山 行 記 録

【平成23年6月5日/百宅口〜鳥海山】



駐車場から鳥海山を仰ぐ



【メンバー】西川山岳会6名(柴田、上野、荒谷、神田、大江、蒲生)柴田さんは日帰り参加
【山行形態】山スキー、春山装備、前日、大清水避難小屋に宿泊(※山行は日帰り)
【山域】鳥海山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)
【地形図】(2.5万)鳥海山、(20万)仙台
【天候】晴れ
【温泉】猿倉温泉 鳥海荘350円
【参考タイム】
大清水山荘7:20(838m)〜唐獅子避難小屋9:40-10:30〜七高山11:40-12:30〜大清水山荘14:20
  
【概要】
 夕方、百宅口の駐車場につくとすでに多くの車が停まっていた。今回はすっかり板洗いの定番となった百宅口からの鳥海山。前日から大清水避難小屋に宿泊しながら、今シーズンの反省会を兼ねての山行である。駐車場には八戸ナンバーが数台と東京からの車が数台。今年も多くの人たちがこの鳥海山にやってきているようだった。駐車場では約3ヶ月ぶりに上野さんと出会い、いつもの笑顔に接していると3ヶ月という距離が一気に縮まった気がしたが、山スキーとしては今回が板洗いというとこもあって、どことなく寂しさが漂っているように見えた。

 駐車場では結構強い雨が降り続いていた。おかげでまだ午後3時というのに夕暮れのような薄暗さに包まれている。さっそくシュラフを携えて大清水避難小屋に入ってみると、中では早くも仲間達が宴会に盛り上がっていた。すでに缶ビールがいたるところに転がっていて、みんな早くもできあがっているようだった。神田さんや荒谷さんが近くで収穫したという豊富な山菜は、天麩羅を手始めにおひたしやサラダなど、様々に調理されて目の前のテーブルに並べられている。小屋の二階には東京からの団体が10数名いて、さらに隣の大清水山荘には八戸からきたパーティもいて今宵の大清水は大賑わいだ。ただ残念ながら柴田さんは仕事のため、夜10時過ぎ小屋到着予定とのことでその日出会うことはできなかった。

 翌日は残念ながら鳥海山の山頂は見えなかった。夜半、大きな雨音が聞こえていて朝方には止んでいたがまだすっきりとした青空はなかった。それどころか尾根付近を見上げると濃いガスに覆われ、もしかしたらわずかながら雨が降っているようにも見えて、いささか今日の天候にかげりが漂っている。

 今年の大清水園地は雪もかなり残っていた。この分ならばはじめからシールが可能だろうと喜んだ。しかし、湿地帯にはミズバショウが咲き、周囲のブナ林は瑞々しい新緑に包まれている。雪が多かったとはいえこの鳥海山山麓は春の息吹に満ちあふれているようだった。八戸組は早朝6時に小屋を出て行った。こちらの予定は7時。大清水山荘前ではこれから登る歩きのメンバーもいていつになく賑わっていた。

 今回ははじめから残雪を踏みながら急坂を登ってゆく。そして途中からシール登行が可能となり、気持ちの良い登りの始まりとなった。大倉の滝見場付近では少し藪をかき分けたりしながらタッチラ坂を横断して右手の広大な雪面に出た。心配した天候も特に雨が降り出すということはなかったが風はめっぽう強く、ガスに包まれていることもあって視界はあまり良くなかった。

 唐獅子小屋には2時間30分ほどで到着した。視界の悪さは相変わらずで、強風もすさまじいほどだった。これでは今日の山頂は間違いなく無理だろうと早くもあきらめムードとなり、僕たちはストーブをつけてのんびりと休むことになった。そのうち途中で追い越してきた八戸メンバーも小屋にやってきて小屋内は大賑わいとなった。

 しかし天候というものはわからないものだ。早めの昼飯などを食べていると窓の外が急に明るくなり山頂付近は青空も広がり始めていた。薄暗かった小屋内は一気に明るさを増した。この様子をみて僕たちは先ほどの意気消沈も忘れて急いで山頂へと気持ちが切り替わったのだった。

 外に出てみると気温の上昇とともに風もだいぶ弱まっているようだった。唐獅子避難小屋から山頂まではまだ600mほどの登りがある。みんなも今日の山スキーが久しぶりなのだが、3ヶ月ぶりという上野さんは長い空白を感じさせないほどのハイペースで登って行くので、逆に僕たちが煽られる始末だった。

 広い雪面をぐいぐいと登ってゆくと高度感が一気に増してきて、周りを見渡すと雲海が広がっていた。僕たちはいつのまにか雲の上に飛び出していた。大きな尾根をひとつ乗り越えると祓川からのコースと合流する。この地点までくれば七高山はまもなくだ。山頂付近では大勢の人たちであふれているのが見えた。

 七高山の山頂には唐獅子小屋から1時間ほどで到着した。遅れていた後続のメンバーも次々と登ってくる。祓川からの登山者やスキーヤーもいて山頂は結構な賑わいを見せている。風は強かったものの、すでに初夏の風であり、一汗かいた体には非常に心地よかった。大物忌神社もすっかり雪解けが進み、夏山開きが近いのを感じさせた。

 七高山の山頂からは斜度はあるものの快適なゲレンデが広がっていた。昨年はスプーンカットの悪コンディションに苦労した斜面も今年はほとんどフラットのザラメ雪のためスキー滑降にはなんの問題もなかった。僕はみんなが準備をしている間にひと滑りしてくることにした。そして再び登り返しを始めた頃にみんなが滑り始めたため、ここからはしばらく写真撮影に専念することになった。みんなも快適な斜面と最高のコンディションに酔いしれているようだった。一気に山頂から急斜面を下り、唐獅子側の尾根にはいると、そこには広大な一枚バーンが待っていた。いわば自然が作り出した最高のゲレンデなのである。見上げると稜線から次々と雲が湧き、その雲が猛烈な早さで流れてゆく。自然が織りなす絶景にはただただ感激するばかりだった。

 標高1400m地点のダケカンバ帯は水場もあって下りでの唯一の小休止場所となっている。冷たい雪解け水は切れるような冷たさで、それは乾ききった体の隅々まで沁みてゆくようだった。ノドを潤した後はしばらくのんびりとした時間を過ごした。今日は今シーズン最後の滑降とあってかみんなの表情にも何となく憂いが漂っているようであった。

 水場からは久しぶりに赤沢川沿いに下ってゆく。しかし、途中で雪が切れていて藪こぎを余儀なくされてしまいここでは大汗をかいてしまった。大滝を通過し元のコースに戻ると、今度はいつもの沢沿いに下ってゆく。そして雪が少ないのをみて早めに尾根にあがったのはよかったのだが、ここでもルート取りを少しだけ間違ってしまい、またしてもしばしの藪こぎとなった。大清水山荘は目前であったがやはり6月である。いつものように1週間早ければなんの問題もなく雪面を下ってゆけるはずだったのだがまあこれもまた山スキーの楽しみなのだろう。最後は新緑のシャワーを浴びながらブナ林を通過して、ミズバショウの広がる大清水園地へと降りて行った。そして小屋前の沢水でいつものようにスキーを洗い、今シーズンの山スキーが終わった。


宴会風景


登り始め


唐獅子避難小屋


七高山めざして


山頂で休憩です


新緑


GPS軌跡(赤は登り、青は下り)

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