雪城を優雅に滑るところではない。雪面も方角も高低さえも全くわからないのである。GPSを頼りに全員トレーンで下ることにしたのだが、登っているのか下っているのかさえわからず、終始ガス酔いのような状況が続いた。それでも下り続けていればなんとかなるものだ。無限に続くと思われた大雪城だったが午後2時近くになってなんとか見覚えのある千本桜に到着した。

 千本桜も風雪のような強風と視界不良はいささかも変わりはなかった。悪天候の中、昼食もそこそこに千本桜の急斜面を下る。天候が穏やかになり始めたのは広い尾根上におりた付近からだった。分厚い雪雲から抜け出したらしく、眼下の念仏ヶ原もはっきり見えるまでになっていた。強烈な風と寒気に晒され続けた新雪は、やや重めのパウダーと少し堅めのモナカとなっていたが、視界が得られる安心感は格別だった。広大な尾根を勝手気ままに下ってゆくと、立谷沢川への急斜面では視界が完全に戻り、上空には春山らしい青空が広がった。積雪の多さからか急斜面にもかかわらずクラックもない。斜度も心なしか緩い感じがした。しかし気温が高くなったため雪はすでに腐っていて、みんなこの重い雪に四苦八苦しながら立谷沢川源頭部へ下り立った。

 立谷沢川からはシールを貼って沢沿いに登ってゆく。普段はそこかしこに雪解けの気配があるものだが、今年はまだまだ大量の積雪に埋まっていてここが沢底とはとても思えない。まもなく飛びだした広大な雪原は秘境念仏ヶ原だ。ここまで悪天候の連続だったこともあって、青空が広がったこの桃源郷のような念仏ヶ原は鳥肌が立つほどの感激がある。のんびりと月山を振り返りながら広大な雪原を歩くひとときは感無量だった。

 念仏小屋は屋根の一部が出ているだけでほとんど積雪に埋まっていた。小屋に入るためには最低でも4〜5mは掘り出さなければならず、今回はもちろんここまで担ぎ上げてきたテント泊に決定する。例年にないほどの疲れを感じていたが、これからの宴会と心地よい幕営生活が待っていると思うと気持は大きく弾んだ。

 翌日は5時起床。外に出てみると快晴の空が広がっていた。月山は朝日を浴びてひときわ白く輝いている。その神々しいまでの姿はここまでたどり着いた者だけが味わえる特権でもある。見上げても雲ひとつ見当たらなく今日は暑くなりそうな予感が漂っていた。

 テント撤収後、全員で記念写真を撮り、テン場を7時40分に出発した。すでに気温はかなり高く下着一枚でも十分だった。もちろん手袋さえも不要である。念仏ヶ原からはいつもの快適なシール登行が続いた。天候が良いだけになんの心配もなく快調に登って行き、小岳からは快適なスキー滑走の始まりとなる。赤砂沢に沿って尾根を快適に飛ばして行くと沢底からはすぐに978m峰へと登り返す。気温はどんどん上昇していて汗が流れる。978m峰からひと滑りすればネコマタへの最上部だ。いつもは大量のデブリに埋まるネコマタ沢だが、今回はデブリがほとんどなく、急斜面も例年よりはかなりなだらかに見える。稜線からの大きな雪庇もほとんど落ちてはいないようだった。例年、人間雪崩が頻発するのがネコマタ沢だが、今年は皆スキーがうまいのか期待通りの状況にはならなかった。

 ネコマタ沢の末端からは778m峰への登り返しとなる。778m峰からはブナ林をすり抜けながらのツリーランがあり、大森山直下までの長いトラバースと続く。小岳を出発してから、赤砂沢、978m峰、ネコマタ沢、778m峰と尾根を次々につなぐのがこのコース最大の魅力でもあり、何回経験しても飽きることがない。トラバースが終わればそこは大森山直下だ。

 大森山山頂までは見上げるほどの急斜面が待っている。雪がかなり融け出していることからシールで登ることにした。大森山に早めに登り切ったメンバーからさっそく宴会用のテーブル設営となる。ここは年に一度だけ開店する「レストラン大森山」。ザックに残っていた食材や飲み物などが次々と雪のテーブルに広げられたが、今回は食材がかなり余っていたことから「ラーメン定食」が振る舞われることとなった。そのラーメンを作っている最中に、マイクロバスで肘折温泉に向かっている辰彦さんから「ラーメンなんか食べずに早く下りてこい」「そんなに食べると蕎麦を食べられなくなるぞ」と脅かしの無線が入り、そのため半盛りラーメンに量を調整した。しかし、ラーメンといっても野菜たっぷりで、手の込んだそのできばえには全員が舌鼓を打ったのだった。大森山の楽しい歓談も午後1時近くになれば店じまいとなる。西側をみれば通過してきたばかりの小岳があり、肘折温泉はもう目前に迫っている。繰り広げられてきた夢のような舞台が間もなく終わろうとしていた。

 大森山の山頂からは最後の滑走となる。ブナ林を縫って行くこの区間は一部に急斜面があるもののツリーランが楽しめる。ザラメの急斜面を滑り終えれば林道だ。林道に降り立てば今回のツアーも終盤となる。林道をショートカットすれば肘折温泉の朝日台もまもなくだ。朝日台はまだまだ多くの積雪に覆われていた。広い雪原から肘折小学校前へと滑り込んでツアーは終了となる。そこには事務局長自らが運転するマイクロバスがボク達の到着を待っていてくれた。下山後は「肘折いでゆ館」のしっとりとした温泉に浸ってこの二日間の汗を流した。舟形町「重作」の蕎麦で締めくくり、西川町の開発センターで解散となった。


姥沢から歩き始めました


リフト上駅への登り


赤見堂岳も晴れていたのですが


リフト上駅にて


千本桜を滑り終えて


晴れる尾根


立谷沢川への滑降です


晴れる立谷沢川への急斜面


念仏ヶ原へと飛び出しました


月山を振り返る


念仏小屋へと向かいます


間もなく念仏小屋


影が長く伸びてきました


念仏小屋は頭だけ出ていました


テント設営が完了しました


シールは外に出して一晩乾かします


テントに入ればさっそく乾杯です


念仏ヶ原の夜明け前


早朝の念仏小屋


早朝のテン場


日が昇りはじめるとテント撤収です


神々しいばかりの月山


念仏ヶ原を出発します


月山をバックに爽やかな朝です


小岳近くからの月山


小岳から滑降開始です


今度はネコマタ沢をめざします


ネコマタ沢


778m峰への登り


大森レストラン


おいしいラーメンでした!


林道への最後の滑りです


肘折温泉まであとわずか


肘折小学校がゴールです


ルート
inserted by FC2 system