【概要】
今日は昼頃までは下山しなければならないので、古寺鉱泉から鳥原山に登ることにした。このコースは比較的距離も短く、最近の夏バテ気味の疲れきった体調の自分にとってはちょうど相応しい気がした。早朝の古寺鉱泉駐車場にはまだ車が3台程度と信じられないほどの少なさだった。まだ時間的には早いのか、それとも人気ある登山口とはいえ、このところの暑さで敬遠され気味なのだろうか。
めずらしく自宅を早くでたおかげで、久しぶりに味わう山の空気が清々しかった。この夏は記録的な猛暑が続いているが、今日もまた暑くなる予報がでている。しかし、吹き渡る風は秋の香りがするようでもあり、日の光も先日までの猛々しさとは違って、どこか柔らかさが感じられるようだった。
ブナ峠分岐付近では強い日射しが降り注ぐようになったものの、それは一時的で、ブナ林に入ると再びひんやりした空気に包まれた。田代清水で遅い朝食を腹に入れて再び登り始めると徐々に急坂となる。この急坂を登ればそこはもう鳥原湿原だ。
鳥原湿原はすでに森林限界を超えており、いつのまにか日射しも戻り、真夏のような暑さが襲って来そうだった。ここからは日除けは必携といえそうだった。この時期は端境期で、高山植物は極端に少なかったが、それでもイワショウブとウメバチソウが湿原に彩りを添えている。さらに鳥原山へと続く階段の両側にはオヤマリンドウがびっしりと咲いていた。このオヤマリンドウは濃紫色がほとんどだが、中には白い花もあってなかなか楽しい。そんなリンドウを愛でながら進み、目の前のこんもりとした高みに登れば、そこはもう鳥原山だ。その最奥まで進むと鳥原展望台に着く。
今日は鳥原山から眺める大朝日岳が楽しみだったが、あいにく山頂付近は雲に隠れて見えなかった。登山者の姿も今日は一向に見当たらない。小朝日岳から古寺山の稜線を見渡しても人影はなかった。
のんびりと歩いてきたとはいえ、背中は汗でびっしょりと濡れていた。一休みしている間にも乾けばと、濡れたタオルやTシャツをハイマツに引っかけておいた。しかし、人の気配が全然ないというのも不思議な気がした。この時期はいつもこのコースを登っており、いつのまにか定番のようになってしまったが、こんな静かな朝日連峰もめずらしかった。僕はアイスボックスをザックから取り出し、冷えたポカリスエットを一気に飲み干した。猛暑のような日射しに晒される前に急いで山から下りなければと思いながらも、もう少し待てば大朝日岳の雲が取れるかも知れないと思うとなかなか腰を上げられないでいた。
朝の古寺鉱泉 |
イワショウブ(鳥原湿原) |
白いオヤマリンドウ(鳥原湿原) |
ウメバチソウ(鳥原湿原) |