山 行 記 録

【平成22年10月17日/祝瓶山荘〜祝瓶山〜赤鼻尾根】



山頂直下から大朝日岳を望む



【メンバー】単独
【山行形態】秋山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】祝瓶山 1417m
【地形図】(2.5万)祝瓶山、(20万)村上
【天候】晴れ
【参考タイム】
祝瓶山荘6:15〜祝瓶山8:30-9:00〜赤鼻10:00〜祝瓶山荘11:30

【概要】
 前日の土曜日、祝瓶山での遭難騒ぎを全然知らなかった。早朝、自宅を出る前に何気なく新聞をみていたら、宮城県の5名パーティが下山しなかったことが全国版にまで載っていたのである。現地では救助隊が早朝から動き出すのは火を見るよりもあきらかで、今日の騒々しさを考えると二の足を踏みそうだったものの、かといって行き先を突然変更するのも面倒くさく、それならば捜索隊よりも早めに登ってしまえばよいだろうと、覚悟をきめて祝瓶山荘に向かった。

 今日は昼頃まで自宅に戻らなければならないのでいつもよりも早立ちした。ようやく夜が明けたばかりの6時前、祝瓶山荘はまだ車が数台だけだったが、そのうちパトカーや報道関係者、救助隊の車輌が次々と詰めかけてきて、予想通りというのか、ただでさえ狭い祝瓶山荘前はたちまち騒然となってしまった。
 
 万が一の時の連絡用にと無線を持ち、ざわつく中を逃げ出すようにしながら桑住平へと歩き出した。そのうち防災ヘリが頭上を飛び始めて、上空からはスピーカーで遭難者を呼びかけるなどするものだから、祝瓶山周辺は想像以上の騒々しさに包まれた。しかし、しばらくするとその防災ヘリも静かになってしまい、いつもの静かな山が戻ってきたのは幸いだった。早くも遭難者達が見つかったのだろうかと思ったが、急坂に汗が流れ、また周りの景色を静かに眺める余裕も出てきたことから、登っているうちに早朝の遭難騒ぎもいつのまにか忘れてしまった。

 途中の桑住平で二人連れを追い越すと先には誰もいなくなり、その後はずっと一人旅が続いた。この祝瓶山への直登コースは一気に山頂まで登れるのが魅力的だ。まさしく天空に駆け上がるかのような急登が連続するので無駄がないのである。水分を補給するため少し立ち止まったりしたもののほとんど休みをとることもなく山頂まで一気に登った。

 山頂到着は午前8時30分。誰もいない祝瓶山山頂だった。所要時間は2時間15分と最近にしては割合に短時間で登ってきたことになり、疲れもそれほどなはなく、涼しくなったこともあって体調はかなり回復傾向と判断してよさそうだった。今日は快晴のもと山頂からは360度の展望が広がっていた。遮るものは全くなく全方位に山の連なりがある。小国側はまだ厚くて真っ白い雲海に覆われていたが、それもまたすばらしい光景だった。遅い朝食のような、あるいは早すぎる昼食のようなものを食べながらしばらく憩いのひとときを過ごした。見渡してもまだ誰も登ってくる気配は感じられず、今日はひとりだけの貸し切りというこれ以上の贅沢はないような気がした。

 至福の山頂だったが、それでも30分も休めば十分だった。赤鼻尾根は意外と長い。しかし、それだけ紅葉を楽しめることを思えば、このコースの長さがかえってうれしくなるようでもある。一人だけのもったいないような山頂だったが、今日は下りの方に時間がかかりそうなので、後片づけを終えると赤鼻尾根へと向かうことにした。

 見上げれば雲ひとつ見あたらない快晴の空模様だった。今年は全国的にも熊の出没で騒がしい年だが、私の住む長井市でも最近出没事件が相次いでいた。それが今日の遭難騒ぎで、朝日連峰に住む多くのツキノワグマ達もさぞや驚いて肝を冷やしていることだろう。これが契機となって少し熊騒動も治まってくれれば安心なのだが。赤鼻尾根をめざして急坂を下っていると、静かな山中に鈴の音だけが大きく響き渡った。

 樹林帯に入るまでは頭上から残暑を思わせるほどの日差しが降り注ぎ、今日は久しぶりに日焼けを心配しなければならないようだった。また祝瓶山の東斜面は草紅葉に覆われていて、あらゆる草木や灌木類が眩しいほどに色付いている。どこを見渡しても見飽きることがない風景が広がっていた。

 樹林帯に入ってしばらくすると最低鞍部となり、そこからひと登りすると赤鼻のピークに着く。ここからは急坂をひと下りすれば色付き始めたブナ林のなだらかな尾根へと変わり、その彩りを楽しんでいるとたちまちアカハナ沢とヌルミ沢の合流点だ。合流点から祝瓶山荘まではまもなくだった。


祝瓶山を仰ぐ


秋空と山頂部


山頂と大朝日岳


山頂と雲海


鈴振尾根


祝瓶山荘


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