【概要】
山形県内はどこも雨模様のため、いくぶん天候の良さそうな七ガ宿町へと向かった。県外といっても硯石登山口は蔵王や朝日、飯豊よりも近い。不忘山は山スキーの1月以来だが、もちろん雪はなくキャンプ場は深緑の季節を迎えていた。天候は晴天を期待したのだがそうそううまくはゆかないようだ。樹木が大きくしなるほどの強風が吹き荒れていて上空ではうなり声のような轟音が止まない。それに中腹から上は濃霧に覆われていて、山頂付近は全く見えなかった。
硯石登山口から山頂までの標高差は約1000m。3時間ぐらいの行程なので久しぶりの足慣らしという感覚。こんな天候でも登山者はいるもので、ほぼ同時に山形ナンバーが1台やってきた。そして一足早く二人連れが山道へと入っていった。緩やかな山道は次第に勾配が増してゆく。灌木帯を抜け出すとガレ場となり、いつもならば見晴らしがきくようになる場所だが、今回はまったく逆でこの辺りから雲の中へと入ってゆく。
先行者の二人は最初のガレ場で休んでいた。この二人とはしばらく相前後して登ってゆくことになった。登るにつれて風はますます激しさを増した。ときおり歩けないほどの強風が波のように押し寄せ、おかげで何度も立ち止まらなければならなかった。半袖一枚ではとても寒く途中で長袖シャツと雨具をきた。手袋も軍手一枚ではあまりに冷たく冬用のものに変えた。ガレ場が連続するようになると不忘山も目前だ。不忘の碑まで登れば山頂まではひと登りとなる。
不忘山の山頂にはちょうど2時間で着いた。もちろん強風と濃霧の悪天候では誰も登っている人はいなかった。とても休憩するような雰囲気ではなかったが、風の弱い場所に腰をおろしコンビニのおにぎりを食べながら一休みだ。休んでいると時折上空が明るくなったりする。しかし太陽が顔を出すことはなく、まわりは真っ白のホワイトアウトのままであった。
休憩を終えると高山植物を撮影しながら下った。この時期はハクサンイチゲ、イワカガミ、ミツバオウレン、ユキワリコザクラなどが結構咲いている。しかしあまりに風が強いためほとんどの写真がピンぼけになってしまった。ガレ場から樹林帯へと入ると次第に青空が広がりだした。晴れてきたというよりも雲から抜け出したようだった。山頂付近はあいかわらずだが、その後は晴れる一方となり、ナラやブナ林にはまぶしい木漏れ日が降り注いだ。午前中よりも日差しがでてきたために、レンゲツツジの鮮やかさがより増してきて単調な下りだったが結構楽しくなっている。そんなことを考えていると南蔵王キャンプ場はもうまもなくに迫っていた。