【概要】
祝瓶山荘への林道が2、3日前に開通となった。しかし山の残雪はまだまだ多くアイゼンやピッケルは必携のようだ。林道にも部分的に残雪が残っていて4駆でなければスタックしそうな状況だった。
駐車場には車が2台。みな釣り人のもので登山者は誰もいないようだった。野川本流に架かる吊り橋にはまだ橋板が設置されていないのでワイヤーにつかまりながら対岸へと渡った。桑住平を抜け出るとヌルミ沢一帯は多くの雪渓に覆われていてこれまで見たこともないような広い雪原になっていた。樹木はすべて雪に埋まりまっ平らなのだ。夏道ならば少しアップダウンを経て急坂に取り付くのだがこれでは全く登山道がわからない。20分近くうろうろする羽目になり一時は赤鼻尾根へと戻ろうかと思ったほどだった。しょうがないので雪渓を丁寧にたどりながらなんとか登山道を探しだした
夏道にあがるとすぐに急坂となり汗が流れた。やせ尾根に出るとムラサキヤシオやタムシバが目立つようになる。吹き渡る風が実に爽やかだ。まもなくすると登山道の両側に残雪が現れる。最後の岩場ではまだ分厚い雪渓が残っていた。アイゼンも必要な局面だったがとりあえずピッケルで確保しながら登った。ここは滑落したらどこまで転がり落ちてゆくかわからない危険箇所だった。
登り着いた山頂からは大展望が広がっていた。大朝日岳は残雪がかなり少なかったものの飯豊連峰はまだ白銀の世界のようだった。今日の所要時間は3時間。小国側から登ってきたという男性二人が三角点に座って休憩している。聞けば今日は小国側からの朝日連峰の山開きとのこと。これからこの祝瓶山に大勢登ってくるらしかった。しかしまだ登山者の姿はなくウグイスののどかな鳴き声だけが風にながれていた。
30分ほどの休憩を終えて赤鼻尾根へと向かう。祝瓶山の西側斜面にはまだまだ多くの残雪が残っていて、その残雪の白さとムラサキヤシオツツジの鮮やかさが特に際だっていて思わず立ち止まる。朝日連峰の稜線には早くも初夏の風情が漂っているようだった。
縦走路で聞こえるのは鳥の鳴き声と風のながれる音だけだった。今日は途中で出会う人もいない。樹林帯に入ってしばらくすると最低鞍部となり、そこからひと登りすると赤鼻のピークだった。ここまでくれば下界まではひとくだりだ。急いで下る必要もないのでしばらくここで小休止をとる。ピークの東斜面にはまだまだ残雪が多くその雪は前大玉山まで続いているようだった。
赤鼻尾根からは鎖場やロープのある急坂が続く。特に危険な感じはないのだが疲れていることもあってこれらにつかまりながら慎重に下った。左手のアカハナ沢は多くの雪渓に埋まり普段は聞こえる沢音もほとんど聞こえてこない。平坦なブナ林からアカハナ沢とヌルミ沢の合流点に降り立つとそこも多くの残雪が沢を埋め尽くしていた。普段は見られない光景だけに新鮮だ。合流点からもしばらく雪上を歩きまもなくすると桑住平との分岐点に着く。そこからは約50分ほどで祝瓶山荘へと戻った。