山 行 記 録

【平成23年6月4日/大滝口〜加無山



加無山直下から甑山を望む



【メンバー】単独
【山行形態】春山装備
【山域】丁山地
【山名と標高】加無山(かぶやま)997.2m
【地形図】(2.5万)及位、松ノ木峠(20万)仙台
【天候】晴れのち曇り
【参考タイム】
加無山登山口920〜丸太橋通過940〜加無沢出合1130〜ブナの平坦池〜胎内くぐり直下〜ブナの平坦池加無沢出合〜加無山登山口1440
  
【概要】
 加無山は山形県北部の真室川町にある。南の女加無山と共に双耳峰をなしている。女加無山には登山道はなく、また男加無山へも藪がひどいらしくガイドブックにはその手前の「露岩」と呼ばれる岩峰で引き返すのが一般的なルートらしかった。しかし「露岩」からの展望は良好で、鳥海山や丁岳。東方には同じく双耳峰である男甑山が存在する。

 県道35号線を鮭川村から真室川町に進み、大滝小学校のすぐ先で左折すると大滝林道が続いている。その林道は6.3kmと結構長く、鬱蒼としたブナ林と深閑とした人の気配もない森林地帯は、車の運転でさえも不安になってしまうほどだった。途中甑峠への道を分け、さらに三階滝への道を分けながら道標に従い車を進めると左手に登山口の標識がある。駐車スペースは路肩に数台置くことが出来るようになっていてすでに4台も駐車中だった。車があることに一安心したが、軽トラがほとんどでみんな山菜採りが目的のようであった。

 登山口の標高は320m。杉林を降りてゆくとすぐに丸太橋を渡る。ここはまだ支流だがもう一つの丸太橋というのが壊れていて、さらにここは八敷代川という大きな流れのため徒渉も困難な状況だった。第一丸太橋まで引き返したりまた元に戻ってきたりと、しばらく右往左往しながら結局この壊れた丸太橋の上流付近を徒渉しながら対岸へと渡った。

 対岸からはしばらく八敷代川に沿った平坦なブナ林の歩きが続いた。まだ所々に残雪が残っていて、しばらくすると雪渓歩きが主体となった。このあたりはガイドブックに従って判断してゆくのだが、夏道が隠れているためだんだんとルートそのものが不明瞭になった。山体の大部分は石英安山岩の岩壁が多く、さらに柱状節理が発達していて思わず北アルプスの岩稜帯を思い出す。そして左岸に移り斜面をへつるように進むと加無沢出合についた。ここでようやく登山者に出会ったが、実態は山菜採りでありもう引き返すところだった。先をゆく登山者はないらしく登山にはまだ早いだろうとアドバイスされたが、とりあえずゆけるところまでゆきつもりだと話して別れた。

 そこからは山道が少しずつ不明瞭となり踏跡を探しながらの行動が続いた。やがて八敷代川から離れると山道は急に勾配が増していった。周囲は深閑としていて、エドゼミの鳴き声が聞こえるだけで人の気配は全くなかった。いろんな動物達がそこらじゅうから飛び出してきそうでもあり、薄暗くもあり思わず身がすくようだ。見上げると女加無山や男加無山が見えた。

 女加無山の山裾をトラバースするようになると大きな雪渓が急斜面に切られているだろう夏道をふさいでいてその通過に少しずつ苦労するようになる。雪渓は堅くてキックステップが全然効かなかった。3カ所ほどなんとか通過したもののいよいよ女加無山の直下まできたところで45度以上はあるかと思われる大きな急斜面の雪渓に出た。この付近にはガイドブックにある「胎内くぐり」と呼ばれる岩場があるはずだったが、すでに通過したのか、若しくはまだ雪渓に埋まっているのかも知れなかった。この急斜面の通過には確実にアイゼンとピッケルが必要と思われたが、あいにく今日はどちらも持参してはいない。無防備の状態での通過はほとんど不可能に思われたが、それでもなんとか木の枝などをつかみながら雪渓を迂回するように回り込んだ。つまり急斜面の最高地点を回り込もうとしたのだが、なんとか回り込んだところ、そこには手がかりや足場もない箇所で、下の方にあるはずの夏道にはとても降りられそうにはなかった。つまり行き詰まったのだった。

 アイゼンやピッケルがないので恐怖感を覚えるような急斜面と高度感に足が震えた。女加無山と男加無山との鞍部である「挽割」はもう目前であり、高度もすでに720mを越えている。この高度は「挽割」とほとんど変わりがなかったのだが安全最優先を思えば今回はあきらめるしかなかった。立ち止まった地点からは引き返すにも至難の業だったが、必死に周りのものにつかんだりしながら、なんとか無事に危険地帯を脱出することができたのは半分幸運のようなものだったかもしれない。冬山ではよくあることだが、夏山において山頂を目前に引き返すなど初めてのような気がした。あいかわらず人の気配はなかったが、そこからは気分を切り替え、山菜採りなどを楽しみながら登山口へと引き返すことにした。


丸太橋


壊れている丸太橋


不明瞭な道が続く


柱状節理の岩壁


コース概要

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