山 行 記 録

【平成22年5月30日/石転ビ沢〜梅花皮荘〜梅花皮岳〜ホン石転ビ沢〜石転ビ沢



温身平から石転ビ沢を見上げる



【メンバー】9名(柴田、上野、大場、菊池、大江、鳴海、蒲生)+ゲスト(阿部兄、丹野)
【山行形態】山スキー、春山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】梅花皮岳 2000.0m
【地形図】(2.5万)長者原、飯豊山(20万)新潟
【天候】曇り時々晴れ
【参考タイム】(私個人のものです)
飯豊山荘7:20〜地竹原8:35〜石転ビノ出合9:20〜梅花皮小屋11:50-12:30〜梅花皮岳13:00〜ホン石転ビノ出合〜地竹原〜飯豊山荘駐車場16:00  
【概要】
 今日は朝寝坊から始まった。飯豊山荘出発が6時というのに、自宅で目を覚ましたのがすでに6時直前だったのである。これでは間に合うはずもなく、一人旅を覚悟で飯豊山荘へと向かった。飯豊連峰の山スキーは2週間前、飯豊本山からおむろノ沢をやっているので、今シーズン2回目となる。一方、石転ビ沢は一昨年の北股沢以来だから2年ぶりだ。いずれにしろこの時期になると山スキーのエリアも限られてくるのは確かであり、県内では飯豊連峰や鳥海山ぐらいだろうか。

 飯豊山荘では多くの登山者でいっぱいだった。というより半数以上は山スキーのようだ。僕と同時に出発したのが10名ほどいて、今日の石転ビ沢は大賑わいのようである。温身平はブナの新緑がまぶしくすっかり初夏の装いを見せていた。雪が融けだしたところではカタクリやキクザキイチリンソウなどが咲き始めている。一方ではフキノトウやサンカヨウなども目についた。

 砂防ダムをすぎたあたりで無線を飛ばしてみると柴田さんから応答があった。みんなは幻の大滝付近で休憩中らしく、また今日の総勢は8名だという。すると僕を入れると9名にもなるのかといささか驚いた。

 スキーを担ぎながらの夏道歩きは結構つらいものがある。当然ながら汗がじっとりと背中から流れた。「うまい水」を手にすくい取り、渇いたのどを潤すと体の隅々まで沁みてゆくようだった。しばらくすると眼下に雪渓が現れるがまだまだ雪上歩きとはゆかない。ようやく雪渓にあがれるようになったのは地竹原付近からだった。さっそくシールを貼り、石転ビノ出合をめざしてゆく。付近には長靴や登山靴をビニール袋にいれたものが多数デポしてあった。みんなスキー靴をはいての夏道あるきはつらいのだろうと思った。

 今日の石転ビ沢は予想に反して曇り空だった。暑くないだけましというものだが晴天を期待したのに少しがっかりだった。出発時間が遅かったこともあって石転ビ沢はいたって静かな雰囲気に満ちていた。前後には一人、二人が見えるだけで登山者は数えるほどだ。滝沢出合を過ぎ、梶川の出合と順調に登って行くとまもなく石転ビノ出合に到着した。右手は門内沢、左手は石転ビ沢である。どちらも残雪は豊富で、さらに雪面が黒く汚れていないのが意外だった。そしてスプーンカットはもちろんだが縦溝もなく雪面はきわめてフラットだった。スキーを楽しむには絶好のコンディションに見えた。それにデブリが少なく落石もいつもよりはるかに少ないようだ。こんな年はめずらしいのかもしれない。石転ビノ出合から見上げると石転ビ沢には数え切れないほどの登山者やスキーヤーが張り付いていた。人は小さすぎて、ごま粒ほどの大きさにしか見えないが、全部で20名以上はいるようだ。白い雪渓、そして新緑のコントラストが鮮やかだった。

 本石転ビ沢を過ぎると斜度が徐々に増して行く。北股沢出合でようやく菊池氏に追い付くことができた。菊池氏は久しぶりの山スキーとあって少し疲れ気味のようだ。かくいう僕も足がつりそうなほどに疲労困憊だった。お互いに一休みしているとは早くも北股岳に登りきった阿部さんが北俣沢を一本滑ってくるという無線が飛び込んできた。せっかくの機会なので写真を撮影しようと待っていたのだが、北股沢は見る間にガスに包まれていった。コースそのものも長いせいなのだろう。なかなか阿部さんの姿が見えず、対岸でカメラを構えて居たのだが、気づいた時にはいつのまにか出合まで滑り降りていた。

 僕は北俣沢出合からスキーアイゼンを装着し、疲れた足をダマシながら急坂を登ってゆく。スキーアイゼンさえつければシール登行に問題はなかった。雪はまだまだ柔らかいのでこの斜面を滑るのは快適だろうと思った。急斜面の中間地点で今度は鳴海さんに追いついた。彼ものんびりと登っているので先をゆかせてもらった。最後の急坂となり、一気に登ってゆくと前方にようやく梅花皮小屋が見えてくる。こうしてみると今年は雪が少ないのだが、以外と残雪は豊富だった。これは4月から5月上旬にかけての寒気と積雪が影響しているのだろう。おかげで例年よりもずっと雪が多くあるように見えた。

 梅花皮小屋では早めに到着したメンバーが迎えてくれた。みんなは1時間近くも前に到着して待ちくたびれているらしかった。僕も昼食を食べながらそそくさと休憩を楽しむ。小屋の周囲でも多くのスキーヤーが休んでいた。小屋番もいるらしかったがよくわからない。そんなとき、高知山から二王子山のスキーツアーでお世話になった新潟の田中さんから声をかけられてびっくりする。なにしろこの再会は10年ぶりくらいなのである。聞いてみると今日の山スキーは新潟からの人たちもだいぶ多いそうだ。久しぶりの再会に思わず心がはずむようだった。

 そんなことをしていると再度石転ビ沢を登り返してきた阿部さんが早くも小屋まで上がってきた。さすがに若いなあとみんなが唖然としている。そして遅れていた鳴海さんや菊池さんもつぎつぎと到着して全員集合となった。といってもゲスト参加の丹野さんは門内沢を滑るのだといって一足先に門内岳にむかっていったらしく小屋にはいなかった。そして鳴海さんと菊池さんは石転ビ沢を滑るからと、ホン石転ビノ出合で再び落ち合うことになり、ここでいったん分かれることにした。

 梅花皮岳までは再びスキーを担いだ。わずかな距離だが高度差にして160mほどはあるので、疲れた体にとっては結構きつい登りだった。山頂手前まで登れればホン石転ビ沢が目前となる。そこから見るとホン石転ビ沢はとてつもない急斜面だった。山頂からはまるで垂直のような斜面が下流へと切れ落ちているのである。こんなところはとても滑れないだろうと思った。

 とりあえずは梅花皮岳の山頂で記念写真だ。ここまではみんな生きていたという証拠写真となるものだ。まずは50度以上もありそうな最初の出だしだけは横滑りでしのぐしかなさそうだった。動画撮影をするために僕がトップでゆくことにした。横滑りといってもそのまま数百メートルも下まで滑落しそうなほどの急斜面は正直恐いものがあった。後で計測したら60度近い斜度だったのだ。落差にして50〜70mほどだろうか。反対側までゆくといくらか斜度が緩み安心感に浸る。ここでしっかりと足場を固めてから撮影に臨むことにした。

 みんなも最初の出だしに戸惑っていたがさすがは山岳会のスキー隊である。つぎつぎと降りていっては確実にターンを決めてゆく。しかし、急斜面のせいだろう。ついに耐えきれずに転倒したり滑落したりするものが続いた。極めつけは最後に滑ることになった僕である。最初こそなんとかアルペンでしのいだが、堅い雪面にエッジがひっかかってしまったのだろう。転倒してしまうとそれがなかなか停止できなかった。停まるどころかますます加速度がついて100m以上も滑落してしまったのだ。なんとか途中で停まれたのは偶然以外にない。またヤッケのパンツをはいていなかったことも大きいかも知れなかった。ゴアテックスなどをはいていれば間違いなく停まることはなくどこかに激突したはずであった。布の摩擦力も結構大きいはずでバカにはできないのだ。この付近の傾斜もあとでわかったことだが45度くらいはあった。一昨年の北俣沢では岩がところどころで露出していることもあって慎重に下った覚えが合ったのだが、今回のホン石転ビ沢は雪面が広々としていたせいもあって幾分気のゆるみもあったのだろうと思った。

 リーダーの柴田氏は3回目らしかったが、ホン石転ビ沢がこんな急斜面の状態を見るのは初めてだという。積雪さえ多ければ傾斜はかなり緩やかになるものだが、やはり今年の雪が少なさが原因らしかった。なんとか生き延びた僕は代わりにサングラスを失っていた。転倒した拍子に飛ばされたものらしった。停止地点から登り返して探す元気もないのであきらめることにした。あとで知ったのだが、ほかにも大きく滑落したメンバーがいて、同じようにサングラスをなくしていた。

 途中からは斜度が幾分ゆるんだこともあって、みんな安心してホン石転ビノ出合めざして飛ばしていった。出合では石転ビ沢を滑ってきた2名が待っていてくれた。そして石転ビノ出合では門内沢を滑ってきた丹野氏と合流した。こうしてとりあえず全員無事にそろったところで、一路、地竹原をめざして下ってゆく。雪渓の末端ではのんびりと休憩をとった。なにしろほとんど休憩をとらずに一気に標高差1400mくらいを滑り降りてきたのである。みんなほとほと疲れていた。一番疲れていたのはやはり僕だろうか。もう一歩も動けないほどでもあった。

 地竹原からは再びスキーを担いで飯豊山荘をめざして歩き出した。下りは疲れてもいたのだが、なんとかホン石転ビ沢を経験できたという満足感だけはあって、新緑の飯豊連峰をのんびりと下った。



ホン石転ビノ出合


石転ビノ出合


石転ビ沢を登る


北股岳


梅花皮小屋で憩う


梅花皮小屋から梶川尾根


石転ビノ出合で


梅花皮岳とエントリーポイント


梅花皮岳山頂で


滑降シーン


滑降シーン


滑降シーン


滑降シーン


滑降シーン


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