【概要】
今日の蔵王連峰は朝から雲ひとつみあたらない快晴の空が広がっていた。昨日は全く見えなかった中丸山は朝日を浴びて真っ白に輝いている。まだ2月の初旬だというのに、蔵王連峰でこんな無風快晴というのはかなり珍しい事であった。
リフトトップからは大きく育った樹氷を眺めながらのスキーハイキングが続く。廃線リフトからは一時的にガスが広がったりしたが、熊野岳が近づくと再び視界が広がり、見渡せば吾妻連峰、飯豊連峰、朝日連峰そして月山などが雲海に浮かんでいた。熊野岳山頂到着は10時20分。登り始めてからまだ1時間40分しかたっていなかった。
熊野岳山頂では多くの登山者やスキーヤーで賑わっていた。月山の右手には鳥海山がぽっかりと雲に浮かんで見えた。雁戸山はというと新雪を抱いて迫力ある姿を見せている。今日は見えないものはほとんどないというほどの快晴であった。蔵王温泉側をみればロープウェイの山頂駅や地蔵岳に多くのスキーヤーや観光客がうようよしていて、まるで蟻の大群が群がっているようにも見えた。
地蔵岳の東斜面は八方沢の源頭部となっている。一本も木立のない一枚バーンとなっているのをみているとこれは是が非でも滑降しなければということになり、小休止を終えて一路、地蔵岳へと向かった。熊野岳の西斜面は常には堅いシュカブラなのだが、今日はうれしいことに雪が柔らかい。ボトムからスキーをひと担ぎしてピークへ登ればそこは地蔵岳の一角だ。ここでは多くのスノーボーダー達が八方沢の源頭部へと果敢に挑みながら滑降を楽しんでいるところだった。
僕達も準備を終えれば一気に八方沢へと滑り込む。早速斜面の一角からビデオ撮影のため構えていたのだが、こんな時に限って電池が途中でなくなってしまったりした。高度200mほど下ったところで僕達はいつものツアールートへと方向転換だ。これがまた楽しいのである。例年だと樹氷の間が波打っていたり、くぼんでいたりとトラバースもなかなか手間取るのだが、今回は全く違った。あまりに積雪が豊富で、さらにここ数日の好天のおかげか雪が適度に締まっていて、なおかつ表面はパウダーなのである。こんな感激は初めてだった。樹氷の間もすいすいと容易く抜けてゆけるので自由自在というわけである。たちまち1300m付近の快適なブナ林のトップへと出たところで大休止となった。時間はちょうど正午を過ぎたばかりで、春を思わせる日差しが降り注ぐ林間で、僕たちはのんびりと昼の休憩を楽しんだ。
「快適なブナ林」と僕達が名付けているところはいわば固有名詞のようになっていて、ここは決して期待を裏切られることのないブナの疎林帯だ。みんな快哉をあげながら滑降を楽しむばかりで、こんな斜面がどこまでも続いてくれたらばといつも願わずには居られない。
滑り降りたところはいつものロボット雨量計の建物が建つ地点で、迫力ある雁戸山を正面に眺める絶好の地点でもある。建物にはいつのまにか「鍋倉雨量観測所」と表示が新たにされていた。ここからもスキーはよく走り快適の一言である。途中で鍋倉不動に立ち寄り全員で参拝をした。急斜面を下れば登山道の道形にでた。
ここからも蔵王ダムまでは結構距離がある。残念ながら今日の気温のおかげで春のような湿雪となってしまい、スキーは少し走らなくなっていた。これでは最後まで下りラッセルかと思っていたら、林道の途中からは日陰に入ったおかげで、スキーは再び滑り出したのである。この雪面の変化によってたちまち蔵王ダムの登山口に降り立った。ロボット小屋からはわずか40分で下ったことになる。こんなに短時間でこのコースを楽しく滑り続けた記憶は今までになかった。
林道に降り立ったとはいってもまだまだツアーは終わらない。30分近くダムを半周し、その後も長い林道のスキー滑走が残っているからである。しかし、楽しかったツアーはすでにエンディングが近づいていた。再びスキー滑走が可能となるとダム管理所までは短時間だ。心配していた道路にもまだ適度な積雪があって、この分ならばなんの問題もなく車のデポ地点まで下れるようであった。好天と雪質、さらに豊富な積雪に恵まれた、こんなツアーはもう2度とないかもしれないと、幾分寂しさも感じながら駐車場へと僕達は向かった。
避難小屋と熊野岳 |
樹氷原を歩く |
樹氷原を歩く |
ツアーコース |
雨量観測所で |
雁戸山(蔵王ダムから) |