山 行 記 録

【平成24年9月1日〜2日/朝日連峰 天狗角力取山〜障子ガ岳】



障子ガ岳(粟畑)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(天狗小屋)
【山域】朝日連峰
【地形図】(2.5万)大井沢、(20万)村上
【山名と標高】粟畑1,397m、天狗角力取山1,376m、障子ガ岳1,482m
【天候】(1日)晴れ時々曇り、(2日)曇り後晴れ
【温泉】西川町大井沢「湯ったり館」(300円)
【参考タイム】
(1日)南俣沢出合7:20〜雨量観測所10:10〜粟畑10:35〜天狗角力取山10:50〜天狗小屋11:10(泊)
(2日)天狗小屋6:10〜粟畑〜障子ガ岳7:20〜紫ナデ8:10〜出谷吹沢9:45〜南俣沢出合駐車場10:20

【概要】
 猛暑続きだった8月が終わり今日から9月に入る。南俣沢出合の駐車場には先客がいた。よくよく見れば4月の月山肘折でいっしょだった早○さん達で女性2名をつれての小屋泊まりのようだった。しばらくすると亀○さんグループと草○さんグループまでがやってきた。みんな西○山岳会なのだから世の中は狭いというしかない。そうこうしているうちに天狗の管理人石川さんも到着して今日のメンバー全員がほぼ出そろったようだった。一方ボクの計画はというと、久しぶりに狐穴まで足を延ばす予定をたてており、できれば以東岳を登りたいと考えていた。

 ボクは他の人たちからは一足先に登り始めた。何年かぶりのバカ平がなんとなく新鮮であり最初こそ順調なペースで歩いていった。大井沢地区は厚い雲の中に入っているおかげで薄曇りの上に気温は予想以上に低い。歩くには最高の条件に思えた。しかし、この涼しさにもかかわらずボクの体調はいまひとつで今日は朝から異様なほど足の重さを感じていた。いくら泊まりの装備とはいってもザックの重さは通常とそれほど違わないのに顔や頭からは異常なほどの汗が流れた。

 竜ガ岳北面のトラバースからはいったん急登から開放され、その先で水場を2ヶ所ほど通過する。水量は少なくなっていたが問題なく流れている。ここでは汗を拭きながら疲れた足をしばし休めた。水場から緩やかな山道をたどると樹林帯から抜け出して見晴らしの良いピークに着く。すぐ近くに雨量観測所があり、目の前が粟畑の地点である。登山口からここまでの標高差は約800m。今日は全身に疲労感が襲っていて少し動くのも大儀になっていた。障子ガ岳は天を突くような姿を誇示しながら聳え立つ。もう天狗小屋も間もなくだった。

 粟畑からは出谷川をはさんで正面に以東岳が望めた。少し雲は多いものの久しぶりに見る勇壮な以東岳だった。ここからみると狐穴小屋は遙か彼方にしかみえない。天狗角力取山からはまだ5時間のコースタイムが必要だったが今日の体調ではとても無理な気がした。今日は天狗小屋に泊まろうと思った。

 緩やかな山道を下るとまもなく天狗角力取山だった。周りにはマツムシソウやオヤマリンドウなどが咲き、葉の色はすでに色づき始めていた。空には先日までの力強い積乱雲はなく、柔らかいちぎれ雲が目立つ。そんな様子を眺めていると気持ちの良い涼風が頬を撫でていった。いつのまにか秋の気配が漂いはじめた静かな山頂だった。

 天狗小屋にはまだ人の気配もなくひっそりとしていた。私はザックをおろして長袖シャツを着た。ここでは涼しさを通り越して寒いくらいだった。下界は猛暑日だったが朝日連峰では間違いなく秋の空気に入れ替わっていた。ボクは小屋前の椅子の上に横になりしばらく眠った。かなり疲れていて昼食を食べる気力もなかった。

 人の気配で目をさましたらちょうど登山者がひとり小屋についたところだった。この人はボクと同様に狐穴に行く予定で小屋に立ち寄ったらしかったが、体調がいまひとつだといい、結局この単独行氏も天狗小屋泊まりに変更したようだった。それからしばらくすると小屋の管理人や登山口で出会った人たちが次々と粟畑から下りてきて山小屋は騒然となる。そして一段落すると、管理人や山岳会のメンバー達が外のテーブルで囲んで長い宴会が始まった。ボクは小屋の2階で遅い昼食をとってから外での宴会に加わったのだが、缶ビール1本で簡単に酔いがまわってしまった。その後は亀○さんたちがつくってくれた芋煮をごちそうになりながら夕暮れまでの楽しい時間を過ごしたのだが、あいにく酔いが深まるにつれて記憶もだんだんと曖昧になってゆくばかりだった。その後も天狗小屋にやってくる登山者は後を絶たなかった。結局この日の宿泊者は足の踏み場もないほどまでに埋まったのだった。

 翌日は4時半過ぎに起床した。外に出てみると強風を伴った濃霧が小屋の周りを舞っていて視界はなかった。カップラーメンで朝食を済ませてから山岳会のメンバーに別れを告げて6時過ぎには小屋を出た。視界の悪さはあいかわらずだった。潅木は風にあおられながら不規則に揺れ続けている。粟畑のピークを過ぎると、沢底から吹き上げる霧を伴った強風に思わず吹き飛ばされそうになる。稜線は濃霧で全く見えなかった。それでも障子池付近は窪地のためか風も幾分和らぐ。ここは険しい山道にぼっかりと空いた不思議な空間のようなところ。一服の清涼剤のような草原歩きにしばし天候の悪さを忘れることができた。障子池からはひと登りで障子ガ岳に着いたが、天候が回復することはなく展望もなかった。

 山頂から下り始めても濃いガスは一向に収まる気配はなかった。障子を立てかけたような大きな東斜面の大スラブを久しぶりに眺めたかったが今日はあきらめるしかないようだ。鞍部から再び登り返すと紫ナデのピークに着いた。この紫ナデから北へは登山道はないもののヤブの向こう側には大桧原山や赤見堂山へとゆるやかな稜線が続いている。そして月山第1トンネル、湯殿山を経て月山への長大な尾根があるのだが今日は何も見えなかった。

 ようやく視界が戻ったのは大クビトを過ぎたあたりからだった。ちょうど1200mぐらいの高さを境に雲が上空を覆っていて、大井沢の集落は晴れているようだった。この付近から日帰りの登山者が1人、2人と障子ガ岳をめざして登ってゆく。大クビトからは一気に急坂の下りとなりしばらく風景を眺める余裕もなくなった。標高が800メートルを切ると深い木立の中となる。樹林の中を清々しい風が吹き抜けた。木漏れ日がキラキラと煌めくブナ林を下ってゆくとようやく出谷吹沢の沢底に降り立った。小屋を出てからここまで3時間35分。出谷吹沢では頭から水をかぶって汗を流した。そこから平坦な山道をたどると林道に飛び出し、約30分の林道歩きで南俣沢出合の駐車場に戻った。




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