山 行 記 録

【平成24年10月14日/朝日連峰 祝瓶山荘〜大玉山】



西朝日岳、中岳、大朝日岳(大玉山から)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】大玉山 1,438,2m、前大玉山1,319m
【地形図】(2.5万)羽前葉山、(20万)村上
【天候】晴れ
【参考タイム】
祝瓶山荘6:30〜祝瓶山分岐7:15〜赤鼻尾根分岐8:20〜前大玉山9:30〜大玉山10:00-10:30〜 前大玉山10:50〜赤鼻尾根分岐11:40 〜祝瓶山荘13:20

【概要】
 大玉山はちょうど赤鼻尾根を境にして祝瓶山と対峙する位置関係にある。大朝日岳から祝瓶山へ連なる縦走路の途上にあってその丸みを帯びた山容は山名をそのまま彷彿とさせる。東北のマッターホルンの異名のある祝瓶山とは対照的ともいえる山である。標高は祝瓶山より20mほど高いだけだが、大玉山の方がアップダウンが多い分だけ少しきつい登りとなる。

 前日は寒気を伴った低気圧の通過によりかなりの強風が吹き荒れたが、今日は一転して高気圧に覆われるとあって早朝から穏やかな青空が広がっていた。祝瓶山荘の駐車場にはまだ朝早い時間というのに車は何台も止まっていた。つり橋を渡り桑住平を直進すればまもなくカクナラ沢とアカハナ沢の合流点となる。ここから赤鼻尾根へと取り付く。空気が澄んでいるからだろうか。ブナ林の間からは祝瓶山の堂々とした姿がやけにはっきりと見えた。最初は穏やかな登りも徐々に勾配が増し始める。800mを越えると潅木帯となり周囲の展望もだいぶ開けてきた。ほどなく稜線直下の急坂となり鎖やロープ連続するようになるとまもなく赤鼻尾根分岐点。そこから右への道はもう大朝日岳への縦走路だ。ブナの葉は結構色づき始めており、ところどころ赤く染まった灌木も目立った。

 尾根道を進み1097mの小さなピークを下りて行くと水場がある。ここにはめずらしく一人用のテントが張られていた。テントは堅く閉じられていて人の気配はない。大朝日岳へでも往復しているのだろうかと思った。水場から前大玉山までは結構急な登りが連続する。振り返れば木地山ダムが朝の光を反射して鈍く輝き、枯沢のような明るい沢が遠方まで広がっている。前大玉山の直下までくると展望台のような一角に三脚を立ててカメラを構えている人がいた。先ほどのテントの住人だった。ご来光を浴びる祝瓶山の撮影が目的で関東から来たのだと話をしてくれた。

 前大玉山からは大玉山のどっしりとした姿が目前となる。大玉山へと進むのは実に久しぶりだった。もう何年ぶりかさえ思い出せない。しかし歩いているうちに少しずつ以前のことがよみがえってくるようだった。左手には桧岩屋山から袖朝日岳へと連なる尾根があり、右手前方には平岩山から御影森山、中沢峰への稜線が続いている。振り返れば祝瓶山、そしてその背後には冠雪した飯豊連峰や吾妻連峰、磐梯山、蔵王連峰などなど、枚挙に暇がないほどの大パノラマが広がっていた。さらにこの周辺では紅葉もだいぶ進んでいてその鮮やかさにはただ呆然とするばかりである。降り注ぐ日差しも真夏のようなぎらついたものではなく小春日和を思わせる心地よさだった。秋山の魅力が凝縮された風景が目の前にふんだんにある贅沢さを思った。

 大玉山へ向かっていると大朝日岳からの縦走者と出会った。はじめは単独の男性。その少し先では女性二人がこの長い縦走路を歩いてくるところだった。みな祝瓶山を経由して針生平へと下るらしかったが、その健脚ぶりにはただただ敬服するしかない。まもなくすると勾配は一気に緩やかになり、いつしかのどかな風景が広がっていた。まわりを笹原と草原に囲まれていて、まるで里山を歩いているようなどこか昔懐かしい風景にも見えた。

 大玉山の三角点は左手の笹藪に隠れていたがすぐにわかった。近くには標柱が横倒しになっていた。少し進むと、北大玉山、平岩山、そして大朝日岳から西朝日岳への山並みがすべて見渡せるようになる。この辺りは季節風に晒されるためか、鮮やかに色づいた灌木たちが目の前のたおやかな山肌を美しく染め上げている。以前に歩いた時もほぼ同時期だったのを思い出していた。しばらくこの風景を眺めながらボクは横になって休んだ。久しぶりに味わう至福の時間だった。

 大玉山を後にすると、日の光が高くなったこともあり、紅葉はなお一層華やかさを増しはじめていた。アップダウンがあるとはいえ基本的には下りなので、この紅葉を見下ろしながらの山歩きは秋山の楽しさをあらためて思い出させてくれるようだった。前大玉山を過ぎ、水場まで戻るとテントはすでに撤収されたあとだった。カメラマンの姿はもうそこにはなく、途中で出会った縦走者も見当たらなかった。赤鼻尾根分岐には大玉山から1時間ちょっとで戻った。樹林帯のなかにポッカリと空いたこの分岐点には、秋の柔らかい日差しが降り注いでいるだけで人の気配はなかった。祝瓶山から下山してくる登山者はまだ一人もいないようだった。


つり橋


つり橋付近からの祝瓶山


赤鼻尾根から


木地山ダムの遠望


水場


尾根の紅葉


大玉山(右奥、大朝日岳)


大玉山が目前


西朝日岳、中岳、大朝日岳(大玉山から)


祝瓶山(大玉山から)


三角点


標柱が倒れている


大玉山の山頂


前大玉山(中央)と祝瓶山


ルート

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