山 行 記 録

【平成22年6月6日/百宅口〜鳥海山】



大清水園地から仰ぐ早朝の鳥海山



【メンバー】西川山岳会10名(柴田、上野、荒谷、神田、菊池、大場、大江、駒沢、鳴海、蒲生)
【山行形態】山スキー、春山装備、前日、大清水避難小屋に宿泊(※山行は日帰り)
【山域】鳥海山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)
【地形図】(2.5万)鳥海山、(20万)仙台
【天候】晴れ
【参考タイム】
大清水山荘7:30(838m)〜タッチラ坂〜1700m地点10:30-11:00〜七高山12:00-13:00〜大清水山荘15:15
  
【概要】
 板洗いとしては定番コースとなった感のある百宅口からの鳥海山である。今回も前日から大清水避難小屋に宿泊し、今シーズンの反省会を兼ねての山行となった。前日の夕方、百宅口の駐車場につくと、すでに多くの車が停まっていた。八戸ナンバーが数台と東京からの車が数台。今年も多くの人たちがこの鳥海山にやってきているようだった。

 さっそくシュラフを携えて大清水避難小屋に入ってみると、中では多くの仲間達が宴会に盛り上がっていた。数えてみると全部で8名もいる。今年は歩きで参加の駒沢さんもいて、今晩の料理長は食べる人よりも多いくらいである。缶ビールやウイスキーの瓶がそこらじゅうにゴロゴロしていて、みんなできあがっているようだった。神田さんや荒谷さんが近くで収穫したという豊富な山菜は、天麩羅を手始めに様々に調理されて目の前のテーブルに並べられている。また上野さんが例によって釣り上げたというイワナはすでにさばかれてしまい、刺身や骨酒へと変身していた。柴田さんは仕事が終わってからやってきたとかで、夜10時頃小屋に入ってきた。これで全員集合となったのだが、その時僕はすでに酔いつぶれておりシュラフの中に入っていた。その後も宴会は時間を忘れて深夜まで続いたらしく、話し声や笑い声が絶えなかった。

 この時期の大清水園地は雪もすっかり融けてしまい、湿地帯にはミズバショウが咲き、周囲のブナ林は瑞々しい新緑に包まれていた。我々はいつものとおり大清水避難小屋泊だったが、隣の大清水山荘には八戸からきた7、8人のパーティが前日から泊まっているようだった。八戸組は早朝6時に小屋を出て行ったが、こちらの予定は8時。天候の心配もないのでのんびりと朝食を食べてから大清水園地を出発した。

 いつものように新緑のブナ林の中、スキーを担いで尾根に取り付く。少しの残雪を踏んだ後はしばらく夏道が続いた。尾根道ではミネザクラがようやく芽吹いたばかりで、花見のシーズンはまだこれからのようである。下界はすでに初夏の彩りにおおわれているが、この鳥海山では長く厳しい冬がようやく終わろうとしているようだった。

 大倉の滝見場を超えるとタッチラ坂となる。今回はこの付近からシール登行が可能だった。雪さえあればシールのおかげでどんどんと高度を稼いでゆけるので、この長い百宅コースもずいぶんと楽になる。途中で何カ所かヤブをこぎながら雪をつないでゆくと広大な雪原が目前となる。

 小屋の周辺は全く雪はないというので、僕たちは唐獅子小屋には立ち寄らずに大きく右手の斜面を迂回した。気温はどんどんと上昇しているらしく、降り注ぐ日射しはすでに真夏を感じさせた。トップは疲れ知らずなのか、ほとんど休まないので、僕の両足はかなり疲れていた。小屋とほぼ同地点まで上がったところで腰を下ろして大休止だ。見上げると時々雲に隠れながらも外輪山が見え隠れしている。山頂まではもうひと登りのようであった。

 休憩地点からの高度差は約500m。まあ1時間程度だろうとぐいぐいと登ってゆく。すると高度感が一気に増してきて、周りを見渡すと雲海が広がっている。僕たちはいつのまにか雲の上に飛び出していた。昨年は濃霧に遮られて山頂を断念しただけに今年の天候には感謝しなければならないようだ。雲海の彼方には月山もぼっかりと雲に浮かんで見えた。

 七高山の山頂には休憩地点からちょうど1時間で到着した。後続のメンバーも次々と登ってくる。祓川からの登山者やスキーヤーもいて山頂は結構な賑わいを見せている。風は冷たかったが外輪山の裏手に回ると全然風はなくり、休憩はここでしようかということになる。大物忌神社もすっかり雪解けが進み、夏山開きが近いのを感じさせる。千蛇谷にはまだ雪渓は残っていて、鉾立から登ってきたらしい登山者が、まだ残雪の多い新山を往復しているのが見えた。

 七高山の山頂からは斜度はあるものの快適なゲレンデが広がっていた。しかし、コンディションが良いのもわずかだった。スプーンカットはないものの、波打つような雪面が続くようになると閉口するばかりだった。一方、洗濯板のような縦溝をなぞるようにしながら滑って行くのも春スキーならではといえなくもない。この時期は雪があるだけ感謝しなければならないのかもしれなかった。標高1400m地点のダケカンバ帯は水場もあって下りでの唯一の小休止場所となっている。冷たい雪解け水は切れるような冷たさで、それは乾ききった体の隅々まで沁みてゆくようだった。ノドを潤した後はここでもまた横になったりしながらのんびりとした時間を過ごした。今日は今シーズン最後の滑降とあってかみんなの表情にも何となく憂いが漂っているようであった。

 水場から再び滑り出した際に鳴海さんが足をひねるというアクシデントが発生した。すでに滑り始めていた我々に無線が飛び込んだときには一瞬どきっとしたのだが、幸いにも歩くには支障がないらしく、途中から駒沢さんと一緒に下ることになった。といっても我々もスキーで下れる区間は残りわずかしかない。水場からはほどなくしてタッチラ坂の下部に到着した。ここは朝方シールを張った場所でもあった。柴田氏と上野氏は滑れるだけ滑ろうとばかり、沢沿いに下っていったが、僕たちは安全を優先して夏道を下ることにした。さすがに夏道を歩いていると汗が噴き出してきたが、まもなくすると大清水山荘が近づいてくる。最後は新緑のシャワーを浴びながらブナ林を通過して、ミズバショウの広がる大清水園地へと降りて行った。まもなくすると沢沿いに下っていた柴田さん達や、歩きの駒沢さん達も次々と小屋に降り立ち、全員無事に下山となった。そして小屋前の沢水でいつものようにスキーを洗い、今シーズンの板洗いが完了した。


百宅口登山口


宴会がたけなわの頃


日没 鳥海山


避難小屋を出発


登り始め


七高山で


山頂目前


山頂到着


水場でのんびりと


お疲れさまでした

※上野さん撮影分も多数含まれています

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