山 行 記 録

【平成25年2月17日/蔵王連峰 笹谷IC〜坂元沢〜カケスガ峰】



まるで桃源郷です



【メンバー】3名(阿部、鈴木宏○、蒲生) ※一回目の登り滑りは単独
【山行形態】山スキー、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】カケスガ峰1340m(※1120mまで)
【地形図】(2.5万)笹谷峠 (20万)仙台
【天候】晴れ一時雪
【参考タイム】
笹谷IC(500m) 7:50〜1120m10:30-10:40〜660m11:20〜1060m12:30〜890m12:54〜950m13:15〜坂元沢合流点(600m)14:00〜970m15:10-15:30〜笹谷IC 16:00

【概要】
 笹谷ICからカケスガ峰に至るルートは山形の阿部さんが開拓したルートで、彼は何年も前からこの界隈を滑り尽くしている。まあ地元に住むものの強みともいえるものなのであろう。そんなルートを参考にしながらカケスガ峰に登り山スキーを楽しむことにした。

 笹谷トンネルを抜けるとかなりの強風が吹き荒れていた。山形県側は意外と晴れていたのだが、予想外に雲が多く、見あげても山々の稜線は全くみえなかった。笹谷ICの除雪終了地点には誰もいなくて今日は一人旅だろうと思った。阿部さんのルートは坂元沢右岸尾根の1100m地点から200m以上坂元沢に下りなければならず、カケスガ峰にはそこから登り返しとなる。地形図を何度見てもこの大きな下りと登り返しが嫌で、当初は坂元沢の左岸尾根、つまり直登ルートを登るつもりで予定をしていた。ところが杉林まできたところで昨日のものと思われるトレースがうっすらと残っていたことから、つい右岸尾根に誘導されてしまった。まあこれが阿部さんの正規ルートらしいのでとりあえずよしとするかといつもの行き当たりばったりとなる。

 杉林の切り開きを進むとやがて広葉樹の樹林帯に出て辺りは一気に明るくなる。沢底を登ってゆくとラッセルが結構きつくなり徐々に右手の右岸尾根に上がった。尾根はなだらかだった。ラッセルもくるぶし程度となりだいぶ見晴らしがきくようになったが、今度は強風がまともに吹き付けるようになる。立ち止まると体が急速に冷えた。川崎町の予報では晴天のはずだったが山の天候にはいつもはぐらかされる。寒気と低気圧の名残がまだ上空に居座っているようだった。

 急斜面と緩斜面が交互に現れるようになり徐々に高度があがってゆく。まもなくひとつのピークを登り切るとそこには送電線の鉄塔が立っていた。ここから先、左側は大きな雪庇が続くようになる。雪庇の先端は切り立った鋭利なナイフのようになっていて、ときどき目もくらむような雪煙が舞い上がる。風はちょうど笹谷峠から雪を伴って流れてくるようだった。吹きさらしの急斜面はシュカブラとクラストの雪面だった。部分的にはガリガリのアイスバーンもあり、吹きだまりのところは驚くほどの深雪だった。

 まもなくすると広々とした大雪原が現れる。風はほどよく収まっていて、上空には青空が広がり、まるで桃源郷に迷い込んだような錯覚にとらわれる。左手は南沢の源頭部らしく、木立のない広々とした緩斜面になっていた。往路を引き返した場合はこの南沢を滑ってゆこうと決めた。

 尾根は再び樹林帯となり、急斜面を乗り越えてゆくと、前方には雁戸山の前衛峰である1410m峰が見えてきた。ここから先は割合平坦で、小さなアップダウンを繰り返しながら1410m峰へと接続しているようだった。登り切った地点の標高は1120m。強風は相変わらずだったが、右手を見ると薄雲の間からはカケスガ峰と前山のピークが現れた。カケスガ峰に登るためにはここからいったん沢底まで下りなければならないのだが、一見して簡単には下りて行けるような状況ではないのがわかる。一歩も足を踏み入れられないほどの密林のうえにかなりの急斜面なのだ。少し高度をさげてから降りてゆけば、以前に阿部さんのとったルートになるのだろうが、とても常人がゆけるレベルではなさそうだった。

 さてカケスガ峰を断念するとなると、あとは滑降の楽しみが待っている。ここまで2時間30分もかかったが南側の沢沿いに下ればパフパフのパウダーなのは明瞭だった。ポカリだけ飲みさっそく滑降を開始する。主尾根はクラストとシュカブラも多く今回ファットスキーを持ってきたことを半分後悔していたのだが、無名沢に飛び込んだ瞬間、スキーの選択が間違っていなかったことを知った。強風のおかげで沢底は吹きだまりとなっていて、浮遊感漂うような滑りが続いた。さきほどの広々とした沢の源頭部に出ると心地よいファーストトラックを刻みながら一気に深雪を滑り降りていった。

 まもなく杉林になろうかという地点まで滑り込むと眼下に人の姿がみえた。近づいてみればなんとこのルートの開拓者である阿部さんがスノーボーダーの女性を伴いながら登ってきたのである。女性はスノーボードでは神業のような技術をもった人で3年前の赤見堂岳以来の再開だった。時間は11時20分。またこの地点の標高はおよそ660m。阿部さん達は最初は村山葉山にでかけ、次に西川町本道寺に向かったが、いずれも悪天候のためこの笹谷ICに転進してきたことからこんな時間になったものらしかった。ボクは登山口も目前のため、いったんは二人を見送ったのだが、まだ時間も早いことを考え急遽シールを貼り直して二人の後を追った。阿部さんの語った右岸尾根の北の沢もかなりよいのだという話に心が揺り動かされていた。

 まさか再びこのルートを登ることになろうとは予想もしなかったが、阿部さんはこの深々とした深雪の沢底というのにすごい早さでラッセルを続けてゆく。再び1060m付近まで登りきったところからは北側に進路を取った。ここはさきほどの南沢よりも広々としたスキー向きの斜面が広がっていた。もちろん樹木はあるにはあるが疎林帯といってもよく、心地よいツリーランを楽しみながら沢底へと下り立った。まだまだ下まで滑れるようだったが、今度はさらにもうひとつ北側の沢に行こうというのである。まあ考えてみれば阿部さん達にとってはこれが1回目の滑降なのだからまだまだ物足りないのだろう。見あげると気持ちの良い青空が頭上を占めていて日差しも暖かだった。上空を吹き荒れる強風も沢底までは流れてはこないようだった。

 沢底からは少しの登りで北尾根に登り着く。地形図をみるとなだらかな尾根は一見するとスキー向きに見えたのだが、樹木が密集していて、しばらくトラバースしながら落下点を伺っていた。阿部さんによると以前は広々とした斜面があったのだというから、いつのまにか樹木が伸びてしまったのだろうと思われた。送電線の鉄塔下を通過後はどんどんと沢沿いに下ってゆき、まもなくすると支流と坂元沢の合流点に下り立った。

 標高はおよそ600m。駐車地点までの高度差はいくらもないはずだった。坂元沢の対岸には林道の道形もあり、わずかに下れば車道に出る地点まで近づいていた。しかし、この若い二人はこれから再びはじめのピークまで登り返そうというのである。つまりボクが最初に登った右岸尾根にまず登り返し、そこから1000m付近のドロップポイントまで登ろうとしているのだった。もっとも二人にしてみればあのおいしい南沢をまだ滑ってはいないのだから気持はよくわかった。ボクはもう体力の限界だったが、ここまできたらとことんつきあうことにした。天候は下り坂らしくいつのまにか津々と雪が降り始めていた。

 支流のスノーブリッジを恐る恐る対岸に渡ってから南東に延びる支尾根に取り付く。まさか最初に登った尾根を3度目もたどろうとは思いもしなかったが、シールの張り直しはこれで4度目となり、厳しい冷え込みもあってほとんど接着はしなくなっていた。夕暮れが迫っているせいもあるのだろう。気温はかなり下がっていて、右岸尾根に乗り上げると時折すさまじいほどの地吹雪が舞った。時間はすでに15時を過ぎている。西の空が茜色に染まり始めていた。

 ボクはシールトラブルなどがあってずいぶんと遅れたりしたが、それでもなんとか二人の待つ970m地点まで登りきった。ここから先はほとんど平坦となり、南沢を滑るメリットはひとつもない。ここでしばらく息を整えながら一休みとなった。ボクにとっては3度目のピークであり、南沢は2度目の滑降となる。ここでは動画の撮影でも楽しみながら下ることにした。午前中のシュプールはすでにリセットされ、深々とした積雪は快適の一言だった。急斜面を一気に下流まで滑りおりてゆくと前方に杉林がみえてくる。杉木立の中の切り開きの先は国道286号の笹谷街道である。下山時刻はちょうど16時。長い長いパウダー三昧の一日が終わった。




笹谷IC近く


国道286号を進みます


尾根に上がりました


徐々に見晴らしが良くなりました


笹谷峠付近から強風が流れてきます


気持ちの良い尾根歩き


霧氷と冬空


仙台神室


1410m峰が前方に見えてきました


対岸にはカケスガ峰


前山とハマグリ山方面


滑降開始です(1回目)


パフパフです(1回目)


かなりのパウダーでした(1回目)


快適な激パウが続きます(1回目)


阿部さんたちと出会い追いかけることに


ようやく追い付きました


890m地点から3回目の登り返しが始まりました


稜線は地吹雪(ボクは4回目の登り返しです)


陽が西に大きく傾き始めました


ルート(実際の軌跡)

上記のルートをわかりやすくしてみました(赤は登り、青は滑降)

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