山 行 記 録

【平成23年9月23日/姥湯温泉〜薬師森〜明月荘〜東大顛〜烏帽子山〜兵子〜大日岳】



高倉山に虹がかかる(兵子新道から)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】薬師森1537m、東大巓1,927.9m、昭元山1892.6m、烏帽子山1879m、ニセ烏帽子山1836m、兵子1823m、大日岳1621.0m
【地形図】(2.5万)天元台、吾妻山(20万)福島
【天候】曇りのち雨
【参考タイム】
姥湯温泉8:40〜薬師森9:30〜潜滝10:10〜明月荘11:20-11:40〜東大顛12:00〜昭元山12:50〜烏帽子山13:30〜ニセ烏帽子山14:00〜兵子分岐14:10〜兵子14:20〜大日岳14:50〜姥湯温泉15:40

【概要】
 姥湯温泉から薬師森付近を歩くのは30年ぶりぐらいだろうか。その頃の記憶はほとんど忘れかけているのだが、東大顛から家形山方面への縦走路も20年近く歩いていないのでこの区間はずいぶんと久しぶりとなる。この縦走路は以前もヤブ同然の区間があったりしてかなり難儀した覚えがある。たぶん今も歩く人は少なく道刈りがされていないのは以前と変わりがないはずだった。しかし、今回の周回コースは7つのピークを越えなければならないので、ちょっとした縦走気分が味わえるものである。少々のヤブは我慢しなければならないだろうが、個人的には以前から宿題にしていただけにわくわくとした期待感があった。

 今日は寒い朝だった。天候は夕方から雨の予報。しかし米沢市内を走っている内に雨が降り出してしまい、先行きが不安になってくるようだった。それでも姥湯温泉についてみると曇り空となったため予定通り登ってみることにした。姥湯温泉は大震災の影響もあって閑散とした状況を想像していたのだが、連休とあってか県外からの宿泊者で結構賑わいを見せているようだった。

 温泉手前のつり橋を渡るとすぐに階段がある。以前とは変更されているもののここが薬師森への登山口となる。出だしからかなりの勾配があって驚くほどだが、まもなくすると樹林帯の中のなだらかに山道となった。途中にはベンチなどもあってこの辺は整備が行き届いていた。

 薬師森展望台の手前に分岐の標識がたっていた。展望台までは5分もかからなかったが曇り空ということもあって見晴らしはそれほど良くなかった。分岐からは一転して大きな下り坂となった。それまでの整備された道とは違い、あまり道刈りされていない。どんどんと下ってゆくと沢の徒渉点へと出た。しばらく沢沿いにゆくと大きな石がゴロゴロする登りとなり、まもなくすると滑川温泉からのルートと合流した。この分岐点はまだ記憶に残っているところだ。

 分岐からもう1ヶ所徒渉箇所がありそこがいちばん低い地点だった。薬師森からここまで160mも下ったことになる。その先で潜滝を経て対岸に渡るといよいよ明月荘へのルートとなる。その潜滝付近で大きなザックを背負った夫婦連れに追いついた。僕と同様に姥湯温泉の出発だったらしく今日は明月荘泊まりだと話をしてくれた。このあとも一カ所小沢を徒渉し山襞を回り込んでゆくと徐々に勾配が増していった。この頃からだろうか。ついに耐えきれなくなったように小雨が降り出した。明月荘までもまだかなりあるというのに気が滅入ってしまった。雨に加えて濃霧も辺りに立ちこめていて視界がなくなっていた。ぐいぐいと高度を稼ぐとまもなく木道が現れる。濡れた木道は滑りやすく特に傾いている木道はまさしく恐怖だった。

 雨が降りしきる中をようやく明月荘に着いた。ここまで3時間近くを要している。小屋には誰もいなく静まりかえっていた。途中で雨具を身につけて以来ほとんど休んでいなかったためシャリバテ気味だった。行動食を食べながら今後のことを考えてみる。予定どおり明月荘から東大顛を進めば標準コースタイムだけでも5時間近くかかるので、この時点では元の道を引き返すつもりだった。しかし、外に出てみると雨こそ降り続いているものの視界が戻っており、東大顛が湿原の向こう側に見えた。これをみて縦走路へと進んでみようかと気が変わった。

 湿原は美しい草紅葉となっていた。晴れていれば輝くような湿地帯を楽しめるのにと今日の天候が恨めしかった。振り返ると広大な弥兵衛平が見渡せた。東大顛から谷地平分岐点までは昨年も歩いているのでまだ記憶に新しい区間だ。わずかながらも青空が見えたのはこの付近だった。この辺りまでは歩きやすかったのだが、谷地平分岐点を過ぎると笹藪が行く手を遮るようになった。そして昨日まで降り続いた雨と今も降り続く雨のため、登山道は半分水路のようになっていて水が流れていた。雨に加えて2000mの稜線ということもあって気温が徐々に低くなっている。涼しさを通り越してかなり寒いのだ。すでに軍手はずぶぬれで指先の感覚が半分なくなっている。強風にあおられると体温が次第に奪われてゆくようだった。

 鞍部から昭元山へは大きな登り返しだった。体調もいまひとつのためだろう。両足が異様に重く感じてペースがほとんどあがらない。それでも昭元山へと登り切るととりあえずワンステップを進んだ気がした。昭元山は全行程のちょうど中間地点のようなピークでもあり、ここまでくればもう引き返す気持ちはなくなっている。昭元山は何でもないようなピークだが山容は大きく、山頂からは大きな下りが始まった。明瞭な道型はあるのだが、すぐにまた笹藪に入って行く。両手で前方をかき分けるように進むのでちょっとした拍子に足を取られたりした。登山道の整備は全くされてはおらず、吾妻連峰の原始性を感じる区間だった。

 烏帽子山への登りでは大きな石がゴロゴロと積み重なっていた。石というよりは大きな岩のようでもある。樹木がまったくないのでこの付近は濃霧と風雨の吹き晒しだ。石にはペンキ印があるので方角がなんとかわかるものの、道らしき道はなく初めての人ならば迷うようなところでもある。烏帽子山での天候はまるで冬山を思わせた。潅木帯に入ってゆくとわずかな平坦部がありすぐに大きな下り坂となった。

 烏帽子山からもどんどんと下って行く。先が見えないのでどのくらい下っているのかよくわからなかった。そして再び登りとなると両足が頻繁に攣るようになり、途中で立ち止まっては太ももを何回もマッサージしなければならなかった。足の疲れに加え辺りは雨のために薄暗くて不安が募ってきそうだった。

 ニセ烏帽子山の標柱は樹林の中に立っていた。昭元山や烏帽子山のような大きなアップダウンがない分少しだけ楽に感じた。ニセ烏帽子山から兵子分岐まではそれほどかからなかった。分岐点の標柱には「東大巓から4.2km、家形山までは0.9km」。真っ直ぐに進めば家形山でありもう目前だった。体調も天候も悪い中でよくぞここまでがんばったものだと自分を誉めてあげたかった。兵子へはここから左折してゆるやかに登って行く。これまでのヤブ同然のような山道とは違い、兵子新道は見違えるほど歩きやすいものだった。

 兵子の大きな岩を登り切ると朽ちかけた標柱が一本立っていた。家形山は雨に薄く煙って見えた。さあ、あとは姥湯温泉へと新道を下るだけである。このコースは何年か前に一度歩いているので様子は概ねわかっている。大日岳のピークがまだ残っているがそれほどではないだろう。雨は相変わらず降り続いていた。軍手を絞るのは何回目だろうかと思い出せないほどしたたかに濡れていた。姥湯温泉まではまだ2時間近くかかるはずだったが兵子を通過したことでもう不安感はない。少なくともここを下りきれば下界なのだ。ふと気付くと両足の痙攣も落ち着いているようだった。長かったコースもようやくゴールが見えてきた気がして僕は少しだけ元気を取り戻した。


姥湯温泉


登山口


潜滝付近


潜滝付近


金明水


明月荘


東大巓


弥兵衛平


東大巓から昭元山方面


谷地平分岐


昭元山


兵子分岐


兵子分岐


兵子から烏帽子山


兵子と家形山


大日岳


 コース

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