姥ケ岳東斜面
【概要】
早くも山スキーのシーズンインとなった。ここ数日の寒波により月山にはだいぶ雪が降り積もっているはずだった。曇りとはいえ午後には晴れる予報も出ていて天候の心配はなさそうである。しかし頭がスキーモードにまだ切り替わっていないこともあって準備が思うように進まず、自宅を出るのが予定より２時間も遅くなってしまった。まあ出かけるまではドタバタだったわけだ。
志津温泉界隈はかなりの積雪だった。いつもの駐車場にはスペースがないほど多くの車がとまっていたのだが、大部分が治山工事のための車両のようだった。駐車場にはボクと同じ地元だという人がちょうどいて、その人は準備を終えると早めに出発してゆき、その後をツボ足の人が同じように姥沢をめざしていった。今年は雪が多いのか駐車地点からでもシール歩行が可能だった。しかしその動作ひとつひとつがまどろっこしくて我ながら情けなくなるほどチグハグの連続だった。
ネイチャーセンター近くでは西川山岳会の佐○さんと天狗の主の山○さんとばったり出会った。二人は偵察を兼ねてのハイキングのようであったがツボ足のため途中で引き返してきたようである。あまりの雪の多さにパンチをくらったような感じなのだろうか。なんでもネイチャーセンター付近の積雪は６０センチぐらいだというから結構降ったものである。
ばっちりと残っているトレースに感謝しながらしばらく一人旅を続ける。トレースは林道の途中から電柱コースへと続いていた。電柱コースは急坂だが林道よりもはるかに時間の節約になる。しかし久しぶりのスキーがまるで足枷をはめられているかのように重く、さらにザックもことのほかずっしりとしていて、何回も呼吸を整えなければならなかった。ボクは途中でやめようかと何回も思ったほどで早くも疲労に参りそうだった。
見上げると快晴の空が広がっていた。全身から汗が流れ落ち手袋はもちろん不要。山シャツも脱いで下着一枚となったのだがそれでも暑いのである。姥沢付近で先人の同郷氏と合流したがボクはシャリバテ気味のためリフト下駅でひとり昼食をとることにした。カップラーメンと熱いコーヒー、それに菓子パンを食べると少し元気が出た。
リフト下もまた暑くて汗が流れた。積雪はまだまだ少ないとはいえ、ヤブはほとんど埋まり滑降するには全然問題がないようだった。ようやくリフト上駅に着くと一段落だ。ここからは一休みしていた同郷氏とともに姥ガ岳へと登った。ふと気づけば風が非常に冷たかった。ここはもう１５００ｍの高さなのである。遮るものがない稜線に飛び出してようやく冬山らしい気温に晒された形だった。
ひと登りすると紫灯森から牛首、そして月山の全容がみえた。全山真っ白でありほとんどヤブも埋まりまるで厳冬期や春先の月山をみているようでもある。姥の東斜面をみると一本のきれいなシュプールが見えた。この東斜面も今日の予定には入っていたのだがあいにく時間がない。途中で寒気に耐えられなくなり山シャツを着た。好天に柔らかくなっていた雪面はすでにモナカ雪になりつつあった。山頂が目前となったところで一人のスキーヤーが猛然と追いついてきてボク達をいとも簡単に抜き去ってゆく。ずいぶんと体力があるなあと思って山頂で声をかけたら酒田のひとだった。
時間はすでに午後１時を過ぎていた。雲一つなかった青空も今はなく雲が一面に広がっている。天候は予報どおり下り坂らしく早めに下った方が良さそうだ。ここからは冬山モードに切り替えて装備を調えた。ボクは湯殿山の写真を撮るために少し南側へと移動しその間に同郷氏は一足早く下っていった。
姥ガ岳の南斜面はモナカ雪と重い雪で快適な雪面とはほど遠くなっていた。そこら中で転倒しまくったが初滑りとはこんなものだろう。怪我をしないことが最優先なのだ。リフト上駅からは重い雪面ながらも雪は柔らかいのでそれなりにターンは可能だったが両足の筋肉はいまにも痙攣しそうなほど疲れ切っていた。リフト下駅で酒田氏と同郷氏の３人が再び合流。酒田氏は一缶あけてまったりとしながら腰をおろしてしまった。
姥沢からは林道を忠実にたどりながら下ることにした。スノーモービルのトレースもあって志津温泉まではノンストップである。まだヤブも多い電柱コースをくだるよりは遙かに快適であった。
