山 行 記 録

【平成23年4月3日/朝日連峰 桧原〜石見堂岳〜北東尾根〜国道112号線】



石見堂岳の山頂と赤見堂岳(中央奥)



【メンバー】西川山岳会(荒谷、神田、蒲生)
【山行形態】山スキー、冬山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】 石見堂岳 1286m
【天候】晴れのち雪
【温泉】大井沢温泉 湯ったり館 300円
【参考タイム】
駐車地点(尾根取付)7:30(410m)〜757m〜951m峰11::00〜石見堂岳11:30〜1011m峰〜980m峰13:40〜868m峰〜786m峰〜大越川橋(国道112号線)14:30〜桧原駐車地点14:50
 
【概要】
 朝日連峰の石見堂岳には夏道はなく雪のある時期にしか登れない。標高こそたいしたことはないのだが、障子ケ岳から湯殿山の稜線上においては、赤見堂岳とともに特異な存在感があって、特に雪を抱いた山容は岳人を惹きつけてやまないものがある。朝日連峰の秘峰ともいえる山だが、今週は久しぶりにその石見堂岳の計画である。石見堂岳からは北東尾根経由で、最後は月山道路の途中の国道112号線に至る、行程的には結構長い縦走となる。

 天候は朝から曇り空が広がっていた。桧原の県道沿いに車を止め、橋の欄干をたよりにしながら背丈以上の残雪にあがった。冬型のためだろう。雪面は結構堅くしばらく悪戦苦闘しながら登らなければならなかった。さらにやせ尾根の下部付近は雪が切れている上に、その先は見上げるほどの高さがある。ザックからスコップを取り出してしばらくルート工作を繰り返した。まもなく雪面がつながるようになると視界が急に広がるようになり、久しぶりにみる朝日連峰の展望に感激した。

 登りはじめこそ薄曇りのはっきりしない天候だったものの、まもなくすると上空には春らしい青空が時々のぞくようになった。快適な尾根歩きを続けていると正面奥には赤見堂岳の白い稜線が見えてくる。右手には月山、姥ガ岳、湯殿山があるはずだが今日は分厚い雲に覆われていて裾野付近しか見えなかった。

 山頂までのルートは結構アップダウンがあるのでなかなか高度が稼げないのがもどかしかった。しかし、周囲の風景は夏山には見ることのできないものだけに楽しいものがある。まもなく951m峰が近づくと天候はさらによくなる一方となり、いかにも春山らしい雰囲気に満ちてくるようになった。時々振り返る同行の二人も体調はけっこうよさそうでペースもしっかりしているようだった。というよりも二人は昨日も湯殿山に登っているだけあってこの緩やかなコースはほとんど苦にもならないようであった。

 951m峰を越えると右手の尾根へとトラバース気味に移動するのだが、斜面は相変わらずのアイスバーンであり、ちょっと気を緩めると下まで滑落しそうだった。神田さんはスキーアイゼンをつけているのだがわれわれ男性陣は結構難儀しながらの行動が続いた。

 石見堂岳がいよいよ前方に迫ると斜度もだいぶ緩やかになった。石見堂の奥には赤見堂岳が控えているのだが、少し薄暗いのが気にかかる。あの雪雲がこちらにこないうちに下らなければと考えているとほどなく石見堂岳の山頂に到着した。

 尾根の取り付きからは約4時間。最初のルート工作に費やした時間を差し引けばおよそ3時間で到着したのだから所要時間は意外と短かったようだ。石見堂岳の山頂は結構広く、前方に進むと山頂の目印ともなっている大きな岩がある。ここで証拠写真を撮っている間にもメンバーが次々に到着してきたのだが、驚いたことに天候の急変が迫っていた。つい今し方まであった青空は早くもなくなっており、辺り一帯は風雪に包まれるようになってしまったのだ。視界もかなりなくなりつつあり、天候の悪化は予想外に早かったようだ。これでは休憩どころではなく急いで高度を下げなければならない。僕たちはシールをはがすと一目散に山頂を後にした。

 風はめっぽう冷たく気温は厳冬期を思わせた。山頂からいくら下っても風雪は一向にやむ気配はなく、しょうがないので高度1000m付近で休憩を取ることにした。小雪は降り続いていて時折強風に煽られると目の前が見えなくなるほど吹雪いたりした。そこは風の通り道でもあるのかツェルトをかぶっても小雪が内部まで舞い込んだ。それでも暖かいものを腹にいれると気持ちもようやく落ち着くようだった。

 一休みしているうちに天候は幾分持ち直したのか、視界も休憩前よりもはっきりしてきていた。堅い雪面はあいかわらずで少しの登り返しでも結構つらいものがあり、980mのピーク直前ではシールを貼ることにした。この付近の記憶はほとんどなく、はじめは右手をトラバースしてゆこうとしたりしてメンバーはたぶん不安だっただろう。しかしシールさえ貼ってしまえばなんの不安もない。ピークを左手から巻いてゆくとちょうど鞍部のような部分に飛び出し、仰ぎ見ればいつのまにか再び青空が広がり始めていた。

 ここからは眼下に国道を見渡すことができた。月山第一トンネルから湯殿山へと連なる稜線もはっきりとわかった。ゴールはまもなくの距離に迫っているようだった。鞍部からは広々としたブナ林の緩斜面を飛ぶように滑ってゆく。ここもやはりアイスバーンの堅い雪面のため、快適なパウダーとは対極のような雪質だったが、登り返しがない分だけ心地よさがある。豊富な残雪上を快適に滑ってゆき、868m峰からは右手に方角を変える。最後の786m峰まで下ると国道112号線が間近に迫っていた。雪は最後まで堅く、終始横滑りなどでしのぎながら下ったのだがそれは難儀というほどではない。スキーが走るためにこの付近は楽しみながら高度を下げてゆくことができたのである。僕はこの時期にしかたどれないルートを久しぶりに楽しむことができて充実した思いに満たされていた。月山道路へと落ち込むヤセ尾根を一気に下ってゆくと、国道112号線の大越川橋はまもなくであった。


県道から取り付きます


ルート工作をしてメンバーを待ちます


やっと尾根がつながりました


中央奥に小さく石見堂岳が


赤見堂岳と稜線が近づきます


石見堂岳が目前


荒れる山頂で


眼下にR112号


ようやく天候が落ち着いてきました


いざ!国道へ向かって滑りましょう


月山道路 大越川橋付近


お疲れさまでした


今回のコース

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