山 行 記 録

【平成22年7月17日/姥沢小屋から月山】



姥ケ岳(左)を仰ぐ



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】月山 1984m
【地形図】(2.5万)月山、(20万)村上
【天候】晴れ後雨
【温泉】西川町水沢温泉館(道の駅)300円
【参考タイム】駐車場9:15〜姥沢小屋9:23〜雄宝清水9:35〜合流点分岐10:30〜牛首10:55〜月山12:00-12:15〜合流点分岐12:48〜姥沢小屋13:32〜駐車場13:41

【概要】
 海の日の3連休初日。梅雨明けが間近いのか相変わらず不安定な天候が続いている。置賜地方は朝から曇り空のため、山行きをどうしようか逡巡しているうちに時間はたちまち過ぎていった。久しぶりに月山のお花畑でもでも見に行こうかと姥沢に向かう。できればクロユリに出会いたいのだが。

 心配していた天候だったが、大江町にはいると雲はすっかりなくなってしまい、青空と残雪の美しい月山が正面に現れる。この光景を見て少々の暑さぐらいは我慢しようかという気分になった。姥沢駐車場は全国各地から集まった多くのマイカーで埋まっていた。まさに満車状態で駐車場の隅々まで埋め尽くされていた。この時期は夏スキーを楽しむ人たちも多く、いつにも増して今年の月山は喧噪を極めているようだった。

 月山はリフトを使えば楽々1500mへとあがれるのでファミリーハイキングには最適だ。以前は家族とよく登っていたのものだが今日は同行者もいない。姥沢口から夏山を単独で登るのはもしかしたら初めてなのかもしれない。せっかくの機会なので、今回はリフトを使わず姥沢小屋から登ってみることにした。このルートは山スキーの下りの際によく利用しているものだ。姥沢小屋へはリフト乗り場の手前から姥沢に架かる橋を渡ってゆく。玄関前を進むと登山道を示す標識があり、裏手に回るとすぐに鬱蒼としたブナ林となった。

 木陰がある内はそれほどではなかったのだが、まもなく灌木帯となり頭上を遮るものがなくなると、たちまち体力が奪われそうなほどの日差しが降り注いだ。こんなことなら、もっと早く家を出ればよいのにと思うのだが後の祭りである。登山道は木道や石畳で整備されていて歩きやすかった。途中で「雄宝清水」という水場がある。雪解け水でもあるのだろう。切れそうなほどの冷たい水で飲んでみるとたまらなく美味しい。今の時期だけかもしれなかったが、融雪水はどこでもとれそうなので水場の心配はなさそうだった。また近くには野いちごがたくさんあって手当たり次第に食べてみる。この野いちごはノウゴウイチゴといって、果実は本当に小さいもののだが、疲れた体には十分すぎるほどのエネルギー源となる。

 まもなく左手に見覚えのある姥ケ岳が現れ、そして紫灯森へ続く稜線が見えてくると視界が急に開けてくる。まるで梅雨が開けたことを伺わせるような青空が広がっていた。このコースはちょうどカール状になった沢底のようなところを歩くので、リフトから降りた登山者を仰ぎ見るような具合になる。姥ケ岳に登る人もいるようだったが、リフトを降りてから沢底コースを歩く人も多く、その人達とはまもなく牛首直下で合流する。出羽三山巡りの白装束の人たちやガイドによるツアー客もいて、登山者達は列をなして次々とやってきた。

 リフト上駅から下りてくる道と合流すると雪渓が間近となった。この残雪のおかげもあって、ようやく涼風が流れるようになり安堵感に浸った。この心地よさがよくて今日は登ってきたのだという気持ちにさえなる。また、広々とした草原にはいろんな高山植物が咲いていた。一番多いのはチングルマとコイワカガミだが、ほかにはショウジョウバカマやミヤマキンバイ、イワイチョウ、アオノツガザクラなどが目立つ。

 牛首の雪渓では大勢の小中学生が夏スキーを楽しんでいた。ポールを立てているので、スキーは単なる遊びではなく、レースのための練習会のようである。その光景はまるで夏山と冬山が混在しているようでもあった。また雪渓には登山者の滑落防止のためにロープが張られていた。この頃になるとガスが覆い始めてしまい、山頂付近が見えなくなっていた。

 鍛冶小屋跡までは結構勾配のきつい岩場の斜面となった。僕は花の写真撮影を兼ねながらゆっくりと登った。登山道にはハクサンフウロ、ニッコウキスゲ、ヨツバシオガマ、ミヤマウスユキソウ、ミヤマリンドウ、ヒナザクラ、モミジカラマツなどの花々が多くなる。この可憐な花々は登山道の両側にとぎれることもなく咲いていて、月山はまさしく花の宝庫なのだとあらためて思った。しかし、楽しみにしていたクロユリは残念ながら見つけることができなかった。

 月山山頂には3時間弱で到着した。ここでも大勢の人たちで溢れていて、大半の人たちは昼食兼休憩をとっているところだった。濃霧は相変わらずだったが時々ガスが晴れるときもある。しかし、天候は下り坂なのだろう。朝方のような青空はなくなっていた。

 久しぶりに登ってきた山頂でもありのんびりとしたかったが、夕方には雷雨の予報もでている。何もない稜線上での雷はさすがに恐いので、昼食を終えると早々に下山することにした。午後からも次々と登山者は登ってくるようだ。眺めていると今年は特に若い女性が多いのを感じた。

 雨は牛首を過ぎる頃からポツリポツリと落ちてきた。そして姥沢小屋とリフト乗り場への分岐を過ぎると頻繁に雷鳴が轟き始めるようになる。雷鳴は止むこともなく、時間が経つにつれてますます激しさを増してゆくようだった。僕はこの頃から小走りに下っていたのだが、ついにこらえきれなくなったのか、樹林帯に入る寸前で本格的に雨が降り出してしまった。それはたちまち豪雨の様相を呈してくる。辺り一帯は夕暮れのような薄暗さに包まれていた。僕は急いで雨具を着て急場をしのぐことにしたのだが、あっという間のできごとであり、すでに体はかなり濡れてしまっていた。大量の汗もかいていたので、雨具はあってもなくてもよかったのだが、全身ずぶ濡れよりはましだろうと完全武装に切り替えた。

 しばらく雨の中をひたすら下っていると、突然、青空が広がり始めた。今度はこれまで以上の日差しがジリジリと頭上から降り注ぎ始めたのである。ちょうど姥沢小屋までは残り4、5分という地点だったが、蒸し暑さに耐えきれず雨具を全て脱いだ。今日は天候が目まぐるしく変わった一日だった。雨雲はいつのまにか早々と西川町の方へと去ってしまっていた。振り返ると月山が青空とともに再び姿を現しているのが見えた。


姥沢小屋の玄関


ノウゴウイチゴ


ミヤマキンバイ


チングルマとコイワカガミ


ニッコウキスゲと遠方は牛首付近


アオノツガザクラ


右はリフト乗り場、左は姥沢小屋への分岐


牛首の雪渓を登る


ヒナザクラ


ベニバナイチゴの花


モミジカラマツ


ハクサンフウロ


ミヤマリンドウ


ミヤマウスユキソウ


月山


牛首


inserted by FC2 system