【概要】
竹ノ沢は七ヶ宿スキー場から昨年の11月に登っている。しかしスキー場からでは全然面白くはないのでスキー場のひとつ南側の尾根から登ることにした。山スキーとしての記録もないところだが、これならば夏道のない峠田岳南峰を踏める上に、あわよくば峠田岳本峰もと視野に入れての行程だった。もちろんこんなコースを登る人はいないのか除雪終点の駐車地点には車は1台もなくまたトレースも見当たらなかった。はじめは雪が降り続いていたのだが広い雪原を歩いているうちに晴れ間が少しずつ広がり始めた。この雪原は思った以上に斜度があるので下りも楽しめそうだった。尾根には周りの状況をみながら適当なところから取り付いた。樹林は結構混んでいるものの雪が豊富なので下りも何とかなりそうである。まもなく急斜面となると直登は全くできなくなり大きくジグを切っていった。積雪は結構ありラッセルの連続である。しかし30〜40センチ下に堅いバーンがあって急斜面では雪崩の危険性もありそうだった。なるべく樹林帯をはずさないように登った。
峠田岳南峰には1時間30分かかって登り着いた。潅木もないので見晴らしは結構良い。そこから竹ノ沢まではなだらかな尾根状の雪原となった。この頃になると青空が広がり陽光に霧氷がきらめいた。前方にアンテナが見えてくると竹ノ沢の山頂まではまもなくだった。3カ月ぶりに訪れた山頂では大きな案内板も半分以上雪に埋まっていた。時折七ケ宿スキー場からのアナウンスや音楽などが流れてきた。さすがに山頂だけあって風が強く機械室のような小屋の影で一休みをした。そこからは峠田岳本峰が見えたがその手前にも顕著なピークが待ちかまえているようだった。左手奥の白い峰は不忘山のようだった。
竹ノ沢からはいったん大きく下って前衛のピークへと向かう。ここはよほど風が強いのだろう。南側には大きく雪庇が張り出しているため木立の近くを慎重に進んだ。そして前衛のピークに登り着くと峠田岳本峰が目前となった。しかしそこからはさらに雪庇が尾根から大きく迫り出していた。きれいな尾根の下は空中なのである。いくらなんでもこの状況はやばそうだった。少々の危険は冒してもいいのだが、一方で滑る楽しみも皆無となればいくら目前とはいっても峠田岳本峰に未練はなかった。折り返し地点から竹ノ沢まではシールのままで戻った。
竹ノ沢から南峰までの尾根はパウダーだけに快適な滑降だった。南峰からはしばらく樹林帯の急斜面になったがここは大きくターンを繰り返しながら高度を下げてゆく。自由自在にスキーを走らせていると尾根の滑降はまたたくまに終わる。そこからは広々とした雪原を滑る楽しみが待っている。スキー場の喧噪をよそに誰とも出会わない静かな山スキーの半日が終わった。