若女平
【概要】
ロープウェイ湯本駅で準備をしていると仙台の坂野さんに声をかけられる。単独のつもりだったがこの心強い同行者があらわれたことでニワカパーティの結成となった。今日は高気圧に覆われるとあって朝からまぶしい日差しが降り注いでいた。２週続きの快晴というのがちょっと信じられないほどだ。北望台からは昨日のものと思われるトレースがうっすらと残っている。大半は強風でかき消されているがこれでもないよりははるかにいいわけで、結構なラッセルを強いられるところもこの踏み跡がのおかげで順調に登ってゆく。まわりを見渡すと吾妻名物の樹氷はすでに完璧に出来あがっていた。ひと登りするとかもしか展望台でここからは大きな樹木もなくなり広々とした樹氷原地帯となる。振り返ると一人だけだがボク達の後を追ってきているのが見えた。
梵天岩に登れば眼前に西吾妻山が現れる。悪天の場合には見向きもしない山頂だが、今日はどこを見渡しても無風快晴。地図もＧＰＳも不用だった。梵天岩からはわずかな登りで吾妻連峰の最高峰、西吾妻山の山頂に着いた。標柱は雪の下だがＧＰＳが山頂を示している。山頂からは西吾妻小屋を経由して西大顛へと向かう。天候の心配がないのでこんな寄り道が楽しい。樹氷原を進むとまもなく西大顛からのグループとスライドした。みなさんは二十日平のツアーコースを楽しむようだった。
西大顛到着は１１時３０分。歩き出してからちょうど２時間。昨年と同じ所要時間だ。どこを見渡しても快晴というのに山頂は閑散としていた。東斜面にはシュプールもわずかしかなくまだそれほど荒れてはいない。早くもこの東斜面を滑り終えた人たちが数人沢底に小さく見えた。ボク達も混み合う前にまずは一本となる。積雪が多いせいか斜度がいつもよりも緩やかに見える。そのせいでもないだろうが制動が効きすぎ途中でスピードダウンしてしまいドテッ。スキーは年々下手になるばかりだが今回はまだ慣れないファットスキーのせいにしよう。気を取り直してすぐさまスピードを加えて沢底へと一気に滑り込む。あーうー、この心地よさをなんと表現しようか。あーうー。言葉がうまく出てこない。この斜面をもう一度登り返したい気分だが今度はこちらが撮影する番。カメラを構えて待ちかまえる。沢底からは坂野さんは豆粒ほどにしか見えず、無線が使えないのでストックを振るとようやく滑降を開始した。順調だ。ズームしてみようか。なんとなく画面の動きがぎこちないがまあいつものように動画撮影を終了。山スキーではお互いのこんな撮影会も楽しみのひとつだが、残念なことにボクのこの日の動画撮影は失敗に終わる。結局新しいカメラに不慣れなことが原因だった。
東斜面はスキーがなければ腰まで埋まるほどの積雪量があってシールの貼り直しもひと苦労だった。ボク達は滑降後の余韻を味わいながら西吾妻小屋へと引き返した。東斜面をトラバース気味に登ってゆくと往路のトレースに合流する。再び樹氷原を登ってゆくと西吾妻小屋だ。午後１時近いということもあってまわりに人影はなかった。
昼食後は若女平のツアーコースへと進む。雪上には一人分のトレースが続いていて、それは梵天岩付近で後ろに見えた人のものだろうと思った。積雪は西大顛も若女平もそれほど変わりはない。深々とした新雪は灌木類をすべって埋め尽くしていてどこでも滑ってゆけそうだった。下り始めると坂野さんは瞬く間に滑ってゆき、たちまち距離を開けられる。技術、体力が違うのでしょうがないのだが、ボクはここまでで結構疲れを感じていて、途中ツリーホールにはまって雪だるまになる。西大顛まではそれほど感じなかったのだがここにきて予想以上の体力消耗に気づかさされた。
若女平ではまるで春山を思わせるような暖かい日差しが燦々と降り注いでいた。振り返ると西吾妻山から西大顛の稜線が鮮やかに見えた。ダケカンバ帯をすり抜けてゆくとほどなくヤセ尾根へと続く急斜面となる。制動しながら下るこの辺りのツリーランは実に楽しい。ようやくファットスキーに慣れてきたと思ったら若女平も終盤である。小和清水のヤセ尾根は積雪はあるもののヤブが少し引っかかった。カラ松林から杉林を抜け、最後の急斜面を滑ってゆくと林道に出る。その林道を滑ってゆくとまもなく先行者に追いついた。ゴールのスカイバレー合流点は目前だった。
 西吾妻山（梵天岩） |
 西吾妻小屋 |
 西大巓東斜面 |
 西大巓から西吾妻山へ向かいます |
 影が長くなりました |
 西大巓のコル付近 |
 シュプールが刻まれる西大巓東斜面 |
 西吾妻小屋へと戻ってきました |
