山 行 記 録

【平成24年11月14日/朝日連峰 大井沢〜紫ナデ】



紫ナデ



【メンバー】単独
【山行形態】日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】紫ナデ1,349m
【地形図】(2.5万)大井沢、(20万)村上
【天候】曇り
【参考タイム】
南俣沢出合6:50〜大クビト9:00〜紫ナデ9:30-9:45〜南俣沢駐車場11:15

【概要】
 予報では終日晴れそうだというのを見て大井沢へと向かう。この時期は高い山をめざしても積雪のために山頂を踏むのも難しくなるが、障子ガ岳であればなんとか可能だろうという目論見だった。しかし、登山口に到着してみると、濃霧が辺り一帯に立ち籠めていて、まるで夕暮れのような薄暗さにまずがっかりした。ようやく雨か降り止んだばかりの湿気が充満している上に、今にも雪が舞ってきそうなほどの気温の低さだった。

 南俣沢出合の対岸からは一気に急登が始まる。しばらくするとじっとりとした汗が背中から流れるのを感じた。しかし、一向に陽の光が差し込む兆しはなく、体は少しも温まることはなかった。立ち止まると流れ出た汗が一気に体温を奪ってゆくようだった。

 他に登山者は誰もいないようだった。ブナやナラはほとんど葉を落ち尽くしていて、落ち葉はまるで絨毯を敷き詰めたかのように降り積もっている。体力が落ちているためだろう。ペースは少しもあがらなかった。

 この時期は熊の出没も気になるので熊鈴は欠かせない。ザックにぶら下げた鈴の音だけが人気のない静かな山奥に響き渡った。大クビトの鞍部を過ぎるとそれまでの静けさとは打って変わり、暴風ともいえそうな冬の嵐がうなり声をあげながら上空を舞っていた。氷点下を思わせる気温にこの強風ではたまらない。ここからは防寒着とジャケットを着て、手袋も軍手から冬用のものに取り換え、完璧な冬山装備に身支度を整えた。

 ロープのある崩れかけた急斜面を登り切ると顔も上げられないほどの強風に終始煽られるようになっていた。これで視界でもあればこんな天候でもめげないものだが気は滅入る一方だった。傾斜が緩み、小さな上り下りを繰り返すと前方に紫ナデの標柱が見えた。天候が悪いと標柱までが悲しそうに見える。寒気と強風に耐えながら小刻みに震え続ける灌木もまた寂しげだった。休憩する気分は少しもなかったが、かといってとんぼ返りする気にもなれなかった。ボクは灌木に寄りかかるようにしながら、ペットボトルの水を飲み菓子パンを一口だけ食べてみたが、モチベーションは少しも上がらなかった。雪こそ降らないものの、強風を伴った濃霧はまるで風雪にさらされているようなものだった。当初の目的だった障子ガ岳はとうにあきらめていた。ここを山頂というにはあまりに寂しすぎる気がしたが、今日はこれで一区切りをつけられそうな思いがした。



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