【概要】
今日は高気圧にすっぼりと入り山形でもめずらしく快晴の予報である。県内が週末好天に恵まれるのは今シーズン初めてではないかとさえ思われた。今回は昨年と同じメンバーでの若女平。リフトを利用して楽々スキーツアーである。今日のロープウェイ湯本駅ではいつになくザックを背負った山スキーの人達が多いようにも見える。山形の武○さんたちも大平下りらしく湯本駅で出会った。北望台からは飯豊連峰、朝日連峰、月山、蔵王連峰と見えないものはないほどの展望が広がっていた。月山の右手には鳥海山も見える。中大巓へのトレースもあるので今日はラッセルの必要もなかった。
上空からは燦々と春の日差しが降り注いだ。風もほとんどない山日和である。順調に梵天岩へと登りきるとそのまままっすぐに西吾妻山へと向かった。月山ほどではないが積雪はかなりあっていつもの凸凹とした雪面もほとんどない。どこでも登ってゆけそうで何となく夢をみているような気分だ。西吾妻山へは1時間10分で着いた。正面には西大顛と檜原湖や秋元湖、小野川湖を従えた磐梯山がどっしりと聳えている。夏には展望も何も楽しみもない西吾妻山だが今日は遮るものが全くなかった。眼下には西吾妻小屋が見えたがこのまま若女平を下るには早すぎるので、西大顛の東斜面を滑ろうかと意見がまとまった。あまりに天候がいいのでみんな欲張りになっているようだ。西大顛までは天候に恵まれないとなかなか足を延ばせないものだが今日は心配するものがひとつもなかった。
西大顛からも次々と西吾妻小屋をめざして登ってくる。二十日平コースを下る人やスノーシューで西吾妻山までを往復する人たちだった。西吾妻小屋を通過していったん鞍部までくだれば西大顛まではわずかな登りしかない。西大顛ではグランデコスキー場から登ってきた多くの登山者や山スキーたちで大賑わいだった。その光景には冬山というイメージはなく、田舎から大都会にでもでてきたような錯覚に襲われた。歩き始めてから西大顛まで全く休憩をとっていなかったことから、同行のメンバーからは盛んに揶揄されてしまいしばしの小休止となった。
西大顛の東斜面はもう何人か滑り降りたらしくシュプールで少し荒れ始めていた。しかし東斜面は結構広くて手つかずの斜面はまだまだ豊富に残っている。ボクは一目散に東斜面へと飛び込んで行き斜面の末端付近までシュプールを刻んだ。もう厳冬期のディープパウダーにはほど遠かったが雪質は予想以上に柔らかい。思いのほか快適な滑りを楽しむことができてボクは大満足だった。この1本を滑るためにこの西大顛まで足を延ばしたのである。それからはメンバーの滑降シーンを写真に撮ったりしながらこの雄大な光景を楽しんだ。沢底からはトラバース気味に西吾妻小屋へと向かった。もう一度登り返したかったが若女平の楽しみも残っているので少し体力に余力も残しておかなければならない。というよりも腹が減ってしまい早く昼食にありつきたかったのだ。
昼食は西吾妻小屋の東側でとった。風もない青空の下での休憩は春山ハイキングのような心地良さだった。西吾妻小屋を出ればすぐに若女平コースが始まる。いつものツアー標識が多くの積雪のため頭しかでていないのに驚く。その積雪の多さは下るほどに際だってくるようになった。なにしろ障害物がほとんどないのである。それに信じられないほどの軽いパウダーのためどこを下るのも自由自在といった感じなのだ。若女平の快適さは十分すぎるほどわかっているつもりだったが今回ほどのコンディションはそうそうないだろうと思われた。それもこれも昨夜降った20〜30センチの新雪と、例年にないほどの積雪の多さと、さらには極上のパウダーという雪質のおかげである。メンバーはそれぞれ勝手気ままに下って行くのでまたたくまに若女平が近づいていた。お互いに無線がなかったら合流するのも難しかっただろうと思われるほどみんなそれぞれに滑降を楽しんでいた。
平坦な若女平に降り立つとそこも先行者のトレースがあるのでただスキーに乗っていればよかった。このままではまたたくまに降りきってしまいそうなので若女平の末端近くで小休止をとることにした。振り返ると中大顛から西吾妻山、西大顛へとつらなる稜線が実に美しくしばらく見とれてしまった。小屋を出てから若女平まではたったの45分しかたっていない。それも途中で待ったりしているので滑っている時間はもっともっと短いはずである。若女平から急斜面へと続くルートも多くの積雪があるので面白いようにスキーが走った。
強清水のヤセ尾根は巨大な雪庇となっていた。その通過にはメンバーのちょっとヒヤッとする場面もあったが事なきを経て無事に通過した。カラマツ林や杉林の区間も豊富な積雪とほどよい雪質を楽しみながら上へ下へと自在に滑ってゆく。しかし最後の急斜面だけは滑りを楽しむというわけにはゆかない。すでに多くの人たちが滑ったせいで斜面は氷化していて横滑りで高度をさげるしかなかった。適当なところから右手の斜面へと下りて行き杉林へと入ってゆくと再び雪面は柔らかくなりターンも可能となる。そんなこんなを繰り返していると杉の植林地を抜け出した。あとは沢沿いに滑って行けばゴールは目前だった。