山 行 記 録

【平成24年5月27日/大日杉〜地蔵岳〜御秘所沢〜飯豊本山〜御秘所沢〜地蔵岳】



飯豊本山から御秘所沢への滑降



【メンバー】5名(柴田、上野、大場、大江、蒲生)
【山行形態】山スキー、春山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】 地蔵岳 1538.9m、飯豊山2102m
【地形図 1/25000】岩倉、飯豊山、大日岳
【天候】晴れ(快晴)
【温泉】飯豊町須郷「白川荘」400円
【参考タイム】
大日杉小屋4:50〜ザンゲ坂5:20〜長ノ助清水6:10〜地蔵岳7:50-8:20〜1508mピーク下降点9:00〜御秘所沢9:20〜御前坂11:40〜飯豊本山12:40-13:10〜御秘所沢〜1508m地点14:10〜地蔵岳15:40〜大日杉小屋17:30
  
【概要】
 飯豊連峰のおむろノ沢はすでに先週末が限界との情報もあって今回ははじめての御秘所沢だ。この御秘所沢を詰めれば飯豊本山へと登り着く。雪解けがかなり進んでいることと、行程の長さが少し気になるが登ってみないことにはわからない。うまくゆけばおむろの沢と同様に飯豊本山からの豪快な山スキーが楽しめるだろうという目論見である。初めてのコースとはいつもわくわくするような期待感に溢れる。

 早立ちするために前日から大日杉に集まった。午後4時半頃から3名での前祝いが始まり、宴会は日没後の7時半ころまで続いた。そして車内にもどったところで柴田さんが到着したため、こんどは柴田号の中で10時まで宴会が引き継がれた。その後大場さんが到着してこの時点で5名となり今回の全メンバーがそろった。

 翌日は早朝から快晴の空が広がっていた。大日杉では朝から冷え込みが厳しかったが、まもなく直射日光が降り注ぐと全身から汗がほとばしった。空を見上げても一片の雲さえ見当たらない。気温はすごい勢いで上昇しているようだった。尾根は完全な夏道であり、登山道ではイワウチワが盛りを見せている。周囲にはタムシバやムラサキヤシオも咲いていて、背景に聳える五段山や牛ケ岩山が美しい。まもなくすると長ノ助清水付近から登山道にも積雪が現れるがシールはまだまだ無理。斜面の両側には雪はあるのだが尾根に残雪はなかった。シールが可能になったのはダマシ地蔵からだった。

 地蔵岳からはどのルートで行くか検討した。大又沢はやはり危険だろうとこの段階でおむろの沢案はボツ。今回は予定通り夏道をたどり適当な地点から御秘所沢へと降りることにした。1週間早ければ地蔵岳から種蒔山までは快適な残雪歩きが可能と思われたが、この時期ではさすがに遅いのかたどってゆく先々で残雪が切れていた。半分は夏道をたどりながら1508mへと登り着いた。1508mピークからは残雪が多く御秘所沢へは問題なさそうだった。沢の右岸と左岸に別れて降りてゆきお互いに無線で確認しながら沢底へとすべり降りた。この辺りは不安感もあるが初めてのルートだけに楽しさのほうが勝った。稜線から沢底までの高度差はおよそ220m。地蔵岳から大俣沢への400mに比べれば約半分だが、これは復路の登り返しが楽勝だということでもある。御秘所沢の沢底は予想外に広いものだった。おむろの沢は両側から急斜面が迫り、この時期ではデブリの嵐だろうがここはそれほどでもなかった。
 
 それでも気を緩めるわけには行かず両側に注意を払いながら御秘所沢を遡ってゆく。まもなくすると大きく口があいたクラックが現れる。幸い両側から迂回が可能だったが、ここはもう一週間もすれば通過不可能だろうと思われた。このクラックを通過すると沢はますます広くなり、危険な要素はすっかりなくなってしまった。左手に切合小屋へとつながる尾根がありその間は御沢のようだった。ここはおむろの沢とは違い、大回りで本山小屋へと向かうために、斜度がなだらかで非常に登りやすいものだった。それでも頭上から降り注ぐ日差しは強く、暑さにバテそうだった。水筒の水をすでに使い果たしているメンバーもいた。

 前方に御前坂の白い斜面が見えてくると飯豊本山も射程内となる。左手の高見に見える岩場は御秘所で、手前のピークは草履塚だ。みんな夏道ではお馴染みなのだが、御秘所沢の沢底から眺める光景は実に新鮮で飽きることがなかった。

 御前坂からは二手に分かれてのアタックとなった。夏道に沿ってゆくものとこちらはあくまで直登コース。45度以上の急斜面を坪足でクリアし、すこし斜度が落ちたところから再びシールだ。ところが疲れもピークを過ぎていてこの区間が一番つらいものとなった。両足はすぐにも攣りそうなほどで両手の二の腕も痙攣を始めていた。昨日の葉山の疲れもあるのだろうがさすがに今日は体力の限界だった。

 本山到着は12時40分。約8時間を要してようやく登り着いた。小屋は少し先に見えているが登り着いたところはおむろの沢がちょうど目前だった。山頂から眺める光景はまさに圧巻であり感無量だった。地蔵岳はおむろの沢の対岸に聳えているが、登ってきた御秘所沢はまったく別の方角に延びていてコースの長大さを今更ながら思った。今回のルートは下りも時間がかかるので、滑り出しのタイムリミットを午後1時としていた。そのためのんびりと休んでいるわけにも行かなかった。

 山頂で記念写真を撮ればさあ下ろう。沢底は少し荒れてはいるものの、山頂直下の大斜面は願ってもいないほどの快適なザラメバーンが広がっている。動画撮影にカメラマンが一足先に降りて行き、準備が整うと次々と滑降を開始した。ここでの快適さは登りの疲れがすべて吹き飛ぶようでみんなが酔いしれた。豪快な滑降が終わればあとは広々とした御秘所沢を滑ってゆくだけだった。この区間は本当に長く、滑っても滑っても先がみえなかった。雪質は上質ではなかったがこの時期では当たり前で、ボク達は何回か途中で立ち止まりながら登り返しの地点をめざした。

 暑かった日差しも太陽が西に傾くにつれて弱くなって行くようだった。それでもこの時期は日没までまだまだあり、日の長さがありがたい。御秘所沢の末端まできたところからは再びシールを貼って登り返しだ。疲れ果ててもいたがここを登り切ればあとは夏道に沿って下るだけなのだ。秘境ともいえるような御秘所沢から離れるのは一抹の寂しさが漂っていたが、一方では暗くなる前に無事たどりつけそうだといった安心感が胸の内におおきく広がっていた。

 登り着いた稜線から振り返ると飯豊山が大きくそびえていた。すぐ正面がおむろの沢だった。今日はスノーボーダー達が何人かおむろの沢へと向かったように見えたのだが、斜面にはシュプールは見あたらなかった。切合小屋へうねうねと続く稜線にはまだ豊富な残雪が残っていて、芽吹いたばかりのブナ林との色合いがなんともいえないほどの美しさを際だたせている。この稜線をたどりながら夏道を歩くのも悪くはないなあと思った。

 1508mピークからはしばらくシールで歩き、地蔵岳直下まで登ってゆく。地蔵岳の山頂は踏まずにあとはダマシ地蔵へとトラバースだ。ほどよい地点からシールをはがせば再び滑降が可能となる。ダマシ地蔵までだからたいした距離はないがこれが最後の楽しみとなった。あとは夏道に沿って大日杉へと一気に下った。


駐車場を出発です


大日杉小屋


ザンゲ坂への取り付きです


すっかり夏道です


ムラサキヤシオと三国岳の稜線


地蔵岳が正面に迫ってきました


地蔵岳から飯豊山を仰ぎます


語らいの丘から飯豊山


1508mピークから


いよいよ御秘所沢へと下ります


残雪と新緑がきれいです


御秘所沢の沢底を登り始めます


クラックが現れました


暑い日差しを浴びながら登ります


徐々に御前坂が近づきます


飯豊山がいよいよです


ダケカンバと雲


だいぶ疲れてきました


急坂から御前坂へ(前方は御秘所の岩峰)


急坂がきつい!


飯豊本山の一角でようやく昼食です


眺めは最高です!(遠方の稜線は五段山、牛ガ岩山)


いい風景がごちそうです


いよいよ滑降がはじまりす


地蔵岳を背にして


飯豊本山から御秘所沢への滑降です


飯豊本山から御秘所沢への滑降です


登り返しの沢底で


1508mへの登り返し


稜線から飯豊山を振り返ります(正面がおむろの沢)


ようやく稜線へと登り着きました


地蔵岳へと向かいます


ダマシ地蔵


 お疲れさまでした


ルート

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