(17日)テン場3:45〜本山小屋4:00〜飯豊山4:15〜宝珠山の肩6:10〜千本峰7:20〜休場ノ峰8:00〜桧山沢吊橋9:40〜飯豊山荘10:30
【概要】
久しぶりの飯豊連峰。石転ビ沢を登りダイグラ尾根を下るコースは3年前の日帰り山行以来だが、もうあんな無茶なことは出来そうもないので今回はもちろん本山小屋一泊の予定である。行程も長い上に連日の猛暑で登り始める前から夏バテ気味ということもあり、早立ちをすることにした。朝の4時半ぐらいだとまだ車は少なかった。それでも登山届記載所では山岳会や小国警察署の方々が早くも登山者の指導にあたっていた。
温見平から見上げると稜線付近には分厚い雲が居座っていた。砂防ダムを過ぎると林道に別れを告げて山道に入る。いつものコースを淡々と歩いてゆく。意外と石転ビ沢を登る人はまだいないのか静かな山道が続く。梶川ノ出合は流れも少なくなっていて高巻きをすることもなく河床を通過した。梶川ノ出合から石転ビノ出合まではそれほど距離はない。梶川ノ出合に出ると高巻きをしてきた単独の男性に追い着いた。
雪渓の上は涼しく快適だった。まだ6時半を過ぎたばかりのためか他に登山者はなく、大岩で先ほどの男性と一緒になったところでお互いにアイゼンを装着した。この人は関東からの登山者で、前日まで朝日連峰以東岳を登ってきたというから健脚のようだ。今日は頼母木小屋泊まりで明日は杁差岳を往復してから足ノ松尾根を下る予定だという。私は12本爪だが関東氏は6本の軽アイゼンだった。石転ビ沢は下界の猛暑が信じられないほどの気温の低さだ。途中から軍手を着用しなければならなかった。ときどき生暖かい風が流れるとホッとした。
本石転ビ沢を通過し、北股ノ出合を過ぎると少しずつガスに覆われ始めた。しかし雨が降るほどではなく、涼しいのが何よりありがたかった。雪渓は安定していて落石の危険性は少ないように見えた。中ノ島は完全に露出していて、陸にあがったところでアイゼンはザックにしまった。中ノ島ではミヤマキンポウゲやハクサンコザクラ、ノウゴウイチゴなどが盛りを見せていた。中ノ島上部にはまだ10mほど雪渓が残っている。ここはストックでバランスをとりながら通過したがかなりの急斜面のため要注意箇所だ。登り切ると梅花皮小屋が正面だった。
梅花皮小屋にはちょうど4時間で到着した。周囲はガスに包まれて視界はほとんどないのだが、それでも風があって時々青空が透けて見えた。管理人は出かけているのか見あたらなかった。小屋にはいってみると誰もいない。休んでいると小屋を通過する話し声が聞こえる。窓の外には水場に向かう女性二人が見えた。ガスは相変わらずだったのだが、それでも時々薄日が差しており、まもなくすると晴れるだろうと小屋をでた。
梅花皮岳、烏帽子岳と通過してゆく間にガスが切れ始めてきた。すると南西の方角から大日岳が見え始める。一面真っ白なガスの中から突如山頂付近だけが現れるこの光景はなかなかドラマチックだった。まだまだ雪渓が多く残っていたが、それでも登山道を塞いでいる箇所はそんなにはなく、慎重に通過すればよかった。
登山道には多くの高山植物が咲いていて驚くほどだった。チシマギキョウ、ハクサンフウロ、イワイチョウ、ニッコウキスゲ、ヒナウスユキソウ、マイヅルソウなどが最盛期で、さらに飯豊の固有種であるイイデリンドウも結構咲いている。雪渓の通過で一番危ない箇所は天狗岳手前だった。ここは高巻きのための旗に沿って迂回した。大きく右にカーブすると御西小屋が前方に見えた。
御西小屋には梅花皮小屋から4時間もかかってしまった。久しぶりの長丁場でもあり体もだいぶ疲れを感じていた。小屋では多くの人たちが休んでいた。午後も1時を過ぎているのでほとんどの人たちは御西小屋泊まりのように見えた。ここは交通の要所ともいえるところで、大日岳を往復する人や縦走する大勢の人が交錯する。
御西岳から飯豊山の区間はまさしく花のオンパレードだった。コイワカガミ、チングルマ、アオノツガザクラ、イワハゼ、イワイチョウと数え切れないほどの花々がある。いつも思うのだがここは飯豊連峰でも一番贅沢な稜線だろうと思った。ゆく先々で写真を撮りながら歩いた。大きく左にカーブをとると玄山道分岐まではニッコウキスゲの群落となっていた。駒形山までは行き交うひともなかった。予定時間よりも1時間以上遅れていたが飯豊山は目前だった。
飯豊山に到着したのは午後3時近くだった。はじめは誰もいなかったが、少し休んでいる間に本山小屋の方角からちらほらとやってきた。山頂付近にはニッコウキスゲとヒメサユリが同時に咲いていて実に華やかな雰囲気に満ちていた。またイイデリンドウが多いのもこの付近で、飯豊連峰はまさしく花の山だなあと思わずにはいられない。雲はあるものの午前中のガスはすっかりあがって夏山らしい青空が広がっていた。
本山小屋では数え切れないほどの登山者であふれかえっていた。管理人もその対応に苦慮しているようだった。今日は小屋泊まりの予定だったがこの混雑ぶりをみて、これではツェルトに泊まった方がよほど快適だろうと急に気が変わった。幸い雨が降る気配もなさそうである。シュラフは持ってこなかったがなんとかなるだろうと水場で水を補給後、テン場にツェルトを設営することにした。
テン場での夕食は快適だった。下界の猛暑をよそにここでは風も爽やかで、高山に登ってきたのを実感できるところだ。しかし、さすがに夜になると気温が下がった。2100mを考えると気温は10度ぐらいまで下がっているのだろうと思った。あらゆるものをザックから取り出して身につけ、両足から腰まではザックにつっこんで眠った。
翌朝は3時半に起床した。ただでさえ長丁場のダイグラ尾根である。熱中症が心配ということもあり、少しでも涼しい内に下ってしまいたかった。4時前ではまだ暗かったが月の光が異様なほど明るかった。周りのテントから起き出している気配はなかった。ポールもないのでツェルトの撤収は簡単だった。小屋前で靴のひもを締め直し、肌寒いので雨具を着用してから出発した。ヘッドランプは必要なかった。
飯豊山では神社に参拝してからダイグラ尾根の下山を開始した。昨日の疲れがかなり残っているのか、両足のふくらはぎが少し痛んでいたのだが、歩いているうちに少しずつとれていった。ご来光はダイグラ尾根を少し下った付近で見ることができた。東の稜線から真っ赤な太陽が顔を出すと、宝珠山がオレンジ色に輝いた。
ダイグラ尾根を下るのはもう10回目ぐらいなのだろうか。しかし、下りとはいってもいくつもの上り下りが続くために下っている気分には少しもなれない。さらにまだ5時前だというのに太陽があたると体が熱くなった。この時期のダイグラ尾根にはほとんど雪は残っていないだろうと考えていたのだが、宝珠山のピーク手前にはまだ結構残雪があった。その雪を手でほじくっては顔を拭ったりした。
宝珠山を過ぎると巻き道が多くなる。何度も何度も似たようなピークを巻いてゆくのでうんざりするほどだ。体中が火照っていて少しの日差しでも異様な暑さを感じる。それだけで体力が奪われる気がした。誰とも出会わないで下り続けていたが、休場ノ峰が近づいたところで何人かの登山者に出会った。中には日帰りで往復するものもいて驚く。今日は昨日とは違って朝からかなりの暑さだった。
休場ノ峰には午前8時に到着した。山頂には新潟からやってきたという人が一人いた。これから飯豊山に登るようだったが、あまりの暑さに少し参っているようにみえた。さて、いつもと同じようなペースで下ったつもりだったが、ここまで4時間近くもかかってしまっている。体力が落ちているのを実感しないわけにはゆかなった。しかし、ここまでくればあとは桧山沢のつり橋に一気に下るだけである。つり橋までは高度差にしてまだ900mあるので、今回は無理せずに途中で何回か休んでゆこうと自らを鼓舞して休場ノ峰を後にした。
桧山沢のつり橋には1時間40分。飯豊山山頂からは5時間30分もかかって降り立った。以前、飯豊山から3時間45分で降りたことを思うと2時間も余計にかかったことになる。まだ午前中なのに気温はかなり上がっているようだった。体中が熱くて頭の奥が痛かった。すでに軽い熱中症にかかっているかもしれなかった。水筒の水は底をついていてここでは桧山沢の雪解け水を心ゆくまで飲んだ。
桧山沢のつり橋からは小1時間もあれば飯豊山荘である。僕は山道を慎重に歩いて林道にでた。林道にはこれまでにも増して強い日差しが降り注いでいた。なるべく日陰の部分を拾いながら飯豊山荘へと向かった。
梶川ノ出合 |
梶川ノ出合上部 |
石転ビ沢の大岩 |
中ノ島 |
ハクサンコザクラ(中ノ島) |
ノウゴウイチゴ(中ノ島) |
ミヤマキンポウゲ(中ノ島) |
梅花皮小屋 |
ヒナウスユキソウ |
ヨツバシオガマ |
梅花皮岳の登りで |
雲割れる(大日岳) |
ミヤマキンバイ |
烏帽子岳から下る登山者 |
天狗岳付近 |
シラネアオイ |
天狗岳から振り返る |
飯豊山(天狗岳) |
御西小屋 |
御西小屋で集う人々 |
御西の稜線で |
御西の稜線で |
御西の稜線から飯豊山を仰ぐ |
飯豊山 |
イイデリンドウ |
雲が湧く(テン場) |
テン場と本山小屋 |
ご来光(ダイグラ尾根) |
曙光(宝珠山) |
雪渓(ダイグラ尾根) |
雲がのしかかる御西 |
宝珠山 |
宝珠山の肩 |
サクラソウ |
飯豊の主稜線(休場ノ峰付近) |
桧山沢のつり橋 |