山 行 記 録

【平成22年7月11日/古寺鉱泉から大朝日岳



ヒメサユリと大朝日岳



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】古寺山1,501m、小朝日岳1647m、大朝日岳1870.3mm
【地形図】(2.5万)朝日岳、(20万)村上
【天候】曇り
【温泉】白鷹町 鷹野湯温泉「パレス松風」300円
【参考タイム】
古寺鉱泉5:50〜一服清水7:40〜古寺山8:00〜巻道分岐8:23〜小朝日岳8:35〜巻道分岐8:52〜大朝日岳10:10-10:30発〜巻道分岐11:24〜巻道分岐11:38〜古寺山11:52〜古寺鉱泉13:30

【概要】
 このところ局地的な大雨が降り続いている。梅雨らしいといえばそのとおりなのだが、朝のうちは晴れていても、午後になれば決まって激しい雷雨になるというパターンの繰り返しである。最近の天気予報ほどあてにはならないものはない。今日も予報では午後から下り坂というのが気がかりだったが昨日のようなゲリラ豪雨よりはましだろう。ヒメサユリの群落を見たくて、久しぶりに大朝日岳を登ってみることにした。

 早めに自宅を出たまではよかった。しかし、例によって古寺鉱泉の出発は6時になってしまい早くも強い日差しが降り注いでいた。この日差しもあくまで朝の内だろうと思うと、今日の行程を考えれば、天候が持つかどうかはぎりぎりの時間なのかもしれなかった。古寺鉱泉はまだ早朝というのに駐車場がすでに満杯状態。まあ、時期的には夏山シーズンに入っていることを思えばしかたがないか。休日の1000円高速を利用してなのだろう。車のナンバーも様々で、全国各地からの登山者が多いようだった。

 前日には相当雨が降った様子で、登山道は結構濡れていた。また温泉前を流れる古寺川の水かさも多く、いつにも増して流れの音が大きかった。ひと登りで尾根に出るとますます日差しが強くなり、全身から汗が噴き出した。最近の不摂生がたたっていて体は異様なほどに重く、なんとなく先行きが不安になるようだった。

 弘法清水まで登ったところでようやく一息をつく。乾いたノドを潤すと熱くなっていた体が冷えてゆくのがわかった。ハナヌキ峰分岐からは登りいっそうとなる。早くも下山してくる人がいるので、道をあけて待っているとどこかで見覚えがある人だった。すれ違うときにようやく思い出した。山スキーで何回か一緒だった川口さんだった。まだ7時を過ぎたばかりだったが、今日はこれから仕事があるとかで、立ち話を終えると駆け足で下っていった。それにしても川口さんはあいかわらず体力もあり健脚である。いつかは飯豊か朝日で一緒になるような気がしていたが、まさかこんなに早く出会えるとは思っていなかっただけにうれしい出会いだった。

 三沢清水からはさらに急坂となり、樹林帯を抜け出すと古寺山から派生する尾根に出た。遠方に大朝日岳から西朝日岳が望めるところで、このコースでも特に好きなところだ。振り返ると月山が見えるうえに見晴らしが急によくなるのである。このあたりから登山道には鮮やかな高山植物がちらほらとあらわれる。古寺山まではまもなくだった。

 古寺山から小朝日岳まではまだ残雪が多くいささか驚いた。一部分とはいえまだ夏道も隠れている箇所があるのである。先日の飯豊と同様に今年はどこも雪解けが遅いようだ。小朝日岳が近づくにつれて、ヒメサユリが目立って多くなった。鮮やかなピンクもあれば淡いものもある。今年はもう散り始めたのだろうかと思っていただけにこのヒメサユリの群落は無性にうれしい。今日の目的の大半はこのヒメサユリなのである。

 小朝日岳の巻道分岐付近も一面雪渓に覆われていた。少少疲れ気味のため久しぶりに巻道を行こうかと思ったが、まだ余力のあるうちに小朝日岳に登っておこうかと直登コースを進んだ。小朝日岳山頂では秋田からきたという二人連れがいるだけだった。ここまで小屋泊まりの登山者が数名下っていったが、今日はほとんど日帰りの人達のようだ。写真を数枚撮って熊越へと向かった。

 熊越からはさらにヒメサユリが多くなり、ほとんどオンパレードという感じで咲き乱れている。このヒメサユリロードは銀玉水まで延々と続いていた。もちろん、他にも数え切れないほどの高山植物が咲いている。例えば、シラネアオイ、イワハゼ、ミツバオウレン、イワカガミ、ハクサンチドリ、サラサドウタン、ウラジロヨウラク、ノウゴウイチゴ、マイズルソウと枚挙にいとまがない。さらにはアヅマシャクナゲもまだ蕾が多く、今の時期が盛りなのである。夏の花の代名詞ともいえるニッコウキスゲも部分的に咲いているが、こちらはまだこれからが本番のようだった。写真を撮っていると大朝日小屋管理人の佐藤さんが下っていった。

 銀玉水から大朝日岳まではひと登りだ。前方に避難小屋が見えると風が急に冷たく感じるようになった。中岳との間の西斜面にはまだ大量の雪が残っていた。この付近からはまた植生が変わり、ミヤマウスユキソウが一面となる。よく見ればヨツバシオガマやミヤマリンドウも咲いている。避難小屋前では鮮やかなハクサンフウロが目立った。この時期の朝日連峰はずいぶんと花が多いなあとあらためて思った。避難小屋では登山者数名のほか、管理人の大場さんがなにか後片付けのようなことをしていた。

 大朝日岳山頂到着は10時10分。ほとんど休みを取らなかったというのに4時間20分かかっていた。ふと気付けば雲行きが少しずつ怪しくなり始めている。祝瓶山がまだかすかにわかるものの、遠方の山並みはすでに薄雲に見えなくなっていた。とはいえ、久しぶりの大朝日岳である。眺める景色は文句無しで、残雪と新緑の織りなす景観は、まさしく夏山の風物詩を感じさせた。

 山頂でコンビニのおにぎりを食べていると、またまた意外な人から声をかけられた。振り返ると先日のホン石転ビ沢でも出会った新潟の田中さんだった。昨日はカクナラ小屋泊まりだったらしいのだが、出会わないときは何年も会えないのに、会うときにはこうして立て続けに出会えるものなのだと、人との不思議な縁を感じた。

 久しぶりの大朝日岳山頂なのでのんびりとしよう思っていたのだが、天候が下り坂なのは確実なのでそうそうゆっくりする時間はなさそうだ。つい数分前までは肌寒いほどの風が吹いていたのだが、いつのまにか生暖かい風に変わっている。天候の悪化の兆しは早くも現れ始めているようだった。僕は広げていた荷物を早々に片付けて下山を開始した。

 下りは特に息が乱れることもなく、ほとんど休まずに歩き続けた。途中で銀玉水に立ち寄ってみた。まるで上水道のように整備されてしまい、少し違和感があるものの、水は切れそうなほどの冷たさとまろやかさがあり、この銀玉水はやはり朝日連峰随一の清水だとあらためて思った。稜線から樹林帯にはいると今度は山岳会の志田さんと出会った。軽装の様子をみると、僕と同じように大朝日岳の日帰りらしかった。振り返れば大朝日岳の山頂は雲に隠れてすでに見えなくなっていた。

 熊越からは久しぶりに小朝日岳の巻道を通ってみることにした。両足はかなりの疲労感を感じていたので、もう登れそうもないというのが正直なところだった。熊越からだと緩やかな登りなのだが、それでも小朝日岳を経由するよりはずっと早い。古寺山側に出ると団体の登山者が大勢休んでいた。この人たちはこれから小朝日岳に向かうところらしかったが随分とのんびりとしている様子だ。このころから空模様はいよいよ怪しくなり始めていた。

 雨は三沢清水を通過する辺りからポツポツと降り出してきた。しかし、シャツやズボンはどうせ汗で濡れてもおり、雨具までは必要なさそうだった。また考えようだが熱中症を心配するよりも、雨の方が暑くない分だけずっとありがたいのも事実だった。

 下界ではまだ雨が降っていないのだろうか。これから日帰りで登ってゆく人もいて、途中何人かの登山者と出会った。弘法清水まで下れば古寺鉱泉も近い。ここでは最後まで残っていた行動食を食べながら疲れた足をしばし休めた。膝が少し痛みを感じているのも気にかかっていた。あまり急いで下りすぎたのかも知れなかった。休んでいると山頂付近ですれ違った人達が次々と通り過ぎてゆく。今日はいつもよりもだいぶ疲れていて、体力の衰えを思わずにはいられなかった。



ミツバオウレン(古寺山)


ヒメサユリ(小朝日岳)


ノウゴウイチゴ(熊越)


不明(熊越)


ミヤマクルマバナ(熊越)


熊越から小朝日岳(熊越)


イワハゼ(稜線上)


マルバシモツケ(稜線上)


ハクサンボウフウ(稜線上)


ミヤマウスユキソウと中岳


ヨツバシオガマ(銀玉水上部)


ミヤマリンドウ(小屋前)


ゴゼンタチバナ(銀玉水上部)


チシマギキョウと中岳


ムカゴトラノオ(小屋前)


ハクサンフウロ(小屋前)


サラサドウダン(小屋前)


オノエラン(小屋前)


チングルマ(小屋周辺)


アヅマシャクナゲ(蕾)


アヅマシャクナゲ(小屋周辺)


シロバナクモマニガナ(小屋周辺)


ミヤマキンバイ(銀玉水)


ニッコウキスゲと御影森山


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