山 行 記 録

【平成22年10月2日/泡滝ダム〜大鳥小屋〜オツボ峰〜以東岳〜三角池



錦秋の以東岳と大鳥池



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】以東岳1,771m
【地形図】(2.5万)大鳥池(20万)村上
【天候】晴れ
【参考タイム】
泡滝ダム(508m)5:00〜冷水沢吊橋5:50〜七ツ滝沢吊橋6:10〜大鳥小屋7:00-7:30〜三角峰8:50〜オツボ峰9:20-9:40〜以東岳10:30-10:40〜以東小屋〜東沢11:50〜大鳥小屋12:20-13:30(三角池往復)〜〜泡滝ダム15:40
  
【概要】
 この時期、早朝5時というとまだまだ暗くて、ヘッデンをつけて泡滝ダムを歩き出した。30分ほどすると白々と夜が明けはじめ、周囲の景色がようやくわかるまでになった。七曲がりまでは平坦な道が続くのでしばらくの辛抱が必要だった。歩いている人は一人もなく、当然ながら下ってくる人もいない。道は大鳥川に沿って続いており、この平坦路が終わればいよいよ七曲がりの急坂となる。ここは急登にもかかわらず気温は意外と低いので、汗はそれほど流れないが水場が現れるたびに喉を潤した。

 大鳥小屋も人影はなくひっそりとしていた。早朝の大鳥池というのも雰囲気があっていいものだった。朝日が差し始めた以東岳の山肌は、逆光になっていささかまぶしく、手をかざすとはるか高みに以東小屋を仰ぎ見ることができた。紅葉にはまだ早いようだったが、大鳥池はさざ波もたたず、湖面には周囲の山並みをくっきりと写していた。その様子はまるで鏡を見ているかのようで、透明でそして静謐な趣はいくら見ていても飽きなかった。このような穏やかな湖面を見るのは初めてのような気がした。

 以東岳までは直登コースが手軽に、そして短時間に登れるのだが、時間もまだ早いので、30分ほど休憩をとってからオツボ峰コースをとることにした。このルートも最初は急坂の連続だ。まだ青々とした灌木帯やブナ林を抜けると急に勾配が緩やかになり、ここからオツボ峰までは優雅で緩やかな起伏が続くところだ。いつきてもここは牧歌的な雰囲気に包まれており、北側には月山や鳥海山のすっきりとした姿があって僕のお気に入りの区間でもある。三角峰はというとすでに十分なほどに色づいており、秋の澄みきった青空、そして心地よい涼風とあいまって、以東岳周辺では1年で一番華やかな季節を迎えているようだった。

 オツボ峰からは少し険しいような稜線歩きが続く。地形図では短い距離だがここは小1時間ほどはかかるので、一つ一つのピークを慎重に超えてゆく。眼下には青空を映した大鳥池があり、登山道の周りは錦秋の彩りに包まれていて、今日は実に快適な稜線歩きだった。

 以東岳には大鳥小屋からちょうど3時間で到着した。まだ誰も登山者はなく、縦走路上をながめても人の気配はなかった。それにしても今日の好天はどうだろう。空を見上げても雲ひとつ見あたらないのだ。風はあっても、それは爽やかなばかりであり、気温は暑くもなく寒くもない。つい先日までの猛暑日が今では信じられないほどであった。紅葉はちょうど山頂と稜線付近が盛りだったが、すこし標高が下がると色づきはいささかも見られない。これは単純に気温の違いからくるものなのだろうと思った。

 以東岳から下るところでようやく登山者に会うことができた。新潟からの人で今日は狐穴泊まりなのだという。僕と同じように泡滝ダムを出発し、以東岳までは直登コースを登ってきたらしかった。以東小屋を過ぎると単独の登山者とまた行き交った。今日出会ったのはこの二人だけで、不思議だったが登山者の極端に少ない一日だった。

 さて、直登コースを下る所要時間は意外と短い。大鳥池が徐々に大きくなるとまもなく樹林帯に入り池は視界から消える。そして急坂を一気に下れば東沢の川原に降り立った。池は渇水時期なのか川原の部分が広がり、いつもは流れがあるところにも水はほとんどなかった。ここから池を半周してゆけば大鳥小屋まで約50分ほどだ。のんびりと歩いてきたためか足の疲れもほとんど感じない。これならば少し寄り道してゆこうかという気分になり、大鳥小屋に戻ったところで、以前から気になっていた三角池まで往復してくることにした。大鳥小屋では大勢の登山者が休憩中だったが、のんびりしている様子をみると、みんな大鳥小屋の宿泊者のようだった。

 三角池への登山口は大鳥小屋と大鳥池の間に標識が立っていた。管理人には三角池までは片道25分程度だといわれたのだが休まず歩いたせいもあるのだろう。およそ15分ほどで着いてしまった。三角池はブナ林の奥まったところにひっそりと佇み、池から先は行き止まりになっていた。三角池はこじんまりとした池塘のようなものを想像していたのだが、実際は写真にも入りきらないほど広いものだった。人の気配は微塵もなく、薄暗くなればちょっと恐いような気もするところだった。

 往復1時間もかからない寄り道だったが、大鳥小屋へと戻ったときには体は結構疲れを感じていた。いつのまにか木立の影は長く伸び、陽は大きく西に傾き始めていた。少し一休みでもすれば良かったのだろうが、こんな様子を見ていると帰りの時間も気になりだしはじめてしまい、結局、休憩をとらずにそのまま歩き続けてしまった。自分の体力も顧みずに歩き続けて疲れもピークに達していたのだろう。両足の感覚は麻痺しているようでもあり、僕は狭い山道を半分もつれるようにしながら泡滝ダムへと下った。



鏡のような大鳥池


三角峰と水場の標識


紅葉が真っ盛りのオツボ峰付近です


以東岳と以東小屋が近づいてきました


爽やかな秋晴れの以東岳山頂


メルヘンを思わせるような以東小屋です


以東岳と以東小屋を振り返る


大鳥池が近くなって


ひっそりと佇む三角池


日が傾きはじめた大鳥小屋


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