山 行 記 録

【平成24年7月29日〜30日/大日杉〜地蔵岳〜切合小屋〜飯豊山】



切合小屋



【メンバー】2名(S氏、蒲生)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】地蔵岳1539m、飯豊山2105m
【地形図 2.5万】岩倉、飯豊山、大日岳
【天候】(29日)晴れ、(30日)晴れのち雨
【温泉】西置賜郡飯豊町「白川荘」400円
【参考タイム】
(29日)大日杉6:00〜ザンゲ坂6:20〜長ノ助清水6:40〜滝切合8:40〜地蔵岳9:00〜目洗清水10:20〜御坪11:00〜切合小屋13:30(泊)
(30日)
切合小屋3:50〜草履塚4:20〜御秘所4:50〜本山小屋6:00〜飯豊山6:20-6:30〜草履塚8:00〜切合小屋8:30-9:00〜御沢分岐10:00〜地蔵岳12:00〜長ノ助清水14:20〜大日杉15:30

【概要】
 今回は飯豊が初めてという人の案内を兼ねての山行である。案内などするようなガラではないが個人的に頼まれ続けていて2年前からの懸案となっていた。計画では一応本山小屋をめざす予定だが状況次第では切合泊まりも視野に入れている。その点でこの大日杉は初心者でも比較的登りやすいコースである。大日杉の駐車場は夏山の最盛期とあって超がつくほどの混み具合をみせていた。

 東北地方もようやく梅雨が明けてこのところ連日猛暑続きだが、今日はめずらしく朝から曇り空ということもあって登りやすい1日といえそうだった。それでもザンゲ坂を登り切る頃には汗が流れて、長ノ助清水に着く頃にはやれやれとなる。連れ合いはこの段階ですでにバテバテとなっていた。この先の行程に不安がよぎったが本人はなんとか登れそうだというので予定通り地蔵岳へ向かった。そこからはかなりゆったりとしたペースで緩やかな山道を登ってゆく。右手に飯豊の山並みが見えてくるとダマシ地蔵でまもなく地蔵岳についた。飯豊本山が正面だったが雲が多くすっきりとした展望はなかった。

 地蔵岳からはしばらくアップダウンの多い縦走路が続く。時々涼風が流れるので今日はだいぶ歩きやすかったが、雲間から強い日差しが降り注ぐと一気に体力が奪われそうだった。その暑さにまいっているのか、ときどき下ってくる登山者の表情には疲労感が漂う。御坪からは御沢コースもあるが今日は安全最優先とし夏道の種蒔山経由でゆくことにした。

 種蒔山直下の水場までくれば切合小屋はもうまもなくだ。ここでは雪解け水が豊富に流れていて冷たい水が飲み放題だった。周りには可憐なユキワリコザクラやチングルマが豊富に咲いていて疲れた気持ちも癒されるようだった。切合小屋が目前となるといつもの雪渓のトラバース区間がある。ここはアイゼンも必要な傾斜だが高巻きをして危険箇所を回避した。

 切合小屋到着は13時30分。いつもの倍ぐらいの時間を要していたが、まだまだ本山小屋にゆける時間帯でもある。しかしS氏の体力はすでに限界らしく今日の行程をここで打ち切ることにした。小屋前では川入から登ってくる人や飯豊本山から下山してくる人など大勢の人が行き交っている。

 切合小屋で宿泊の手続きを済ませたボク達は小屋の軒先で祝杯をあげて、夕食までまったりとした時間を過ごした。昨夜は週末に加えて大きな団体が入ったとかで小屋は超満員だったらしいのだが、今日の宿泊はおよそ20人程度。この山小屋の宿泊料はただでさえ割高なのでゆったりと眠ることができるのはなによりだった。深夜、外に出てみると降るような星空が空一面に広がっていて、翌日の好天を約束しているかのようであった。

 翌日は3時半に起床。4時前には切合小屋をでた。外はまだ真っ暗だったが東の空にはほんのりとだが明るさが差し始めていた。草履塚まで登ると少し視界がはっきりしてくるようになった。左手には大日岳が姿を現したが、飯豊山はまだ雲に隠れていてよくわからない。ご来光は御秘所付近から始まった。日の光が増すに連れて次第に周囲の色彩も明瞭となってゆく。御秘所の岩場を慎重に通過すると御前坂だ。この辺りまでくると早くも本山から下ってくる人たちも目立つようになっていた。

 御前坂から山頂までは見上げるほどの高さだが実際の高度差は思ったほどではない。ジグザグに登ってゆくと30分ほどで本山小屋だ。入り口付近ではでは小屋の管理人や宿泊者が談笑しながら朝の時間を楽しんでいるようだった。心配していたS氏の体調は結構好調らしく、小休止後はさっそく三角点を踏んでくることにした。この区間はニッコウキスゲの群落となっていて見事な景観をつくっている。またここには飯豊連峰の特産種であるイイデリンドウが咲いているのだが残念ながらまだ蕾でしかなかった。

 ようやくたどりついた飯豊山山頂。しかしガスが辺り一帯を覆っていて視界はほとんどなかった。先ほどまでは大日岳もよく見えていたのだがここにきてまた新たな雲が湧き出していた。久しぶりにダイグラ尾根や梶川尾根を眺めたかったのだがあきらめるしかなかった。

 本山小屋に戻り神社で安全祈願を済ませてから切合小屋へと向かう。太陽が上がり始めていたがまだまだ涼しくて快適な時間帯が続く。疲れもほとんどないのでこんな気温ならばどこまでも歩いてゆけそうな気がした。遅れがちなS氏をところどころで待つ間、その時間を利用して様々な高山植物をカメラに納めながらのんびりと下った。

 切合小屋には4時間30分で戻った。S氏は昨日歩き続けてきて体がだいぶ慣れてきたのだろう。初心者のコースタイムとしては結構いい感じだろうと思った。ボクは朝食用にS氏の分のラーメンも煮ながら外でザックのパッキングを済ませた。

 小屋を後にすると昨日のルートを戻るだけとなる。しかし地蔵岳まではアップダウンが続くので下りというよりも登りに近い感覚がある。さらに日差しが強くなってきただけに体力が奪われる怖れもある。そのため種蒔山直下の水場では多すぎるくらいに水を確保した。

 御坪を過ぎた辺りからだろうか。いつのまにか薄黒い雲が空全体に広がり始めていた。近くで雷鳴も頻繁に聞こえている。途中で出会った登山者に聞いてみると飯豊町では雷注意報が発令中で、午後からは雨の降り出す予報がでているのだという。よくみると地蔵岳はすでに雨雲に隠れて見えなくなっていた。

 切合小屋から地蔵岳までは3時間ほどかかって到着した。ここにきてS氏はかなり疲労の度合いが増しているように見えた。本山を往復してからこの地蔵岳への登りはやはりきつかったか。しかし時間はまだまだ余裕があるので途中で休憩時間を多めにとりながらのんびり行こうと励ました。ところが地蔵岳から下り始めるとS氏の歩みが極端に遅くなっていた。

 昨日から懸念していたことだったがS氏はいわゆる「膝が笑う」状態になっていたようである。本人はこの症状が初めてなのかかなり戸惑っている。何でもない坂道だったが途中から後ろ向きに下り始めていた。そんな折、ポツリポツリと小雨がばらつき始めてきて、それはたちまちのうちに音を立てて本降りとなってしまった。まだ午後1時だというのに夕暮れのような薄暗さに包まれていた。

 この時期は熱中症の方がより心配なので、考えようによっては雨のほうがよほどありがたいのだが、足が痛み始めたS氏にとっては滑りやすくなったこともあり、こんな何でもない尾根でも要注意となる。ボクは途中でストックを貸し松葉杖代わりにしてもらうことにした。それでも雨に濡れた登山道に足を取られてしまいS氏は何回か転倒した。S氏は一歩下りることさえもつらい状態だった。

 ボクはS氏につきっきりで下ることにした。このコースで唯一の危険箇所はザンゲ坂だった。ボクはS氏のザックを預かり空身で下りてもらうことにした。ここもかなりの時間をかけて下った。無事故と安全が最優先だった。地蔵岳山頂から大日杉までの所要時間は3時間30分。今日の行動時間は12時間になろうとしていたが、幸いに怪我をすることなく無事に登山口へと降り立ったことでようやく肩の荷が下りた気がした。雨は小止みになるどころか置賜地方では大雨洪水警報が発令されていた。大日杉では相変わらず視界がさえきられるほど雨が降り続いていた。


種蒔山直下


切合から種蒔山と飯豊山


切合小屋から


ご来光(御秘所)


ご来光とハクサンシャジン(御秘所)


飯豊本山(御秘所)


御前坂から大日岳


草履塚(御前坂から)


御西(御前坂から)


本山小屋


ニッコウキスゲの群落(飯豊山)


タカネマツムシソウ


ミヤマカラマツ


チングルマ


ハクサンイチゲ


ハクサンフウロ


ウメバチソウ


ユキワリコザクラ


サンカヨウ


ハクサンイチゲ



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